漢方の知恵袋
監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
突然ですが口内炎に悩まされたことはありませんか?繰り返す症状に悩まされることも多い口内炎。小さな傷やできものなのに、食事がしみて痛むなど、その症状はとても不快なものですよね。
口内炎を繰り返さないためには、体質を見直して根本から改善することが大切。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、口内炎の対策について分かりやすく説明します。
口内炎は、口の中の粘膜や唇、舌などに起こる炎症の総称。ウイルスや細菌の感染、食べ物や入れ歯などの物理的刺激、免疫力の低下や栄養不足などが主な原因と考えられていますが、原因がはっきりしないことも少なくありません。
中医学では、口内炎を引き起こす基本的な原因を体内の「熱」と考えます。熱の症状は、大きく2つのタイプに分かれます。
1つは、体内に余分な熱が溜まる「実証タイプ」。このタイプの口内炎は、主に口の状態と関わりの深い臓器「心(しん)」や「脾胃(ひい)」(胃腸)に過剰な熱が溜まることで現れます。
もう1つは、身体に必要な物質が足りなくなる「虚証(きょしょう)タイプ」。体内の潤い不足で熱を冷ますことができず、身体に熱がこもって口内炎を引き起こします。
また、体内の「気」(エネルギー)が不足している場合は、免疫力が低下して外邪(風、熱、乾燥などの邪気)の侵入を受けやすくなることも。こうした邪気が体内に停滞すると、身体に熱がこもって口内炎の原因となります。
普段から口内炎になりやすい人は、症状を抑えるだけでなく、まず自分の体質をきちんと見直すことが肝心。体内の不調を整えて根本から原因を改善し、繰り返しがちな症状を防ぎましょう。
口内炎は体内の不調の現れ。体質を整えて根本の原因を改善すれば、再発の予防につながります。症状が重い場合は病気などが隠れていることもあるので、気になる人は早めに医師の診察を受けましょう。
赤み・痛みの強い口内炎、舌がヒリヒリする、全身が熱っぽい、顔が赤い、口が渇く、尿の色が濃い、舌の先が紅い、舌の苔が黄色い
「心(しん)は舌の苗」と言われ、中医学では、舌は「心」の状態から影響を受けると考えます。これは、心の持つ血液循環の働きによるもの。舌には血管が多く集まっているため、心の状態が現れやすいのです。
このタイプの口内炎は、外邪(風、熱、乾燥などの邪気)の侵入、過剰なストレス、辛いものの食べ過ぎなどが原因で、心に熱がこもることで起こります。
食事の気配りやストレスを溜めない工夫を心がけ、過剰な熱を冷ましましょう。
身体にこもった熱を冷ます食材を。クチナシの花茶、菊花茶、竹の葉茶、柿の葉茶、緑茶、あけび、苦瓜、ミント、梨、すいか、大根、柿 など
※油っこい料理や肉類は食べ過ぎに注意!
腫れや痛み・ただれを伴う口内炎、白い潰瘍ができる口内炎、口臭が強い、歯茎が腫れて痛い、口の渇き、便秘、舌が紅い、舌の苔が黄色い
「脾胃(ひい)」(胃腸)の状態と口には深い関わりがあり、脾胃に不調があると、特に唇の周りや舌の奥に口内炎の症状が現れやすくなります。
口内炎を引き起こすのは、脾胃に溜まった「湿(しつ)」(余分な水分や汚れ)と「熱」。
暴飲暴食、油っこい料理の食べ過ぎ、過度な飲酒といった食の不摂生を続けると、脾胃に湿や熱が溜まって働きが悪くなり、口内炎の症状が現れるのです。
このタイプの人は、まず食生活を見直して、脾胃に負担をかけないよう心がけて。溜まってしまった湿や熱は早めに取り除き、脾胃を健やかに保ちましょう。
湿を取り除き、熱を冷ます食材を。どくだみ、はと麦、さんざし、アロエ、しそ、こんにゃく、春雨、寒天、きゅうり、バナナ、いちじく など
※野菜多めのあっさりした食事を基本に!
口内炎が治りにくい・繰り返しやすい、疲労感、倦怠感、息切れ、かぜを引きやすい、顔色が白い、食欲不振、軟便、舌の色が淡く腫れぼったい、舌の苔が白い、舌のふちに歯のあとがつく
体内の「気」(エネルギー)は、身体の元気や免疫力の基本。気が不足していると、心身の疲労やだるさを感じやすく、免疫力も落ちてしまいます。
このタイプの口内炎は、気の不足で免疫力が低下し、外邪(風、熱、乾燥などの邪気)の侵入を受けやすくなってしまうことが原因。邪気が体内に停滞すると、熱や乾燥の影響で身体を冷やす潤いが不足してしまいます。結果、体内に余分な熱がこもり、口内炎の炎症が起きやすくなるのです。
対策のポイントは、気の源となる「肺」、「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きを良くすること。十分に栄養を摂り、しっかり呼吸をして、体内の気を養いましょう。
「気」を養い、元気をつける食材を。大豆製品(豆腐、湯葉、納豆など)、いんげん豆、山芋、かぼちゃ、りんご、甘草 など
※温かくて消化の良い食事を。生ものは控えめに!
赤みが少なく微かに痛む口内炎、口内炎を繰り返す・慢性化しやすい、微熱、痩せている、口の乾燥、虫歯になりやすい、便秘気味、舌が少し紅く苔が少ない
身体に潤いを与える「津液(しんえき)」や「血(けつ)」が不足していると、体内の熱を冷ますことができず、熱がこもりやすくなってしまいます。この過剰にこもった熱が、口内炎の炎症を引き起こす原因になります。
身体の潤いは加齢とともに失われていくため、特に更年期を迎える40歳以降の人は要注意。
また、食べても太らない痩せ型の人にも多いので、こうした体質の人は若い人でも注意が必要です。その他、月経や慢性的な疾患が潤い不足の原因になることもあります。
日頃から、こまめな水分補給、潤いの多い食材選びなどを心がけ、不足しがちな潤いを積極的に養いましょう。
潤いを生み、熱を冷ます食材を。はちみつ、干し柿の白い粉、クコの実、レモン、トマト、グレープフルーツ、ぶどう、なし、りんご、卵
※香辛料は、潤いを消耗するので取り過ぎに注意!
・熱を助長するもの(辛いもの、揚げ物、肉類、酒など)は控えめに
・食事は“新鮮な野菜たっぷり”を心がけて
・タバコなどの刺激はなるべく避けること
・食後のうがいや歯磨きで、口内を清潔に
・虫歯になったら早めの治療を
・便通を良くすることも大切
・できてしまった口内炎には、柿や梅干しを塗るのもおすすめ
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
症状一覧
CHECK!
TYPEA
エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?
TYPEB
気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?
TYPEC
カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?
TYPED
全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?
TYPEE
カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?
TYPEF
水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?
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