冬はカラカラに乾いた空気が気になる季節。身体の潤いも不足しがちで、乾燥によるさまざまな不調が起こりやすくなります。
外側からのケアはもちろん、“体内の潤い対策”もしっかり意識して、厳しい冬の乾燥を乗り切りたいですよね。そこでこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、冬の乾燥対策を分かりやすく説明します。
身体の中から潤いケアを
“乾燥”というと、まず肌や髪のトラブルが気になりがち。ところが、身体が乾燥した状態になると、便秘や食欲不振、めまい、腰痛といった思わぬ不調につながることもあるので注意が必要です。
中医学では、こうした乾燥トラブルは、空気の乾燥「外燥(がいそう)」と体内の潤い不足「内燥(ないそう)」によって起こると考えます。そのため、秋から冬の乾燥する季節に、体内の潤い成分である「血(けつ)」や「水(すい)」が不足していると、乾燥による不調が起こりやすく症状も強く出てしまうのです。また、乾燥のダメージを受ける臓器によって、その症状も変わります。皮膚の乾燥やかゆみ、空咳などの症状は、「肺」の潤いが足りないサイン。食欲不振、便秘、疲労感などは、「脾胃(ひい)」(胃腸)の乾燥による不調です。また、「肝(かん)」(肝臓)、「腎」が乾燥の影響を受けると、ドライアイ、髪のパサつき、腰痛、めまい、物忘れといった症状が現れることも。
こうした乾燥トラブルを予防・改善するためには、身体の中からしっかり潤いケアをすることが大切。食事や睡眠を十分に摂る、身体の状態に合わせた食材選びを心がけるなど、日々の養生で“潤い体質”をめざしましょう。
check!乾燥に負けない!タイプ別・カラダの乾燥対策
中医学には「上燥(じょうそう)」(肺)、「中燥(ちゅうそう)」(脾胃)、「下燥(げそう)」(肝・腎)という考え方があり、それぞれに合った乾燥対策を考えます。まずは症状から自分のタイプを知り、冬の乾燥に負けない身体をつくりましょう。
1
肺の潤い不足「上燥」タイプ
- 気になる症状
皮膚の乾燥・しわ・かゆみ、かかとのひび割れ、のど・鼻の乾燥、空咳、痰が出しにくい、喘息、かぜを引きやすい、舌の苔が薄く乾燥している
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- 改善ポイント
呼吸を司る「肺」は、乾燥の影響を最も受けやすい臓器。また“潤いを好み、乾燥を嫌う”という特徴があり、肺の潤いが不足するとさまざまな不調につながります。注意したいのは、肺の状態と密接に関係する皮膚や呼吸器系のトラブル。皮膚の乾燥やかゆみ、空咳、のどや鼻の乾燥といった不調を感じたら、肺が乾燥しているサインと考えて積極的な養生を。
このタイプは、初期の軽い乾燥症状なので回復しやすいことも特徴です。潤いの多い食材選びなどを心がけ、早めの対処で肺の潤いを守りましょう。
- 摂り入れたい食材
肺の潤いを養う食材やお茶を:
白きくらげ、百合根、梨、大根、れんこん、はちみつ、みかん、枇杷の葉茶、菊花茶、鶏がらスープ、豚足 など
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2
「脾胃」(胃腸)の乾燥「中燥」タイプ
- 気になる症状
口の乾燥(唾液の減少)、食欲不振、味覚の低下、便秘気味、疲労感、倦怠感、舌の色が淡い
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- 改善ポイント
「脾(ひ)」は栄養や水分を吸収して全身に運ぶ役割を担い、唾液の分泌とも深く関わっています。乾燥の影響でその機能が低下すると、唾液の分泌が減り、口の乾きや食欲の低下につながることも。
また、「胃」は飲食物を消化・吸収して下に送る働きがあり、乾燥を嫌う特徴があります。そのため、胃の潤いが不足して働きが弱くなると、栄養を十分に摂ることができず、疲労感や倦怠感などを感じやすくなります。
栄養や水分を吸収する脾胃の機能の低下は、長引くと全身の乾燥にもつながるので要注意。気になる症状がある人は、脾胃の潤いを養い、健やかに保つよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
脾胃に潤いを与え、働きを良く:
豆、大豆、バナナ、いちじく、りんご、キウイ、マンゴー、白菜、かぼちゃ、オリーブ油、豆乳、ヨーグルト など
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3
肝・腎の潤い成分が不足する「下燥」タイプ
- 気になる症状
目の乾燥・疲労、髪のパサつき、皮膚のしわ、腰痛、めまい、物忘れ、月経量の減少、陰部のかゆみ、尿量の減少
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- 改善ポイント
「肝(かん)」は、身体に潤いを与える「血」を貯蔵する臓器。血が不足するとその機能が低下して、肝と関わりの深い目の乾燥や疲れ、月経量の減少などにつながります。
また、「腎」は身体の老化や髪の状態と関係が深いため、腎の潤いが不足すると、髪のパサつき、若白髪、腰痛、物忘れなどの症状が起こりやすくなります。肝の血不足、腎の潤い不足は、いずれも全身の乾燥につながりやすいので気をつけて。高齢の人、慢性疾患による消耗がある人などは特に注意が必要なので、積極的な養生を心がけましょう。
肝の血は全身に配布され、腎の潤いは“全身の潤いの源”となります。肝・腎を養うことは、身体の潤いを守るためにも大切なこと。不調を感じていない人も、日頃の養生を心がけて。
- 摂り入れたい食材
血を養い、肝・腎を健やかに:
くるみ、黒ごま、黒豆、山芋、なつめ、クコの実、ブルーベリー、桑の実、人参、ほうれん草、なまこ、スッポン など
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point!暮らしの乾燥対策
・睡眠不足は乾燥の原因に。早寝早起きで質の良い睡眠を。
・水分を多く取るよりも、“潤いの多い食材”をたっぷり。
・乾燥が気になるときは、辛い食べ物を控えめに。
・保湿性の高い石けん、綿素材の衣類などを選び、皮膚への刺激を少なく。
・目の使い過ぎには気をつけて。ドライアイを招く原因になります。
※乾燥肌に沙棘(サージ)オイルパック
沙棘果実のオイルを顔に塗り、ラップ&蒸しタオルで簡単パック。
潤いを守ってくれるので、冬の乾燥ケアにとりいれて。
沙棘油配合のクリームもおすすめです。月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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