鼻は呼吸をするための大切な器官です。そのため、軽い鼻づまりなどの症状でも息苦しさを感じ、慢性化すると生活や仕事に支障をきたしてしまうことも。今回は、そんな鼻のトラブルを体質からしっかり改善する、中医学の養生法をご紹介します。
体質改善で鼻のトラブルを防ぐ
呼吸を行う「鼻」は清らかな陽気の出入り口で、嗅覚をつかさどる器官。体の陽気が集中する頭部の中で、鼻はさらにその中心にあることから“陽の中の陽”とされ、「明堂(めいどう)」、「清竅(せいきょう)」とも呼ばれています。そのため、鼻を健やかに整えるためには、清らかな陽気がスムーズに通っている状態を保つことが大切なのです。
また、中医学では、鼻炎などの不調は単に鼻だけの問題ではなく、体内の臓器の状態も深く関わっていると考えます。鼻と特に関係が深いのは、呼吸を通じて関わっている「肺」。肺が健やかに働いていれば、鼻の状態も良く、嗅覚は正常に保たれます。また、身体の不調を引き起こす邪気(風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、熱邪(ねつじゃ)など)も侵入しにくくなるため、かぜによる鼻炎なども起こりにくくなります。
その他、食事の栄養から陽気を生み出し、その陽気を上昇させて鼻を養う「脾胃(ひい)」(胃腸)、肺の働きと密接に関わる「腎」なども、鼻の状態と関係する臓器です。
鼻の不調は、薬などで一時的に症状を抑えても繰り返してしまうことが多いもの。鼻炎を起こしやすい、鼻のトラブルが慢性化している、といった悩みを抱えている人は、この機会に自分の体質を見直して、鼻の不調を起こしにくい体質づくりを目指しましょう。
check!症状別・鼻トラブルの対処法
一口に鼻のトラブルと言っても、症状によってその原因はさまざま。例えば、同じ鼻炎でも急性と慢性では対処法も変わるので、自分の症状に合わせた適切なケアを心がけましょう。
1
急性鼻炎(鼻かぜ)(1)透明なサラサラ鼻水「風寒(ふうかん)」タイプ
- 気になる症状
鼻づまり(透明な鼻水)、鼻声、悪寒、頭痛、節々の痛み、痰が白く薄い、舌苔が白い
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- 改善ポイント
このタイプは「風邪(ふうじゃ)」と「寒邪(かんじゃ)」が体に入り込み、体が冷えることで起こるかぜの初期症状の鼻炎。いわゆる“鼻かぜ”と言われ、鼻づまりや悪寒、頭痛などの症状が現れます。
養生の基本は、体に侵入した風邪と寒邪を早めに追い払うこと。食事や飲み物、服装などに注意して、体をしっかり温めるよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
身体を温め邪気を発散させる:ねぎ、しょうが、白菜、大根、三つ葉、香菜(パクチー)、葛、豆豉(とうち) など
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2
急性鼻炎(鼻かぜ)(2)黄色く粘りのある鼻水「風熱(ふうねつ)」タイプ
- 気になる症状
鼻づまり(黄色く粘りのある鼻水)、発熱、のどの痛み、頭痛、口の渇き、痰が濃い、舌の先が紅い、舌苔が薄く黄色い
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- 改善ポイント
風寒タイプと同様に、こちらもかぜの症状として起こる鼻炎。身体に侵入した「風邪(ふうじゃ)」・「熱邪(ねつじゃ)」の影響で発熱やのどの痛みが現れ、黄色く粘りのある鼻水が出るようになります。
このタイプの鼻炎は、まず体内の余分な熱を冷ますことが大切。重い鼻づまりがつらい時は、涼性の食材やお茶などを積極的に取り、体をスッキリさせるよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
身体にこもった熱を冷ます:菊茶、ミントティー、スイカズラ茶、桑葉茶、ごぼう、れんこん など
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3
慢性鼻炎(1)鼻炎を繰り返す「エネルギー不足」タイプ
- 気になる症状
鼻炎を繰り返しがち、疲労時に鼻炎を起こしやすい、嗅覚の減退、かぜを引きやすい、息切れ、疲労感、食欲不振、顔色が白い、舌の肥大
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- 改善ポイント
鼻炎を繰り返しがちで、慢性的に鼻づまりを起こしているタイプ。症状はそれほど重くないものの、嗅覚が弱くなり、鼻の閉塞感で息苦しい状態が続きます。
このタイプの鼻炎は、鼻を開かせる「肺」や、陽気を上昇させて鼻を養う「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きが弱く、「気」(エネルギー)が不足していることが原因に。こうした「気虚(ききょ)」の状態は免疫力や回復力の低下にもつながるため、放っておくと症状がさらに長期化してしまいます。気になる症状がある人は、積極的に肺と脾胃の働きを整え、体内の気を養いましょう。
- 摂り入れたい食材
肺と脾胃を整え、体内の気を養う:白きくらげ、百合根、はちみつ、豚足、鶏手羽、山芋、じゃがいも、大豆製品、りんご など
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4
慢性鼻炎(2)鼻炎が長期化している「邪気停滞」タイプ
- 気になる症状
強い鼻づまり(粘りのある鼻水)、嗅覚の減退、痰が多い、耳鳴りや耳塞感を伴う、舌の色が暗い
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- 改善ポイント
鼻炎が長期化すると、鼻腔内の組織が厚くなり、そこに邪気が溜まりやすくなります。すると、「気」(エネルギー)や「血(けつ)」の流れも停滞し、強い鼻づまりの症状が慢性化してしまうのです。
症状の特徴は、鼻水に粘りがあり、痰が多く、耳鳴りや耳塞感を伴うこと。こうした症状が続くと、集中力を保ちにくく、日常生活にも支障が出てしまいます。治らないからと諦めず、積極的に体質を整えて不快な症状を改善していきましょう。
- 摂り入れたい食材
気・血を養い血流を良く:どくだみ、へちま、ウコン、紅花、玉ねぎ など
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5
停滞する「湿」と「熱」が 原因鼻ポリープ(鼻茸)
- 気になる症状
慢性的な鼻づまり、嗅覚減退、鼻水が濁り量が多い、鼻の変形、頭重、頭痛、舌が紅い、舌苔がベタつく
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- 改善ポイント
鼻茸(はなたけ)とも呼ばれる鼻ポリープは、鼻の中の粘膜にできる水泡状のできもののこと。中医学では、鼻腔内に「湿」(余分な水分)や「熱」が執拗に停滞することで起こる症状と考えます。
一般的にはステロイド点鼻薬や手術などで対処しますが、鼻ポリープは一度取り除いても再発しやすいことが特徴。症状を改善し、また再発を防ぐためにも、体質をしっかり整えて根本から改善することが大切です。また、蓄膿症や慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎などが原因になることもあるので、こうした鼻トラブルが長期化しないよう、積極的に改善することも大切です。
- 摂り入れたい食材
身体に溜まった湿と熱を取り除く:はと麦茶、たんぽぽ茶、どくだみ茶 など
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この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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