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子宮内膜症不妊の原因にもなる「子宮内膜症」の予防・改善法

監修:菅沼 栄先生(中医学講師)

子宮内膜症は、生涯の月経量が多いほどリスクが高いとされる病気です。そのため、初潮から閉経までの期間が長く、出産年齢も高くなった現在は、増加する傾向に。症状が進行すると不妊の原因にもなるため、病気をきちんと理解して、早期の段階から適切な対処をすることが大切です。

血行不良の「瘀血(おけつ)」が子宮内膜症の要因に

子宮内膜症は、本来子宮の中にある「子宮内膜」という組織が、子宮以外の場所にできてしまう病気。発生しやすい場所は骨盤内(腹膜、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)など)で、発生する部位によって、腹膜や臓器の表面にできる「腹膜子宮内膜症」、子宮の筋層内にできる「子宮腺筋症」、卵巣の中にできる「卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)」などの症状に分かれます。
子宮以外の場所にできた内膜は、月経と同じように剥離・出血を繰り返しますが、通常の月経のように血液や内膜を体外に出すことはできません。そのため、血液がたまって嚢腫ができたり、臓器との癒着が起きて痛みが発生したりするのです。中医学では、子宮内膜症の主な要因を「瘀血(おけつ)」(血行不良)と考えます。そのため、停滞した血の巡りをスムーズに整えることが対処の基本に。また、瘀血を招く「気の停滞」「身体の冷え」「体内の気血不足」なども、個々の体質に合わせて改善していきます。
こうした中医学の対処は、子宮内膜症の進行・再発の予防、痛みの緩和などにつながるため、特に初期段階の治療では有効と考えられています。ただし、症状によってはホルモン療法や手術なども必要になるため、まずは医師の診察を。その上で西洋医学と中医学を上手に併用しながら、自分の体質や症状にあった適切な対処をしましょう。

【気になる症状がある人は早めに診察を】

□強い月経痛
□月経時以外の下腹部痛や腰痛
□経血量が多い(夜用ナプキンが1時間もたないなど)
□経血にレバー状のかたまりがある
□不正出血
□性交時に膣の奥が痛む
□排便時、肛門の奥に痛みを感じる
□不妊

check!「子宮内膜症」のケア

月経がある女性の10人に1人は抱えていると言われるほど、子宮内膜症は身近な病気です。つらい症状を緩和し、また子宮内膜症を予防するためにも、日頃から積極的な体質改善に取り組みましょう。

1 基本のケア 血の巡りを整える「瘀血」の改善

気になる症状

月経痛、腰痛、排便痛、性交痛、月経困難症、不正出血、しこり(卵巣嚢腫など)、経血の色が暗い、血塊がある、顔色のくすみ、しみ、静脈瘤、舌の色が暗く黒い点やアザ(瘀点・瘀斑)がある

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改善ポイント
血液がたまってしまう「子宮内膜症」の症状は、血の巡りが停滞する「瘀血」(血行不良)が主な原因に。また、中医学では、滞ると痛みが起こる「不通則痛(ふつうそくつう)」と言われ、子宮内膜症による痛みの症状(月経痛や腰痛など)にも、瘀血が深く関わっています。
症状の進行や再発を防ぎ、痛みなどの不調を緩和するためには、まず滞った血流をスムーズに整えることが基本に。瘀血の改善は子宮内膜症だけでなく、婦人科系のさまざまな不調を予防・改善することにもつながります。日頃の食事や生活習慣に気を配り、血行の良い状態を保つよう心がけましょう。
摂り入れたい食材

「黒」「辛味」の食材で血行を促す:黒きくらげ、黒豆、桃仁(とうにん)、玉ねぎ、サフラン、なす、小豆、うこん、紅花 など

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2 プラスのケア(1)「気」の巡りを整える「ストレス過剰」タイプ

気になる症状

月経前症候群(乳房の張り・痛み、頭痛、肩こり、イライラ)、月経時の腹部の張り、怒りっぽい、憂うつ感、緊張感、胸苦しい、のどの閉塞感、舌の左右の辺縁の瘀点

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改善ポイント
「血」を貯蔵する「肝(かん)」(肝臓)は、月経と深く関わる臓器。また、肝は体内の「気」(エネルギー)の巡りを整え、血流や月経周期をコントロールする働きもあります。そのため、過剰なストレスを受けて肝の機能が低下すると、気の巡りが停滞し、血流の悪化や月経の乱れを招くように。その結果、「瘀血」が発生し、子宮内膜症などの症状につながるのです。
養生の基本は、日常のイライラを上手に解消して、ストレスを溜め込まないこと。気持ちをリラックスさせて、気の巡りをスムーズに保ちましょう。
摂り入れたい食材

香りの良い食材で食の養生 気の巡りを整える:ミント、菊花、みかんの皮、黒きくらげ、三つ葉、ハマナスの花、ジャスミン、金針菜、 春菊、そば など

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3 プラスのケア(2)体を温める「冷え体質」タイプ

気になる症状

月経前や月経時の下腹部の冷え・痛み、温めると痛みが和らぐ、月経がすっきり出ない、経血の色が暗い、経血に黒い血塊がある、手足の冷えが強い、顔色が白い、舌苔が白い

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改善ポイント
体内を巡る「血(けつ)」は、“冷えると固まり、温めると流れる”という性質があります。そのため、冬の寒さやクーラーの冷え、冷たい飲食などで体が冷えると、血の流れが停滞し、「瘀血」を招いてしまうのです。
このタイプは、強い月経痛など痛みの症状に悩まされやすいことが特徴。季節を問わず、温かい飲食、毎日の入浴、体を冷やさない服装などを心がけ、慢性化した“冷え体質”をしっかり改善しましょう。
摂り入れたい食材

「温性」「辛味」の食材で体を温める:よもぎ、しょうが、山椒の実、黒糖、シナモン、ねぎ、八角、ナツメグ、フェンネル、紅茶 など

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4 プラスのケア(3)「気」・「血」を養う「疲れを感じやすい」タイプ

気になる症状

月経周期が長い、出血が多い、経血の質が淡い、月経後半の腹痛が強い、疲労感、無力、めまい、脱毛、皮膚の乾燥、不安感、不眠、動悸、食欲不振、顔色が蒼白、舌の色が淡い

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改善ポイント
長期の疾患、過度なダイエットなどで体力を消耗すると、慢性的な「気」「血」の不足を招いてしまいます。すると、血を押し流す気のエネルギーが足りず、血流は滞りがちに。また、血管内に十分な血がないため、血流をスムーズに保つこともできません。その結果、「瘀血」を招き、子宮内膜症が起こりやすくなるのです。
血が不足すると、体内を守る力が低下して出血しやすくなるため、月経量が増えて血不足がさらに進むという悪循環に陥ってしまうことも。日頃から疲れを感じやすい人は、食事や睡眠をしっかり取って、気血を十分養うよう心がけましょう。
摂り入れたい食材

「温性」「甘味」の食材で気・血を養う:黒糖、鶏肉、にんじん、大豆製品、クコの実、豚肉、ほうれん草、落花生など

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point!暮らしのポイント

・ストレスはこまめに発散。特に、月経前はイライラしない工夫を。
・温かい飲食、服装などを心がけ、体を冷えから守りましょう。
・月経時は腰回りをしっかり温めて。また、月経後は体力を補い、体を温める料理を。
・毎日の入浴を習慣に。冷えや血行不良を改善し、心も身体もリフレッシュします。【女性の不調に効くツボ】
三陰交(さんいんこう):内側のくるぶしから指4本くらい上のスネの骨の内側の窪んだところ。冷え、むくみ、月経痛を緩和します。

月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載

女性の不調に効くツボ

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この記事を監修された先生

中医学講師/菅沼 栄先生

1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。

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気滞(きたい)

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瘀血(おけつ)

全身の血の巡りが滞った状態です。
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