月経が正常より早い周期で来る。1 回の経血量が正常より多い…。といった悩みを抱えていても対処法がわからず放置していませんか?
女性にとって、月経は健康のバロメーターです。小さな不調でも放置せず、きちんと体質を整えて健やかな月経を迎えましょう。
どんな症状?「月経先期」と「月経過多」
月経先期と月経過多は、いずれも“月経の量が多くなる”タイプの不調です。
月経先期は、月経の周期が早まる症状。中医学で考える月経周期の基本は28日で、多少ずれても28日の前後7日以内(21〜35日)であれば正常の範囲と捉えます。この範囲より早く月経が来る状態が3回以上続く場合は、月経先期と考えましょう。
一方、生理1回の経血量が正常よりも多いのが、月経過多。経血量を実際に計ることは難しいので、“ナプキンが1時間もたない”、“昼間でも夜用ナプキンを使っている”などの状態を判断の目安にしましょう。
check!タイプ別・「月経先期」「月経過多」の対処法
月経先期・月経過多の主な要因は「気の不足」、「腎の虚弱」、「瘀血(おけつ)」(血行不良)、「ストレス」などが考えられます。
1
月経先期の
「気の不足」タイプ
- 気になる症状
- 息切れ、かぜを引きやすい、汗が多い、疲労倦怠感、食欲不振、軟便、下痢、痩せ、冷え、舌の色が淡い、舌に歯痕が残る
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- 改善ポイント
「気」(エネルギー)は、「血(けつ)」を体に留め、漏れ出さないよう守る働き(統血作用)を担っています。体内の気が不足すると、この統血作用が弱くなり、月経が早まる要因となるのです。
養生の基本は、気を生む源となる「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きを整えること。日頃からしっかり栄養を取って、不足しがちな気を養いましょう。
- 摂り入れたい食材
- 脾胃の働きを整え、気を養う:
大豆製品、米、牛乳、いんげん豆、豚肉、鶏肉、太刀魚、かつお、芋類、きのこ類、なつめ、りんご など
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2
月経先期・月経過多の
「腎の虚弱」タイプ
- 気になる症状
- 疲労感、無力感、四肢の冷え、ほてり、むくみ、めまい、不妊、腰痛、夜間の頻尿、物忘れ、白髪、脱毛
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- 改善ポイント
五臓の「腎」には、体に必要なものを体内にしっかり保持する働き(固摂作用)があります。腎の機能が低下すると、この働きが弱くなり、血が外に漏れ出しやすい状態に。結果、月経先期や月経過多を招いてしまうのです。
養生の基本は、腎の働きを強くすること。慢性疾患による消耗、無排卵の月経不順などがある人は、このタイプを参考にしてください。
- 摂り入れたい食材
- 腎を養い、機能を高める:
くるみ、松の実、黒豆、山芋、銀杏、もち米、えび、にら、羊肉、シナモン、海藻類、黒きくらげ など
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3
月経先期・月経過多の
「ストレス」タイプ
- 気になる症状
- 憂うつ、イライラ、胸苦しい、のどのつまり、微熱、頭痛、めまい、口の苦み、胃痛、お腹の張り、胸の張り、月経痛、おりものが黄色い・臭う、舌が紅い
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- 改善ポイント
過剰なストレスで「肝(かん)」(肝臓)の機能が低下すると、「気」(エネルギー)の巡りが滞りがちになります。すると、体内に熱が発生し、この熱が血に影響して出血を起こしやすい状態に。その結果、月経先期や月経過多を招いてしまうのです。
養生の基本は、ストレスを上手に発散して肝の働きを整えること。ストレッチや深呼吸で、体内の気を巡らせることもポイントです。
- 摂り入れたい食材
- 肝の熱を冷まし、ストレスを発散:
そば、玫瑰花(まいかいか)、ジャスミン、菊花、カモミール、三つ葉、大葉、竹の子、春菊、金針菜、いしもち、あさり、酢、レモン など
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4
子宮筋腫や子宮内膜症などによる月経過多・不正出血の
「瘀血(おけつ)」(血行不良) タイプ
- 気になる症状
- 月経痛、経血が暗い、経血に血塊がある、手足の冷え・しびれ、顔色の黒ずみ、シミが多い、舌の色が暗い、舌の瘀斑や瘀点(黒いシミや点)
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- 改善ポイント
「瘀血」(血行不良)の状態は、婦人科系のトラブルを招く大きな要因に。そのため、瘀血の影響で子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣膿腫などを発症すると、その症状として月経過多や不正出血が起こりやすくなるのです。
このタイプは冷えを伴うことが多いので、日頃から体を温める心がけを。食生活や生活習慣にも気を配り、血の巡りをスムーズに保つことが大切です。
- 摂り入れたい食材
- 血をサラサラにして巡りをよく:
黒きくらげ、黒豆、なす、あずき、玉ねぎ、紅花、桃仁 など
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point!「貧血」や「無排卵」に 気をつけて
月経が早まって回数が増える月経先期と、経血量が多い月経過多。いずれも出血の量が多くなるため、「貧血」を起こしやすくなります。
また、月経周期が早まると、卵子が成熟せずに排卵されたり、「無排卵月経」になったりすることも。こうした症状は不妊症につながる心配もあるので、早めに改善することが大切です。
その他、月経期間外にもダラダラと出血が続く「不正出血」の症状が現れることもあります。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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