漢方の知恵袋
監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
成人女性の4~5人に1人はできると言われる子宮筋腫。良性の腫瘍ではありますが、症状が重くなると貧血や強い月経痛などに悩まされることもあります。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、子宮筋腫を予防する方法を分かりやすく説明します。
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍。数や大きさはさまざまで、発生する部位によって、子宮の筋肉の中にできる「筋層内筋腫」、子宮の外側にできる「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」、子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」に分けられます。
その原因ははっきりしていませんが、筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなるため、閉経後には自然と小さくなります。
代表的な症状は、月経量の増加と月経痛。その他、不正出血、貧血、頻尿、腰痛などの症状も多く見られます。ただし、症状は筋腫ができた部位によってまちまちで、子宮の内側にできると小さくても症状が強く、反対に、外側にできると相当大きくなっても症状が現れないことも。
いずれにしても、子宮筋腫は不妊や流産などの原因にもなるので、症状に合わせてきちんと対処することが大切です。
中医学では、子宮筋腫などの「しこり」の症状は、「瘀血(おけつ)」(血行不良)が主な原因と考えます。そのため、対処の方法は滞った血の巡りをスムーズに整えることが基本。
また、瘀血の原因となる「気」(エネルギー)の停滞、身体の冷え、体内の気血不足なども、合わせて改善していきます。
こうした中医学の対処は、子宮筋腫ができやすい体質を根本から改善し、筋腫の再発を防いだり、筋腫の成長を抑えたりすることが期待できるもの。ただし、筋腫の大きさや症状によっては手術なども必要になるため、西洋医学と中医学を組み合わせて適切に対処しましょう。
子宮筋腫の手術を受けた人、筋腫が小さく特に治療は受けていない人…。そんな人も、体質を整えて筋腫ができにくい身体づくりをすることはとても大切。筋腫につながる身体の不調をチェックして、積極的に改善しましょう。
中医学では、婦人科系の不調は「血(けつ)」の状態と深く関わっていると考えます。しこりができる「子宮筋腫」の症状は、血の巡りが滞る「瘀血」(血行不良)が主な原因に。長期間にわたって血の流れが停滞することで、しこり(筋腫)ができやすくなるのです。
子宮筋腫がある人、子宮筋腫の手術を受けた人などは、まず瘀血の体質をしっかり改善して、筋腫のできにくい体質をつくることが大切。できてしまった筋腫も、小さいうちにしっかり体質を整えることで、成長を抑えることも期待できます。
血流を良くすることは、月経痛など子宮筋腫による諸症状の緩和にもつながります。食事や生活習慣に気を配り、滞った血の巡りをスムーズに整えましょう。
PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
症状一覧
CHECK!
TYPEA
エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?
TYPEB
気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?
TYPEC
カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?
TYPED
全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?
TYPEE
カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?
TYPEF
水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?
ABOUT
こころとカラダのこと、
ちゃんと知りたい
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