漢方の知恵袋
監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
月経や妊娠をサポートする卵巣は、女性の身体と深く関わる大切な器官。女性が一生をいきいきと元気に過ごすためには、年齢とともに変化する卵巣の状態を知ることがとても大切です。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、卵巣の働きを元気に保つ方法を分かりやすく説明します。
卵巣には、排卵によって月経の周期を整え、妊娠をサポートする、女性ホルモンを分泌して女性らしい身体を作る、気持ちをコントロールして精神を安定させる、といった女性の健康に深く関わる大切な働きがあります。
卵巣の働きが活発になるのは平均10歳ごろ。この時期から女性ホルモンの分泌が盛んになり、12歳前後で初潮を迎えます。10代後半にかけて月経周期が安定すると、20〜30代で卵巣の働きは最も活発に。
その後、40代に入ると卵巣の働きは少しずつ衰えはじめ、やがて閉経、更年期を迎えます。バランスの崩れやすいこの時期は心身の不調に悩まされることもありますが、50代に入り女性ホルモンの分泌がなくなると、徐々に心も身体も穏やかな状態に。この時期を第2の人生として、いきいきと前向きに過ごす人も増えています。
このように、卵巣の働きは女性の一生と深く関わっていて、その機能を元気に保つことは充実した人生を過ごすためにも大切なこと。卵巣の主な働き(月経や妊娠)と密接に関わる「血(けつ)」「腎」を健康に保つよう心がけ、年齢とともに変化する卵巣を健やかに整えて、いつまでもいきいきと元気に過ごしましょう。
卵巣の状態は、年齢とともに変化します。「卵巣年齢」に合わせたケアで、生涯を元気に、快適に過ごしましょう。
憂鬱、イライラ、怒りっぽい、頭痛、食欲不振、摂食障害、下痢または便秘、月経前緊張症、月経痛、月経不順
初潮を迎えて身体も女性らしく成長する10代は、月経やホルモン分泌のリズムを整える大切な時期。卵巣の機能もこの頃から徐々に活発になります。この時期は、無理なダイエットや思春期特有のストレスで卵巣機能にダメージを与えてしまうことも。
「血(けつ)」と「腎」を補いながら、ストレスをコントロールする「肝(かん)」の機能を高めるよう心がけましょう。
「肝(かん)」を整える食材を。そば、みかんの皮、香草類、玫瑰花(マイカイカ)茶、ジャスミン、ミント、菊花茶、うこん、春菊 など
月経痛、月経不順、PMS(月経前症候群)、血塊が多い、顔色の黒ずみ、頭痛など身体に痛みが出やすい
卵巣の血流量がピークを迎え、卵巣の働きがもっとも活発になる時期。ホルモン分泌が盛んで、妊娠や出産に一番適した年齢です。
この時期は、「血(けつ)」と「腎」を補いながら、血流をスムーズに保つことが大切。妊娠・出産に備えるためにも、冷えやストレス、食事の不摂生などに注意して月経を健やかに保ちましょう。
「血流」をスムーズにする食材を。
たまねぎ、紅花、よもぎ、黒きくらげ、にんにく、しょうが、シナモン など
ほてり、動悸、不安、頭痛、イライラ、落ち込みやすい、不眠(寝つきが悪い、眠りが浅い、目覚めが早い)
更年期を迎える40代は、ホルモンの分泌量が減り、卵巣の働きも徐々に不安定になります。この時期は心身のバランスを崩しやすく、不眠や不安、ほてりなど、さまざまな不調に悩まされることも。
「血(けつ)」と「腎」を補いながら、ストレスを発散する「肝(かん)」の機能を高め、この時期をなるべく穏やかに過ごしましょう。身体にこもった熱を冷ますことも大切です。
「肝」を整える食材を。
そば、みかんの皮、香草類、玫瑰花(マイカイカ)茶、ジャスミン、ミント、菊花茶、うこん、春菊 など
更年期に摂りたい食材は、あさり、しじみ、あわび、たけのこ など。
「血行不良」を改善する食材を。
たまねぎ、紅花、よもぎ、うこん、らっきょう など
腰痛、腰の冷え、足腰が弱くなる、排尿トラブル、物忘れ、むくみ、めまい、耳鳴り、高脂血症、高血圧、狭心症、動脈硬化症
卵巣は、心身の不調に影響を受けやすいデリケートな器官。卵巣にダメージを与える冷えやストレスなどを、暮らしの中で上手に予防することが大切です。
・冷たいものの飲食は控え、なるべく温かいものを。
・生理中は身体を冷やさないよう注意。特に腰回りを温かく。
・毎日の入浴で、心も身体もリフレッシュ。
・適度な運動や友人とのおしゃべりなど、ストレス発散の工夫を。
【卵巣を元気にするツボ】
・三陰交(さんいんこう):内くるぶし中心から指幅4本分上の骨の後ろ
・湧泉(ゆうせん):足の裏側にある第2指の骨のくぼみ
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
症状一覧
CHECK!
TYPEA
エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?
TYPEB
気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?
TYPEC
カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?
TYPED
全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?
TYPEE
カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?
TYPEF
水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?
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