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新たな生活に期待がふくらむ反面、春は環境の変化などからココロが不安定になりやすい季節。この時期は、ストレスによるダメージで体調を崩すことも多いです。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、春のストレス対策を分かりやすく説明します。
「肝」「脾胃」のケアで、ストレスに負けない体質に
身体に不調があると気分が落ち込みやすくなったり、反対に、悩みやストレスを抱えていると体調を崩してしまったり……。そんな経験は、だれもが持っているのではないでしょうか。
中医学は「心身一如(しんしんいちにょ)」(心と身体は一つ)という考え方を基本としていて、心と身体の状態は互いに影響し合っていると考えます。そのため、ストレスの対処も精神面だけでなく、身体を整えながら、心身全体をバランスよく保つことを大切にします。
身体の中でストレスと深く関わっているのは、五臓の「肝(かん)」(肝臓)。肝は体内の「気」(エネルギー)の流れをスムーズに保ち、ストレスをコントロールする働きがあります。また、身体に栄養を与え、精神を安定させる「血」の貯蔵庫でもあります。
こうした機能が十分に働いていれば、ストレスを受けても上手く対処できるため、ダメージを強く受けることはありません。ところが、体内の血が不足していたり、過剰なストレスを受けたりすると、肝の機能が低下してストレスをスムーズに発散できなくなってしいます。結果、イライラや情緒不安定、不眠、胃痛など、さまざまな心身の不調につながるのです。
また、心と身体の“元気の源”となる「気」の不足にも要注意。気は「脾胃(ひい)」(胃腸)が消化吸収する食事の栄養から生み出されるため、脾胃を健やかに保つことも大切です。
身体を整え、ストレスに上手く対処することは、病気を予防するためにも大切なこと。春から始まる一年間を健やかに過ごすためにも、この機会に自分の身体を振り返り、ストレスに強い身体づくりをめざしましょう。
check!タイプ別「ストレス」対策
ストレスに強い身体づくりのポイントは、「肝(かん)」(肝臓)と「脾胃(ひい)」(胃腸)を元気に保つこと。健やかな心身の基本となる「気」「血」を十分に養い、滞りなく体内を巡らせ、ストレス対応力を高めましょう。
1
不安・不眠になりやすい
「血虚(けっきょ)」タイプ
- 気になる症状
- 精神力が弱い、不眠、不安、判断力が鈍い、顔色が白く艶がない、めまい、動悸、健忘、脱毛、白髪、薄毛、皮膚の乾燥、月経不順、便秘気味、舌の色が淡い
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- 改善ポイント
「血(けつ)」には、身体の臓器や組織に栄養を与え、精神を安定させる働きがあります。体内に血が十分あれば、身体の栄養状態も良く、精神も安定した状態に。また、「肝」の働きも良くなるため、ストレスをスムーズに発散できます。
反対に、食事の不摂生や加齢、月経などが原因で血が不足すると、精神力が弱くなり、肝の機能も低下してストレスを上手くコントロールできなくなってしまいます。日頃から不眠や不安感などに悩まされている人は、ストレスにも過敏に反応しやすいので要注意。
日頃から意識して、血をしっかり養うよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 「血」を養う黒い食材を積極的に:
なつめ、クコの実、人参、ほうれん草、小松菜、黒ごま、黒砂糖、レバー、鶏肉、鮭、卵、落花生、竜眼肉、ぶどう、ひじき など
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2
イライラ・憂うつの
「気滞(きたい)」タイプ
- 気になる症状
- 憂うつ、イライラ、怒りっぽい、情緒不安定、情緒の状態によってストレスの影響が強くなる、胸が重い、胃もたれ、胃痛、排便不調(下痢や便秘)、月経不順、月経前の精神症状が重い
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- 改善ポイント
「肝」はストレスをコントロールする反面、ストレスのダメージを受けやすい臓器。過剰なストレスを受けるとその機能が低下し、「気」の巡りが停滞してしまいます。
体内の「気」(エネルギー)は、滞りなく動いて全身を巡っていることが大切です。そのため、気の流れが停滞すると、イライラや憂うつ、胃痛、胃もたれといった心身のさまざまな不調につながるのです。
このタイプは、体調や情緒が安定していないと、ストレスの影響を強く受けてしまうことが特徴。香りの良いお茶でリラックスしたり、身体を動かしたり、日常生活の気配りでストレスをこまめに発散するよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 香りの良いお茶や苦みのある食材を:
ちんぴ(乾燥したみかんの皮)、ハマナスの花、菊花、カモミール、ジャスミン、ミント、春菊、せり、竹の子、たらの芽、クレソン、ウコン など
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3
元気が足りない
「気虚(ききょ)」タイプ
- 気になる症状
- 気力がない、倦怠感が強い、元気がない、ストレスに弱い、息切れ、疲れやすい、食欲不振、冷え性、朝が起きにくい、朝からだるい、声が弱い、舌の色が淡く肥大気味
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- 改善ポイント
体内の「気」は、心身の元気を保つエネルギー源。“臓器の働きをサポートする”、“身体を温める”、“病気を防ぐ”といった役割があり、気力や精神力の源でもあります。そのため、食事の不摂生や病気の消耗、胃腸不調などが原因で体内の気が不足すると、心身ともに元気のない状態に。結果、ストレスへの対応力も弱くなり、ダメージを受けやすくなってしまうのです。
気は「脾胃」が消化吸収する栄養をから生み出されるため、気になる症状がある人は、まず脾胃の働きを良くする心がけを。しっかり食事を摂って気を十分に養い、ストレスに負けない、元気な身体をつくりましょう。
- 摂り入れたい食材
- 胃腸を元気にして「気」を養う:
豆腐、湯葉などの大豆製品、米、小麦、いんげん豆、豚肉、牛肉、羊肉、かぼちゃ、じゃがいも、山芋、くるみ、栗 など
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point!暮らしのポイント
・“春は早起き”が基本。遅く寝た翌日も、朝は早起きを心がけて。
・散歩に出かけて適度な運動を。太陽の光をたっぷり浴びましょう。
・深呼吸して春の陽気を胸いっぱいに。イライラを鎮める効果があります。
・ジャスミンティーや菊花茶で気持ちをリラックス。春の新茶もオススメです。
・夕方以降のコーヒーやお茶は控えめに。良質な睡眠をとりましょう。
・身体の疲労もストレスの大敵。ゆとりを持って過ごすよう心がけて。
・一日一回は“笑う”ことを意識して。楽しいおしゃべりもストレス発散につながります。
・ストレス対策のツボ
太陽穴(たいようけつ):目尻の近くのくぼみ。指をツボにあて、左右同時に押す。頭痛や眼精疲労を緩和します。
内関穴(ないかんけつ):手首から肘に向かって指3本分置いたところ。指をツボに当て押す。精神を安定させる作用があります。
三陰交(さんいんこう):内くるぶしから膝に向かって指4本分置いたところの骨の後ろ。脚を掴むように指でツボを内側に入れ込む。肝の働きを高めます。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
ストレス対策のツボ
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PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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