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「痩せたい」は多くの女性の尽きない悩みですが、無理なダイエットで体調不良や肌荒れなどを招いては本末転倒。体質を健やかに整える中医学の知恵を摂り入れて、身体の中から“キレイに痩せる”をめざしましょう。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、体質改善ダイエットを分かりやすく説明します。
体質改善で「太りにくい」身体づくりを
ダイエットは、食事をコントロールして肥満を予防し、健康を保つことが本来の目的。痩せるためだけに過剰な食事制限などをすると、体力も落ち、貧血や月経異常、骨粗しょう症、肌荒れ、抜け毛といったさまざまな不調を招いてしまうので注意が必要です。
また、自分では太り過ぎと感じていても、実際には標準的な体重というケースも少なくありません。まずは自分の適正体重を知り、肥満気味かなと感じたら、無理をせず健康的に体重を落とすよう心がけましょう。
中医学では、肥満は食べ過ぎや運動不足のほか、体内にも不調があり「太りやすい体質」になっている状態と考えます。
そのため、ダイエットをするときも、まず太る原因となっている不調を改善し、体質を健やかに整えることが基本に。すると、肥満の解消につながることはもちろん、身体全体が健康になるため、元気が出て肌や髪のツヤもアップ。リバウンドもしにくくなり、すっきりとキレイに痩せることができるのです。
肥満は生活習慣病と深い関わりがあり、高血圧や心臓疾患、脳血管疾患、糖尿病など、さまざまな病気のリスクにもつながります。これからを元気に過ごすためにも、中医学の知恵を活かした“健康ダイエット”を心がけ、ムリなく上手に体重をコントロールしましょう。
check!肥満タイプ別・体質改善でダイエット
まずは自分の適正体重・BMI値(肥満度の目安となる体格指数)の確認を。肥満気味の人は、そのタイプから自分の体質をチェックしましょう。
【適正体重】
身長(m)×身長(m)×22=適正体重
【BMI値】
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI値
【一般的なBMI値の目安】
18.5以下:低体重/18.5以上25.0未満:普通体重/25.0以上:肥満
1
胃腸の働きが弱い
「洋ナシ型肥満・痰湿(たんしつ)」タイプ
- 気になる症状
- 主に皮下脂肪型肥満、痰が多い、むくみ、頭重(ずじゅう)熱が発生すると食欲旺盛、便秘、赤ら顔、口の渇き
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- 改善ポイント
「洋ナシ型肥満」(皮下脂肪型肥満)は腰まわり、太もも、お尻など、主に皮下組織に脂肪が蓄積し、下半身の肉づきが良くなるタイプ。皮下脂肪がつきやすい女性に比較的多く見られます。
「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きが弱い、あるいは暴飲暴食、冷たいものや水分の摂り過ぎなどで胃腸が弱っています。水分代謝が落ちて体内に「痰湿(たんしつ)」(余分な水分や汚れ)が溜まりがちになり、いわゆる“水太り”のような皮下脂肪の多い「洋ナシ型肥満」を招いてしまうのです。
このタイプは、過食に注意してバランスよく栄養を摂る、冷たい飲食は控えるなど、脾胃に負担をかけない食生活を心がけることが大切。
また、痰湿は長く停滞すると体内に余分な熱を生み、便秘や食欲増加を招いてしまうことも。すると、さらに“太りやすく痩せにくい”体質になってしまうので、溜まった痰湿や熱は早めに取り除くよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 利水作用、通便作用のある食材を積極的に:
冬瓜、苦瓜、竹の子、もやし、春雨、はと麦、大根、蓮の葉、こんにゃく、ところてん、海草類、とうもろこしの髭茶 など
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2
ドロドロ血で血行が悪い
「リンゴ型肥満・瘀血(おけつ)」タイプ
- 気になる症状
- 主に内臓脂肪型肥満、顔色が暗い、しみが多い、痛みの症状(頭痛、生理痛、関節痛など)、しこり(乳腺症、子宮筋腫、脂肪肝など)、舌の色が暗く瘀点・瘀斑(黒い点やしみ)がある
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- 改善ポイント
リンゴ型肥満(内臓脂肪型肥満)は内臓脂肪が過剰に蓄積し、ウエストまわりが大きくなるタイプ。比較的男性に多く、一見太って見えないので“隠れ肥満”と呼ばれることも。
※簡易な目安:ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上
油っこいものや甘いものの摂り過ぎ、慢性疾患、加齢などが原因で、ドロドロ血の「瘀血(おけつ)」(血行不良)を起こしています。ドロドロ血は血中の脂質(中性脂肪やコレステロール)が高いため、放っておくと脂肪が溜まりやすく、内臓に脂肪がつく「リンゴ型肥満」を招きやすくなります。
このタイプの肥満は、動脈硬化症や狭心症、脳梗塞、糖尿病といった生活習慣病につながりやすいので要注意。
油っこい食事は控えて腹八分目を心がける、血液サラサラ食材を積極的に摂るなど、血流をスムーズに保つよう心がけましょう。また、適度な運動を心がけ、身体全体の代謝を上げることも大切です。
- 摂り入れたい食材
- 血液サラサラ食材で血流を良く:
玉ねぎ、ピーマン、なす、もずく、ひじき、うこん、酢、サンザシ、そば、紹興酒、ひまわりの種 など
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3
食べないのに太りがち
「虚弱」タイプ
- 気になる症状
- 太り気味、痩せにくい、疲労感、息切れ、汗が多い、かぜを引きやすく治りにくい、食欲不振、軟便、下痢、眠くなりやすい、冷え症、腰痛、舌の色が淡く苔が白い
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- 改善ポイント
中医学でいう「気」とは生命活動を支えるエネルギーのこと。「脾胃(ひい)」(胃腸)の働きが弱いと、食事の栄養から「気」を十分に生み出せないので、身体の根本的なエネルギーが足りず基礎代謝が低下しがちになります。疲れやすく、身体を動かすことも億劫に。
その結果、脂肪を十分に燃焼できず“あまり食べていないのに太る”という状態を招いてしまうのです。
日頃から疲れやすく、年をとって痩せにくくなった…。そんな人は、このタイプに当てはまることも多いので気を付けて。
脂肪をしっかり燃焼できる「太らない体質」をつくるためには、体内の気を充実させることが大切。痩せようとして無理に食事制限をすると、さらに気が不足してしまうので注意しましょう。
- 摂り入れたい食材
- 脾胃を養い、消化吸収の働きをアップ:
きのこ類、山芋、くるみ、ごま、松の実、クコの実、なつめ、赤身肉、りんご、キャベツ、米、落花生、かぼちゃの種 など
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point!暮らしのポイント
・食事は「腹八分」を心がけ、間食や甘いものは控えめに。
・体内の老廃物を取り除くためにも、毎日のスムーズな排便を。
・適度な水分補給で排尿を促す。飲み物は温かいお茶がおすすめ。
・散歩、ヨガ、水泳、太極拳など、無理のない有酸素運動を習慣に。
・入浴で発汗を促し、体内の老廃物の排出を。
【「きちんと食べる」がダイエットの基本】
中医学では、白米などの炭水化物は「脾胃(ひい)」(胃腸)を養う大切な食材と考えます。
脾胃を元気に保つことは、体内の気を充実させて代謝をアップし、肥満の要因となる「痰湿(たんしつ)」(余分な水分や汚れ)の予防にもつながるダイエットの要。痩せるために「食べない」ではなく、きちんと「食べる」ことを大切にして、太りにくい健やかな体質をつくりましょう。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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