夏に多いと思われがちな食中毒。ところが、実際には9〜10月頃の涼しい季節にも、夏と変わらず多くの食中毒が発生しています。この時期は、夏バテの影響で胃腸が疲れ、体力や免疫力が落ちていることも多いもの。日頃から体調をしっかり整えて、秋の食中毒を予防しましょう。
漢方ケアで「腸内環境」を整える
秋から冬の時期は夏バテを引きずっていることも多く、胃腸不調、免疫力の低下などから食中毒を起こしやすくなることも。夏の疲れが残っていると感じたら、早めに体調を整えましょう。
食中毒を予防する基本は、日頃から「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きを健やかに整えておくこと。脾胃が元気で免疫力の高い状態を維持できれば、細菌やウイルスに負けにくく、食中毒が起こっても早めに回復することができます。
万一、食中毒を発症してしまったら、なるべく早く回復するよう適切な対処を。中医学では、食中毒は、邪気(細菌やウイルス)の侵入によって脾胃がダメージを受けた状態と考えます。そのため、邪気を発散させながら、胃腸の働きを回復させることが対処の基本に。ただし、症状が重い場合は自己判断をせず、すぐに病院を受診するようにしましょう。
また、下痢や嘔吐などの症状が治まっても、脾胃のダメージはすぐには回復できません。胃腸不調が長引くと体力や免疫力の低下にもつながるため、体調がしっかり整うまで、油断せずにケアを続けることも大切です。
check!秋の食中毒対策
食中毒を引き起こす主な原因は、細菌やウイルスの感染。まだ暑さや湿気の残る秋前半は、細菌が増殖しやすいため、細菌性の食中毒が多い時期。その後、秋の後半になると気温や湿度が下がり、ウイルス性の食中毒が増え始めます。また、この季節はきのこ類など自然毒による食中毒が多いことも特徴。涼しくなったからと油断せず、しっかり体調を整えましょう。食中毒にかかってしまい症状が重い時は自己判断をせず、早めに病院を受診しましょう。
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食中毒を予防する胃腸ケアで免疫力アップ!
- 気になる症状
当てはまる症状があれば、胃腸が弱っているサインです。
食欲不振、胃もたれ、げっぷ、しゃっくり、軟便、お腹の張り、疲労感、痩せ、舌の肥大
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- 改善ポイント
同じものを食べても、食中毒を起こす人、起こさない人がいます。これは、細菌やウイルスから身体を守る免疫力の違い。免疫力がしっかりあれば、食中毒を起こしにくく、万一発症しても症状を軽く抑え、早めに回復できるのです。
免疫力を高めて食中毒を予防するためには、「脾胃(ひい)」(胃腸)を健やかに保つことがとても大切です。脾胃は食事の栄養を消化、吸収し、体力・免疫力の源となる大切な臓器。そのため、脾胃が元気でしっかり働いていれば、細菌やウイルスに負けにくい強い身体を維持できるのです。
また、腸は体内最大の免疫器官でもあるため、脾胃をケアして腸内環境を整えることは、免疫力アップの大切なポイントとなるのです。
夏バテのダメージが残るこの時期は、胃腸の不調を感じることも多いもの。少しでも気になる症状があればしっかりケアをして、食中毒を起こしにくい身体づくりを心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
脾胃の働きを整え、体内の「気(エネルギー)」を養う:
白米、いんげん豆、大豆製品、りんご、豚肉、牛肉、さば、うなぎ、じゃがいも、山芋、キャベツ など
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食中毒にかかってしまったら初期の対処 「邪気を発散して症状を緩和」
- 気になる症状
胃腸症状:吐き気、嘔吐、胃痛、腹痛、軟便、水様便、粘液が混ざる下痢
その他の症状:悪寒、発熱、頭痛、倦怠感、舌苔が多い
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- 改善ポイント
食中毒は、邪気(細菌やウイルス)が身体に侵入し、「脾胃(ひい)」(胃腸)がダメージを受けることで起こる症状。脾胃は、飲食物を消化・吸収し、栄養を全身に送ったり、水分を代謝したりする働きがあります。そのため、細菌やウイルスの影響で脾胃の働きが乱れると、嘔吐や下痢などの症状が起こるのです。
食中毒の症状が起こったら、まず体内に侵入した邪気を発散させて、乱れた脾胃の働きを回復させることが大切。また、水分代謝が低下して脾胃に「湿」(余分な水分)が停滞してしまうため、利水作用のある食材などを積極的に摂り、湿を取り除くことも心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
邪気を発散させて胃腸を整える、体内の湿を取り除く:
しそ、しょうが、みょうが、梅干し、陳皮(みかんの皮)、フェンネル、カルダモン、きゅうり、はと麦、緑豆、小豆、サンザシ、五行草、スベリヒユ など
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食中毒にかかってしまったら回復期のケア 「胃腸を整えて体力をつける」
- 気になる症状
胃腸症状:食欲不振、さっぱりしたものしか食べられない
その他の症状:体重の減少、顔色が白く艶がない、疲労倦怠感、舌苔が薄く残っている
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- 改善ポイント
一度食中毒を起こすと、「脾胃(ひい)」(胃腸)の不調が長引くことも少なくありません。放っておくと体力や免疫力が落ち、かぜやインフルエンザにもかかりやすくなってしまいます。下痢や嘔吐などが治まっても油断をせず、体調が回復するまでしっかりケアを続けましょう。
回復期のケアは、食中毒時に停滞した「湿」(余分な水分)の残りをすっきりと取り除き、脾胃の働きを健やかに整えることが基本。消化の良い食事、温かい飲食などを意識して、脾胃に負担をかけない食生活を心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
弱った脾胃の働きを整える:
白米、豆腐、白身魚、大根、いんげん豆、キャベツ、りんご、山芋 など
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point!暮らしの食中毒対策
◎食中毒予防の3原則は、細菌やウイルスを「つけない」「増やさない」「やっつける」
(1)つけない
・調理の前など、食品を扱う前に手をしっかり洗う。
・生肉や魚を切ったまな板は、使用の都度きれいに洗い、熱湯などで殺菌する。
・生肉や魚と、野菜などを扱う調理器具を別にする。
(2)増やさない
・生鮮食品や惣菜などは、低温(冷蔵・冷凍)で保存する。
・保存した食べ物は、冷蔵庫を過信せず早めに食べ切る。
・なるべく買い置きはせず、新鮮な食材を使う。
(3)やっつける
・食材はなるべく加熱調理し、細菌やウイルスを死滅させる。
・布巾、まな板、包丁などの調理器具はこまめに殺菌する。月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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