突然ですが、「かぜをひいたら早く治したい」、「できることならかぜをひきたくない・・・」と思っていませんか?
かぜをひいたからといって仕事や家事・育児を休めずしんどい、という経験もあるかもしれません。
「かぜは万病のもと」とも言われ、さまざまな病気の原因ともなるので「ただのかぜ」と油断するのは禁物です。
そのためにこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、かぜの症状別の対策を分かりやすく説明します。また、かぜをひかないためにできることもお伝えします。
今かぜをひいている方は早く良くなり、今後もかぜをひかないでいられますように。
油断大敵!「風邪(ふうじゃ)」は万病のもと
中医学 では、かぜは自然界の邪気「風邪(ふうじゃ)」が身体に侵入することで起こる症状と考えます。目に見えないので「邪気ってなに?」と思ってしまうかもしれませんが、悪いものが身体に入ってくるイメージを持ってもらえれば大丈夫です。
風邪は「寒」「熱」などのほかの邪気と結びつきやすく、風寒(ふうかん)・風熱(ふうねつ)・風湿(ふうしつ)・風燥(ふうそう)などの邪気となって身体に侵入。そのため、かぜをひくと、悪寒、鼻水、咳、発熱といったさまざまな症状が現れるのです。
このように、一口にかぜといってもその症状は単純ではありません。かぜを早く治すためには、まず自分の症状を見極めることが大切。適切な対処を心がけ、症状の悪化を防ぎましょう。
check!かぜかな?と感じたら、早めの対策で撃退!
かぜの症状は、悪寒や頭痛などが特徴の寒(かん)、熱やのどの痛みなどが特徴の熱(ねつ)、吐き気や下痢などが特徴の湿(しつ)、咳などが特徴の燥(そう)の4つのタイプがあります。
それぞれの症状には特徴があるので、そのタイプに合った対処法を知ることが大切。今かぜをひいている方は、自分自身がどんな症状なのかを念頭におきながら読んでみてください。
それでは、中医学の知恵を活かした食と暮らしの養生法(ようじょうほう。健康を維持するための方法)を症状別にご紹介します。
1
ぞくぞくする初期症状
「寒」のかぜ
- 気になる症状
- 「寒」のかぜは、ぞくぞくっとする悪寒や頭痛、関節の痛み、肩コリ、透明な鼻水などが特徴です。かぜの初期にあたる症状で、熱の自覚症状は軽く、汗もあまりかきません。
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- 改善ポイント
この時期のかぜは、身体を温めて邪気「寒(かん)」を取り除くことが大切。白菜、大根、ネギを煮込んだスープ「三白湯(さんはくとう)」は、身体をポカポカに温めてくれます。
このスープに、発汗を促すショウガや、三つ葉などの香草を加えるのもおすすめです。辛みのあるニンニクにも発汗作用があるので、すり下ろしてお湯を注ぎ“ニンニク湯”にして飲んでみてください。
- 摂り入れたい食材
- 三白湯(白菜、大根、ネギ)、ショウガ、香草(三つ葉など)、ニンニク
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2
のどの痛みと高い熱
「熱」のかぜ
- 気になる症状
- 「熱」のかぜは、発病したときから熱が高く、のどの腫れや痛み、黄色く粘りのある鼻水や痰、のどの渇きといった症状が現れます。
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- 改善ポイント
塩水やお茶でこまめにうがいをし、外出から戻ったら手洗いも忘れずに。部屋の空気をよく換気することも大切です。
解毒作用のある酢と水を1:2の割合で鍋で煮立てて蒸発させ、部屋の空気を消毒するという習慣も中国では一般的なので、ぜひ試してみてください。ゴボウをみそ汁の具に加えたり、菊花茶、ミントティー、板藍茶(ばんらんちゃ)などのお茶を飲むようにすると良いでしょう。
- 摂り入れたい食材
- ゴボウのみそ汁、菊茶、ミントティー、板藍茶
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3
胃腸に来る
「湿」のカゼ
- 気になる症状
- 「湿」のかぜは、胃のムカつきや吐き気、痛み、下痢、食欲不振など、消化器系の症状が現れる胃腸型のかぜ。
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- 改善ポイント
胃に不安のあるときは、生ものや油っこい料理はなるべく避けるようにしましょう。米は、消化しやすいようおかゆにして食べるのがおすすめです。
おなかを温めて胃の痛みを和らげる八角や山椒の実、解毒作用のあるニンニクやシソ、ショウガなどをうまく料理に活用してください。
- 摂り入れたい食材
- シソ、ショウガ、ニンニク、八角、山椒の実
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4
咳がつらい
「燥」のかぜ
- 気になる症状
- 「燥」のかぜは咳が強く、痰がからんで胸に重苦しさを感じることも。呼吸器系の弱い人に多く見られる、治りかけの時期の症状です。
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- 改善ポイント
マスクや加湿器などで湿気を補い、肺を潤すように心がけましょう。
梨を皮ごと蒸したものや、銀杏入りの茶碗蒸し、百合根のみそ汁、杏仁豆腐、大根の煮物など、肺を潤す食べ物を食事のメニューに加えてみてください。
- 摂り入れたい食材
- 梨(皮ごと蒸して)、銀杏入りの茶碗蒸し、百合根のみそ汁、杏仁豆腐
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point!体力を養ってかぜを寄せつけない身体に
かぜをひいてしまったら早めに治療することが大切ですが、何より肝心なのは、かぜに負けない身体をつくること。かぜは風邪(ふうじゃ)の侵入によってかかるものなので、外から侵入しようとする風邪をはね除けてしまえば、かぜをひくことはありません。体力を養い、防衛機能を高めることで、かぜを予防することができるのです。逆に、体力が落ち、抵抗力が不足するとかぜをひきやすくなるので、十分な体力を養うように心がけましょう。また、身体の疲れはもちろん、ストレスや女性の生理時、出産後などにも注意が必要です。
生活の中でまず気を付けたいことは、不摂生をしないこと。飲み過ぎや寝不足、疲労などはかぜをひく原因となるので気を付けましょう。また、ストレスを溜めずにいきいきとした毎日を過ごし、気力を充実させることも大切です。空気の乾燥する冬は、のどや肺など呼吸器を潤し乾燥から守ることもかぜの予防につながります。加湿器やマスクを利用したり、梨や銀杏など肺を潤す食べ物をとるなどの工夫をしましょう。うがいや手洗いなど基本も忘れずに。
また、冬のかぜを予防するには、寒さから身体を守ることも大切です。外出する際は手袋やマフラーなどを用意し、なるべく暖かな服装を心がけてください。寝る前にお風呂に入り、よく体を温めるのも良いですね。お風呂は、ぬるめのお湯に長くつかることがポイントです。あつあつの鍋料理や、ネギ、ニンニク、ショウガなどは、身体を温めて発汗を促す効果があるので、上手にとり入れてみてください。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
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PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
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