季節の変わり目で体調を崩しやすい時期に、かぜや花粉症などの影響から咳や喘息の症状に悩まされることがありませんか?
なかなか止まらない咳や喘息は、慢性化すると体力を消耗し、身体全体の不調にもつながります。
そこでこの記事では、中国の伝統医学である中医学をもとに、咳や喘息の対処法を分かりやすく説明します。
早めの対処で悪化・慢性化を防ぐ
咳は、基本的にはウイルスや花粉などの異物を身体から追い出すために起こる大切な防衛反応の一つ。むやみに止めてしまうのはあまり良くないとされています。しかし、咳は一度続くとなかなか止まりにくく、悪化すると肺炎や喘息などの重い症状につながることも。また、症状の慢性化は睡眠不足や体力の消耗を招き、全身の健康状態に影響することも少なくありません。そのため、初期の段階できちんと対応し、悪化させないことが大切です。
中医学では、咳の症状を引き起こす初期の原因を大きく2つに分けて考えます。1つは身体の「冷え」。体質的な冷え性や、気候、冷房などによる寒さから起こる咳で、薄い鼻水や痰、悪寒などを伴います。
もう1つは「熱」による咳で、熱がこもりやすい体質の人、かぜやウイルスの影響で体内に熱が発生した人などに起こる症状。発熱や発汗、口の渇き、濃い痰などが特徴です。
このほか、過剰な「ストレス」や身体に溜まった「痰湿(たんしつ)」(体内の余分な水分や汚れ)、慢性化による「虚弱」なども、症状の悪化や長期化を招く原因に。
咳や喘息は、繰り返しやすい症状です。きちんと改善して再発を防ぐためにも、直接的に症状を抑えるだけでなく、原因をきちんと見極めて根本から体質を整えるよう心がけましょう。
check!タイプ別・咳と喘息の養生法
咳や喘息の養生は、「肺」を健やかに保つことが基本。身体の冷えや熱、ストレスといった原因を取り除きながら、肺の機能を高めるよう心がけましょう。また、「脾胃(ひい)」(胃腸)や「腎」の不調も肺の機能低下につながるため、自分の体質や症状を見極めながら適切に対応することが大切です。
1
早めの対処で身体の冷えを
追い払う
悪寒や頭痛を伴う
「冷えタイプ」
- 気になる症状
- 咳、喘息、痰が薄い、悪寒、発熱、頭痛、汗は少ない、顔色が白い、舌の苔が薄く白い
もっと見る
- 改善ポイント
気候や冷房による寒さ、体質的な冷え性などで身体が冷えたときに起こる咳・喘息の初期症状。薄い鼻水や痰、悪寒、発熱などを伴います。かぜの初期に起こる咳もこのタイプで、身体が冷えると症状が悪化してしまうことも。
初期の段階で早めに改善できるよう、まず身体をしっかり温めて冷えを追い払い、「肺」の機能を高めるよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 体内の冷えを発散する食材を:
ねぎ、しょうが、シナモン、しそ など
閉じる
2
こもった熱を冷まし、
肺の機能を健やかに
発熱や発汗を伴う
「熱タイプ」
- 気になる症状
- 咳、喘息、呼吸が荒い、汗をかく、痰が濃い、胸痛、口の渇き、発熱、顔色が紅い、尿の色が濃い、便秘気味、舌が紅い、舌の苔が黄色い
もっと見る
- 改善ポイント
かぜやウイルスなどの影響で身体に熱が発生すると、「肺」が炎症を起こして咳・喘息の症状が現れます。濃い鼻水や痰、発熱、口の渇きなど熱っぽい症状を伴うことが特徴で、体質的に熱がこもりやすい人も要注意。
養生の基本は、体内にこもった熱を冷ますこと。肺の炎症を鎮め、咳や喘息の症状をやわらげましょう。
- 摂り入れたい食材
- 体内の熱を冷ます食材を:
葛、菊花、桑葉、竹の葉、ごぼう、びわの葉、梨、大根 など
閉じる
3
気分を穏やかに保ち、
気の流れをスムーズに
気の巡りが悪い
「ストレスタイプ」
- 気になる症状
- 咳、喘息、胸が苦しい、強いストレスで発作が起きる、イライラしやすい、怒りっぽい
もっと見る
- 改善ポイント
強いストレスなどを受けて精神が不安定になると、全身を巡る「気」の流れが悪くなって咳や喘息の症状が悪化しやすくなります。ストレスで症状が強く出る人、普段からイライラしやすい人は、気分を穏やかに保つよう心がけることが大切。ストレスを上手に発散して、気の流れをスムーズに保ちましょう。
- 摂り入れたい食材
- ストレスを発散する香りの良いものを:
ハッカ、しその実、みかんの皮、ゆずの皮、花茶 など
閉じる
4
「脾胃」の機能を整え、
汚れの溜まらない身体に
食事の不摂生に注意
「痰湿(たんしつ)タイプ」
- 気になる症状
- 咳、喘息、痰が多い、胸苦しい、悪心、食欲不振、舌の苔が厚い
もっと見る
- 改善ポイント
身体に溜まった「痰湿(たんしつ)」(体内の余分な水分や汚れ)は、「肺」にトラブルを引き起こす原因の一つ。食事の不摂生などが原因で「脾胃(ひい)」(胃腸)の機能が低下すると、痰湿が溜まりやすくなり、咳や喘息の原因となります。
太り気味の人、暴飲暴食などで脾胃が弱っている人などは、まず身体に溜まった痰湿を取り除き、脾胃の機能を高めるよう心がけましょう。
- 摂り入れたい食材
- 余分な水分や汚れを取り除き、気の流れをスムーズに:
杏仁、銀杏、くらげ、海苔、桔梗の根 など
閉じる
5
「脾胃」「腎」の元気を保ち、
根本的な体力を
体力不足の
「虚弱タイプ」
- 気になる症状
- 長期化した咳、喘息、夜間の咳が強い、息切れ、疲労感、汗が出る(自汗)、かぜを引きやすい、食欲不振、舌の色が淡い
もっと見る
- 改善ポイント
咳や喘息の症状が慢性化すると、身体全体が消耗してしまいます。生命エネルギーの源である「腎」や、食べ物を消化吸収する「脾胃(ひい)」(胃腸)の機能も弱くなるため、「肺」の栄養や潤いも不足しがちになり、症状もなかなか改善できません。
高齢者、虚弱体質の人などは、基本的な体力を養うために脾胃、腎の機能を高めることも大切。しっかり栄養を摂ることで肺にも栄養と潤いを与え、健やかな状態に整えましょう。
- 摂り入れたい食材
- 肺・脾胃・腎を補い、身体を養う食材を:
白きくらげ、蜂蜜、レモン、くるみ、百合根、山芋、かぼちゃ、クコの実 など
閉じる
point!生活習慣の改善で“繰り返さない”カラダに
咳や喘息は繰り返しやすい症状です。一時の症状緩和だけでなく、再発しないよう体質を根本から整えることがとても大切。ストレスを溜めない、食生活を見直す、睡眠を十分にとるなど、体力が十分にある健康な身体をつくるよう、生活習慣の改善を心がけましょう。
【健康的な暮らしのポイント】
・空気のきれいな場所で、ゆっくりと呼吸。
・ウォーキングなどの有酸素運動を続け、肺のチカラを。
・食事は野菜や大豆製品を積極的に。
・塩分や糖分、油っこいものの摂り過ぎには要注意。
・こまめな掃除でほこりやカビを除去。
・たばこの煙や排気ガスはなるべく避けて。
・体調の良いときは、乾布摩擦も効果的。
月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載
あなたの体質タイプをチェック
関連記事
PROFILE
中医学講師/監修 菅沼 栄先生
1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。
1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
症状別一覧へ戻る