監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
女性は「血」を消耗しやすい体質
中医学には「婦人は血(けつ)をもって本となす」という言葉があります。これは、女性の健康や美しさの基本は「血」にあるということ。月経や出産などを経験する女性の身体は、血を消耗しやすく不調も起こりやすくなります。「血」は、主に西洋医学で考える血液のこと。中医学では、生命活動の基本となる重要な物質とされ、血が充実して体内をスムーズに流れていることが健やかな状態と考えます。
身体の中からいきいきとキレイな女性に
血の主な働きは、全身を巡って身体のあらゆる組織や細胞に栄養を運ぶこと。この作用によって臓器や目、筋肉などに栄養が行き渡り、それぞれが十分に機能して健康な状態が保たれます。また、血は潤いを多く含み、“静”の特徴を持つことから、身体に潤いを与える、精神を安定させる、といった働きも担っています。
体内の血が不足してこうした機能が低下すると、疲労感、冷え、月経不順、目の乾燥、情緒不安定、睡眠障害といった、心身のさまざまな不調を引き起こす原因に。また、美容の大敵となる肌の乾燥や髪のパサつきなども、血の潤い不足によって現れます。
血の働きと基本の養生
トラブル1:心の不調の対策
トラブル2:肌や髪の乾燥の対策
血の養生は、美しさを保つ上でも大切なこと。血は潤いを多く含んでいるため、体内に血が充実していれば、身体のすみずみまで潤いが行き届きます。すると、肌の潤いやハリが生まれ、髪も美しく艶やかに。身体の中に潤いが満ちているため、顔色もいきいきと健康的になります。反対に、血が不足して潤い作用が低下していると、皮膚が乾燥し、髪もパサつきがちに。また、体内の潤い不足は、目の乾燥や便秘、関節が動きにくいといった、さまざまな身体の不調にもつながります。乾燥の症状を感じたら、血を養いながら(「基本の養生」参照)、身体の潤いをしっかり補うことが大切。食生活に気を配り、潤いの多い食材を積極的に摂るよう心がけましょう。
<こんな症状に注意>
<食の養生>
身体に潤いを与える食材を
白きくらげ、バナナ、りんご、桃、いちじく、キウイ、すいか、いちご、海草類、豆腐、卵、オリーブ油、ごま油、豚足、鶏の手羽先、はちみつ など
暮らしの養生で血を元気に
◎胃腸をいたわる
・胃腸は冷えに弱い臓器。温かい食べ物、飲み物を心がけて
・食事のバランスに気を配り、栄養をしっかり摂取
・濃いお茶やコーヒーは、脾胃の負担になるので控えめに
◎血の流れをスムーズに
・友人とのおしゃべりや趣味の時間で、ストレスは早めに解消を
・ウォーキングやストレッチなど、有酸素運動を積極的に
・毎日の入浴を心がけ、心と身体をリフレッシュ
この記事を監修された先生
中医学講師菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。