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胃痛・胃もたれ原因がはっきりしない胃腸の不調の改善と対策

監修:菅沼 栄先生(中医学講師)

「機能性ディスペプシア」(機能性胃腸症)を知っていますか? 聞きなれない言葉ですが、実はこの症状、多くの人が抱えている胃腸不調のことなのです。五臓の「肝(かん)」(肝臓)がダメージを受けると、肝と密接に関わる胃腸にも不調が起こりやすくなります。日頃から胃腸が弱いなと感じている人は、積極的にケアしましょう。

その胃痛や胃もたれ「機能性ディスペプシア」かも?

胃もたれや胃痛、胸焼け、膨満感といった不調が続いているのに、内視鏡検査などでは特に異常が見つからない。そんな原因がはっきりとわからない胃腸の不調を「機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)」といいます。従来、このような症状は慢性胃炎、神経性胃炎などの名前で診断されていました。しかし、実際には胃腸に炎症が起きているわけではないため、最近では機能性ディスペプシアと呼ばれるようになっています。
特徴的な症状は「食後の胃もたれ」「少し食べると満腹になる(早期飽満感)」「みぞおちの痛み(心窩部痛)」「みぞおちの焼けるような不快感(心窩部灼熱感)」など。こうした不調を引き起こす原因はまだ明確になっていないため、治療には、症状に合わせて細やかな対処ができる中医学が有効とも考えられています。

中医学では、同じような不調でも一人ひとりの体質や症状を総合的に判断し、身体全体のバランスを整えながら不調を改善していきます。そのため、単に症状を抑えるだけでなく、弱った胃腸の働きを根本から改善できるのです。
機能性ディスペプシアは重大な病気ではありませんが、慢性的に感じる胃の不快感はとてもつらいもの。不調が続くとしっかり食事を摂ることができず、体力や免疫力の低下にもつながってしまいます。おいしく食べて毎日を元気に過ごすためにも、早めの対処で胃腸の健康を取り戻しましょう。

check!タイプ別「機能性ディスペプシア」の対処法

胃腸の不調は病気から起こることもあるので、まず病院で診察を。機能性ディスペプシアと診断されたら「主な症状」を参考に自分の体質を知り、中医学の養生を上手に取り入れましょう。※「主な症状」は、機能性ディスペプシアの特徴的な症状(食後の胃もたれ、早期飽満感、みぞおちの痛み、みぞおちの焼けるような不快感など)に加えて感じている不調と考えてください。

1 痛みが強い「冷え」タイプ

気になる症状

胃痛、腹痛、腹部の冷え、身体の冷え、顔色が白い、下痢や軟便を伴う、舌苔が白い

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改善ポイント
胃腸は冷えに弱い臓器。そのため、冷たい飲食、冷房や冬の寒さなどで胃腸が冷えると不調が起こりやすくなります。
このタイプの症状は胃痛、腹痛などの痛みが特徴ですが、これは冷えの影響で胃腸の血行が悪くなってしまうため。中医学では「不通則痛(ふつうそくつう)」(滞ると痛みが起きる)と考えられていて、血行が滞ると痛みが起きやすくなるのです。
養生の基本は、冷えた身体をしっかり温めること。冷たい飲食はなるべく避け、夏でも温かいもの、常温のものを摂るよう心がけましょう。
摂り入れたい食材

冷えを取り除き胃腸を温める:
しょうが、ねぎ、にんにく、山椒の実、八角、シナモン、ナツメグ、みょうが、紅茶 など

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2 胃がもたれる「痰湿(たんしつ)」タイプ

気になる症状

胃もたれ、胃の重み、むかつき、口の中がねばつく、雨や低気圧の影響で症状が悪化、舌苔が厚くべたつく

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改善ポイント
胃腸は乾燥した状態を好むため、体内に「痰湿」(余分な水分や汚れ)が溜まると不調が起こりやすくなります。また、溜まった痰湿の影響で胃腸の水分代謝が落ちると、さらに痰湿が溜まりやすくなるという悪循環に陥ることも。
痰湿が溜まる主な要因は、暴飲暴食、過剰なアルコール摂取、脂っこい食事や甘いものの摂りすぎなど。梅雨から夏の湿気が多い季節は、特に痰湿が溜まりやすくなるので注意が必要です。
このタイプの人は、まず食生活を改善することが大切。食事には水分代謝を促すものを上手に取り入れて、体内の余分な水分をすっきり取り除きましょう。
摂り入れたい食材

香りの良い食材、水分代謝を促す食材で胃腸を整える:しそ、サンザシ、麦芽、ちんぴ(乾燥したみかんの皮)、カルダモン、梅干し、 大根、春雨、もやし、とうもろこしの髭茶、はと麦、粟 など

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3 膨満感がある「ストレス」タイプ

気になる症状

上腹部の膨満感、お腹の張り、両脇が苦しい、げっぷ、胃痛、ストレスで症状が悪化、口が渇く、口の中が苦い、熱感、頭痛、過食傾向、排便異常(便秘や軟便)、舌苔が薄く乾いている

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改善ポイント
「肝(かん)」(肝臓)はストレスを発散させ、体内の「気」(エネルギー)の巡りをスムーズに保つ臓器。この機能が胃腸の働きにも深く影響しているため、過剰なストレスで肝の機能が低下し、気の巡りが停滞すると、膨満感、お腹の張り、げっぷといった不調が起こりやすくなるのです。
また、身体のエネルギー源である気の停滞が長引くと、体内に余分な熱が発生し、口の渇き、熱感などの症状が現れることもあります。
このタイプは、精神的な要因で胃痛などが起こりやすいことが特徴。日頃のストレスはこまめに発散して、気の巡りをスムーズに保つよう心がけましょう。
摂り入れたい食材

香りの良いもので気の巡りを整える:ハマナスの花茶、菊茶、ジャスミンティー、うこん、香草類、たけのこ、グリンピース、ふきのとう、たらの芽 など

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4 食欲不振が続く「虚弱」タイプ

気になる症状

食欲不振、疲労感、無力感、息切れ、かぜを引きやすい、めまい、顔色が黄色い、痩せている、舌の色が淡い

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改善ポイント
食の不摂生を続けている人、慢性疾患を患っている人などは、胃腸の働きが低下して食欲が落ち、不調が長引きがちになります。
胃腸は食事の栄養から「気」(エネルギー)を生み出し、生命活動の基礎を支える大切な臓器。そのため胃腸の不調が慢性化すると、身体のエネルギー不足で体力や免疫力が落ち、疲労感、息切れ、かぜを引きやすくなるといった全身の不調につながってしまうのです。
食欲不振などの軽い不調はつい放置しがちですが、油断は禁物。根本的な体力を養うためにも、気になる症状があれば積極的に対処しましょう。
摂り入れたい食材

胃腸を養い体力をつける:米、もち米、いんげん豆、山芋、じゃがいも、キャベツ、豆腐、湯葉、豆乳、牛乳、ヨーグルト、鶏肉、白身魚 など

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point!暮らしのポイント

・食事や飲み物は“温かいもの”を基本に。刺身やサラダには、身体を温める食材(しそ、みょうがなど)を添える一工夫を。
・味は薄めを意識して。脂っこい料理や激辛料理、コーヒー、アルコールなどは控えめに。
・仕事や読書をしながらの食事はNG。食べることに集中して、楽しく食事を取りましょう。
・食材はなるべく新鮮なものを。冷蔵庫を過信せず、食中毒にも十分注意しましょう。
・夕食は腹八分目を心がけ、胃腸に負担をかけないように。
・スムーズな排尿、排便を保ち、胃腸の働きを健やかに保ちましょう。【胃腸に効くツボ】

足三里(あしさんり):ひざのお皿の下の縁から指4本分下がった向こうずねのすぐ外側。胃腸の症状全般を緩和します。
※入浴後などのリラックスした時間に呼吸をととのえながらほどよく刺激しましょう。月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載

胃腸に効くツボ

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この記事を監修された先生

中医学講師/菅沼 栄先生

1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。

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TYPED

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