蓄膿症(副鼻腔炎)・萎縮性鼻炎は一度発症すると治すのは難しいと思われがちですが、中医学では体質を整えることで改善できると考えます。あきらめずに対処することが大切です。この記事では、これらのつらい症状を緩和させる症状別の対処法をご紹介します。
体内の不調を整えて、鼻トラブルを改善
蓄膿症(副鼻腔炎)に対して、西洋医学では主に“症状を抑える”ことで対処をします。一方、中医学の対処は「臓器や器官は全体が密接に影響しあっている」という考え方(全体観)が基本。そのため、鼻の症状も体内の不調が要因となって起こると考え、その原因を取り除くことで根本から改善していきます。
副鼻腔に炎症が起こる蓄膿症(副鼻腔炎)は、「肺」や「脾胃(ひい)」(胃腸)にこもった過剰な「熱」、体内に溜まった「湿」(余分な水分や汚れ)などが深く関係しています。また、鼻の粘膜が乾燥してかさぶたができる萎縮性鼻炎は、肺の潤い不足が主な要因となります。
こうした体内の不調をしっかり取り除くことで、なかなか治らない鼻のトラブルも改善が期待できます。止まらない鼻水や慢性的な臭いなど、日常につきまとう鼻の症状はとても不快なもの。これまであきらめていた人も積極的に対処をして、鼻の不調を根本からスッキリ改善しましょう。
check!症状別・鼻のトラブル対処法
蓄膿症(副鼻腔炎):鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起こり、膿が溜まる蓄膿症。一度発症すると治りにくく、長期化しやすいため、体質を根本からしっかり整えて症状を改善することが大切です。
萎縮性鼻炎:鼻の粘膜が萎縮して薄くなり、乾燥してしまう症状。進行すると鼻の出血や嗅覚の低下にもつながるため、早めに適切な対処をすることが大切です。
1
蓄膿症(1)
「肺熱」タイプ
- 気になる症状
- 黄色く粘りのある鼻水、嗅覚低下、頭痛、痰、舌が紅い、舌苔がやや黄色い
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- 改善ポイント
蓄膿症の初期に多いタイプ。「肺」に熱がこもり、粘りのある鼻水、痰などの症状が現れます。長期化しないよう、不調に気づいたら早めに体の熱を取り除くよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 肺にこもった熱を冷ます:菊花茶、たんぽぽ茶、くちなし、アロエ、大根、ミント、金銀花茶(きんぎんかちゃ) など
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2
蓄膿症(2)
「脾胃湿熱(ひいしつねつ)」タイプ
- 気になる症状
- 黄色く粘りのある鼻水(量が多い)、頭重、倦怠感、食欲不振、舌苔が黄色くベタつく
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- 改善ポイント
蓄膿症が長期化すると、過剰な「熱」に加えて「湿」(余分な水分や汚れ)も溜まるように。「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きも弱くなるため、体内に溜まった湿と熱をしっかり取り除くことが大切です。
- 摂り入れたい食材
- 溜まった湿熱を除去する:はと麦茶、どくだみ茶、へちま、あけび、菖蒲茶 など
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3
蓄膿症(3)
「気虚(ききょ)」タイプ
- 気になる症状
- 鼻水が濃く白い、嗅覚低下、冷え、息切れ、疲労感、舌の色が淡い、舌苔が白く薄い
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- 改善ポイント
蓄膿症が慢性化すると、体内の「気」(エネルギー)を消耗して治す力が弱くなっていることも。疲労を感じやすい人は気をしっかり養って、不調を改善する根本的な力を付けましょう。
- 摂り入れたい食材
- 気を養い身体を温める:山芋、いんげん豆、なつめ、大豆製品、しょうが、ねぎ、はと麦茶、いしもち など
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4
萎縮性鼻炎(1)
「潤い不足」タイプ
- 気になる症状
- 鼻の乾燥感、かさぶた、濃厚な鼻水(緑っぽい、血が混ざることも)、鼻が臭う、嗅覚低下、舌がやや紅い、舌苔が少ない
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- 改善ポイント
乾燥症状(鼻の乾燥感やかさぶた)が特徴の萎縮性鼻炎は、体内の水分をしっかり養って「肺」の潤いを守ることが養生の基本。また、肺と関わりの深い「腎」を養うことも大切です。
- 摂り入れたい食材
- 身体を潤し鼻粘膜の乾燥を緩和する:はちみつ、百合根、ごま、バナナ、白きくらげ、くるみ、黒豆 など
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5
萎縮性鼻炎(2)
「気虚(ききょ)」タイプ
- 気になる症状
- 鼻水が濃厚で白っぽい、嗅覚低下、疲労、食少、お腹の張り、軟便、舌の色が淡い、舌苔が白い
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- 改善ポイント
症状が長期化すると、体内の「気」(エネルギー)が不足し、鼻の状態と深く関わる「肺」や「脾胃」(胃腸)の働きが弱くなってしまうことも。不調を改善するためにも、気を十分養うよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 気を養い身体を温める:いんげん豆、山芋、大豆製品、白身魚、りんご など
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point!気になる「後鼻漏(こうびろう)」の対処
アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎、蓄膿症などが原因で鼻水の量が増えると、のどの方に鼻水が流れ落ちてくる「後鼻漏」が起こることも。咳などの原因にもなるので、気になる人はしっかり養生を。体内にこもった熱と痰を取り除くことが基本です。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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