漢方の知恵袋
監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
突然ですが、咳やのどの痛みといった不調に悩まされたことはありませんか?のどが弱い状態のままでは、かぜも引きやすくなってしまうので要注意です。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、のどを守る方法について分かりやすく説明します。
のどの痛みや腫れ、咳といった不調は”かぜが原因”と考えがちですが、身体全体のバランスを考える中医学では、体内の不調にもその要因があると考えます。
のどは呼吸を行い、食べ物や水分を飲み込む器官。そのため五臓の「肺」「脾胃(ひい)」(胃腸)と特に深い関係があり、これらの機能が低下すると、のどに影響して不調が起こりやすくなるのです。
例えば、自然の邪気(風(ふう)・熱などの邪気)が体内に侵入して肺に熱がこもると、急な咳やのどの腫れ、痛みなどの原因に。肺の「気」(エネルギー)が不足している人は、咳が出やすい、かぜを引きやすいなど、不調を繰り返してしまうこともあります。
また、暴飲暴食などで脾胃の機能が低下すると、身体に「湿(しつ)」(余分な水分や汚れ)や熱が溜まり、のどの腫れや膿、炎症などを引き起こすことも。
このように、のどの痛みや咳などの症状には、さまざまな原因があります。のどから侵入しやすいかぜを予防するためにも、自分の症状や体質に合った”のどケア”を心がけましょう。
のどの不調を起こしやすい人は、その原因をきちんと見極めて対処することが肝心。根本的な原因を改善することで、トラブルを起こしにくい健やかなのどを保ちましょう。
[のどの症状]:急な咳、のどの痛み、赤み、腫れ、黄色く粘りのある痰、声のかすれ
[身体のサイン]:発熱、悪寒、頭痛、舌の苔が薄く黄色い、舌の色が紅い
かぜの症状は、「風(ふう)」の邪気が「熱」「寒」「燥(そう)」などの邪気と一緒に侵入することで起こると中医学では考えます。
急な咳やのどの痛み、腫れを引き起こすのは、風熱の邪気によるかぜ。頭痛や発熱を伴うかぜの症状を感じたら、早めの対処で長引かせないことが大切です。邪気を追い払いながら身体の熱を冷まし、のどの炎症を鎮めましょう。
熱を冷まして、腫れを取り除く:
余甘子(よかんし)、ほおずき(食用のもの)、ミント、菊花茶、梨 など
[のどの症状]:腫れ、白い膿が溜まる、痰が多い
[身体のサイン]: 頭や身体が重い、むくみやすい、食欲不振、軟便、口の粘り、舌の苔が粘つく
暴飲暴食、過度な飲酒などが原因で「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きが低下すると、体内に「湿(しつ)」(余分な水分や汚れ)や「熱」が溜まりやすくなります。この湿・熱がのどに影響すると、腫れや痛みを引き起こす原因に。また、このタイプはのどの奥に白い膿が溜まることも特徴です。口を開けると白い膿の塊が見えるので、気になる人はチェックしてみましょう。
対策の基本は、溜まった湿と熱を取り除き、胃腸の働きを良くすること。食べ過ぎ・飲み過ぎには十分注意して、食生活を整えることが大切です。
水分代謝を促し、胃腸の働きを良く:
しそ、杏仁、カルダモン、緑豆(りょくとう)、春雨、冬瓜、大根、蓮根、たんぽぽ茶、どくだみ茶 など
[のどの症状]:のどの不調を繰り返しやすい
[身体のサイン]: かぜを引きやすい、息切れ、疲労感、顔色が白い、舌の色が淡く苔が薄い
「肺」はのどの状態と密接に関わっています。そのため、肺の「気」(エネルギー)が不足していると、普段から咳が出やすい、のどが痛いといった不調が起こりやすく、免疫力が低下してかぜもひきやすくなってしまうのです。
このタイプは「脾胃(ひい)」(消化器系)が弱く、栄養不足で気を生み出せないことも多いため、まず脾胃を元気にして食事をしっかり摂ることが大切。体内の気を十分に養いながら、肺の働きを高めましょう。
気を養い、肺を健やかに:
大豆製品、山芋、米、しめじ、かぼちゃ、白きくらげ、百合根、白ごま、大根 など
[のどの症状]:乾燥、弱い痛み・かゆみ、午後に痛みが強い、空咳、痰が少ない、声が枯れる
[身体のサイン]:口の渇き、熱っぽい、舌の色が紅く苔が少ない
中医学では「のどは腎の潤いを受けている」と考えます。これは、のどの状態と深く関わる「肺」が、「腎」と密接に関係しているため。腎は体内の水分をコントロールする働きを担っていますが、この機能が低下すると肺の潤いも不足し、のどの乾燥やかゆみが起こるのです。
このタイプの人は、潤い不足で身体の熱を冷ますことができず、熱がこもりやすいことも特徴。体内の潤いを十分に養いながら、余分な熱を冷ますよう心がけましょう。
身体の潤い養い、熱を冷ます:
干し柿、柿、梅、レモン、トマト、オリーブ、はちみつ、氷砂糖、ゆで卵 など
・毎日のうがいを習慣に。お茶や板藍茶(ばんらんちゃ)でのうがいも効果的です。
・たばこ、酒、辛いものは、のどを刺激するので控えめに。
・ナッツ類やせんべいなど、固い食べ物はのどを傷つけやすいので要注意。
・加湿器などを利用して乾燥を予防。エアコンの使い過ぎにも気をつけて。
・おしゃべりやカラオケは適度に。のどの負担を少なくしましょう。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
この記事を監修された先生
中医学講師/菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
症状一覧
CHECK!
TYPEA
エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?
TYPEB
気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?
TYPEC
カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?
TYPED
全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?
TYPEE
カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?
TYPEF
水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?
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