監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
「トイレで毎日健康チェック!」。2回目の今回は、「尿」の状態と体質の関係についてお話します。排尿は、毎日だれにでもあるもの。その分、回数が増えたり色が濃くなったり、そんな変化にも気付きやすいので、尿をこまめにチェックして健康管理に役立ててみてください。
“正常な排尿”はどんな状態?
尿の量や色などは、そのときの水分摂取量や体の状態によって異なります。例えば、朝一番の尿は色が濃かったり、たくさん水分を摂ったあとはトイレが近くなったり、こうした一時的な変化であれば特に心配はありません。一方、いつもと違う尿が長期間続く場合は要注意。体内の不調や病気が原因になっていることもあるので、原因を知って早めに対処することが大切です。
<正常な排尿の目安>
・尿の色:淡い黄色〜淡い黄褐色
・尿のにおい:排出直後は少しにおいを感じる程度。強い異臭はない
・排尿量:1回200~400mL程度(コップ1杯くらい)/ 1日1,000〜1,500mL程度
・排尿回数:1日5〜7回程度(個人差があります)
・排尿の状態:痛みや違和感がなく、スムーズに排尿できる。残尿感がない。
尿に現れるのは、体の「冷え・熱」や「腎」の不調
中医学では「二便(にべん)」(大便・小便)の観察を重視していて、尿の状態も体質や臓腑の働きを知るヒントになると考えます。
体質は大きく「熱証」と「寒証」に分けて捉え、尿の色が淡く透明で、量が多く、においが少ない場合は体が冷えている寒証。一方、尿の色が濃く濁りがあり、量が少なく、においが強いときは、体に熱がこもっている熱証と捉えます。
また、臓腑では、尿の状態は「腎」と深く関わっていると考えます。腎は水分代謝をつかさどり、排尿のコントロールを担う臓腑。そのため、腎の働きに不調があると、頻尿や尿漏れといった尿トラブルが起こりやすくなるのです。また、体内に溜まった「熱」や「湿」(過剰な水分や汚れ)、ストレスによる「肝」の不調なども、尿の問題を引き起こす要因となります。
排尿の状態から体質を知る 〜中医学の尿チェック〜
頻尿、排尿時の違和感といった尿のトラブルは、体内に不調があるサイン。日々の排尿をこまめにチェックして、気になる症状があれば体をきちんとケアすることが大切です。
【頻尿】
一般的には、起床から就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。ただし排尿には個人差があるため、本人が回数の多さを感じている場合は8回未満でも頻尿と捉えます。

【少尿(排尿の回数、量が少ない)】
排尿回数が正常(1日5〜7回)よりも少ない状態。頻尿に比べて気になりにくい症状ですが、少尿が続く場合は体の不調と捉えて改善していきましょう。

【排尿時の違和感】
痛みや不快感、残尿感などがあり、すっきり排尿できない状態。膀胱炎など感染症が原因の場合は、早めに改善して悪化、慢性化を防ぐことが大切です。

気になる不調を改善。体質ケアで“健康な尿”を保つ
排尿は1日に何度もあるため、不調があるとストレスを感じやすいもの。気になる症状があればきちんとケアをして、すっきり排尿できる体質をめざしましょう。
●「腎虚」タイプ
さまざまな尿の不調と関わる体質。尿トラブルのほか、体の冷え、足腰のだるさ、腰痛、めまい、抜け毛、などの症状が見られます。腎は冷えに弱いので、腎を養いながら体を温めることを心がけて。
<おすすめ食材>
山芋、くるみ、蓮の実、栗、黒豆、ごま、にら、えび、牛肉、鶏肉、牡蠣 など
●「脾虚」タイプ
頻尿、尿漏れ、疲れやすい、胃痛腹痛、食欲不振、消化不良、軟便、などの症状が見られます。温かい飲食、胃腸にやさしい食生活などを意識して、脾胃の働きを健やかに保ちましょう。
<おすすめ食材>
山芋、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、大豆製品、卵、きのこ類 など
●「冷え」タイプ
頻尿、悪寒、手足の冷え、関節の痛み、などの症状が見られます。一時的な症状の場合が多いので、体をしっかり温めて冷えを取り除き、不調を緩和させましょう。
<おすすめ食材>
しょうが、ねぎ、大葉、みょうが、らっきょう、シナモン など
●「肝鬱気滞」タイプ
ストレスによる頻尿、尿の切迫感、残尿感、下腹部の張り、イライラ、怒りっぽい、などの症状が見られます。日常のストレスを上手に解消し、滞りがちな気をスムーズに巡らせましょう。
<おすすめ食材>
菊、三つ葉、セロリ、大根、いか、たこ、柑橘類、ミント、ジャスミン など
●「熱盛傷津」タイプ
尿が少ない、尿の色が濃い、口やのどの渇き、ほてり、暑がり、便秘気味、などの症状が見られます。消耗しがちな水分をしっかり養い、体内の過剰な熱を冷ましましょう。
<おすすめ食材>
きゅうり、すいか、メロン、トマト、豆腐、梨、ぶどう、さとうきび など
●「水湿停滞」タイプ
尿が少ない、尿の色が濃い、むくみ、体が重い、食欲不振、胃のムカつき、などの症状が見られます。利尿作用のある食材で湿を取り除き、水分の摂り過ぎにも気をつけましょう。
<おすすめ食材>
とうもろこしの髭茶、はと麦、冬瓜、いんげん、白菜、黒豆、緑豆、海藻類、蛤 など
●「湿熱」タイプ
排尿時の痛み、尿量が少ない、尿の色が濃い、血尿、むくみ、体が重い、食欲不振、胃のムカつき、などの症状が見られます。体に溜まった湿と熱を取り除き、体をすっきりさせましょう。
<おすすめ食材>
きゅうり、苦瓜、すいか、冬瓜、金針菜、小豆、緑豆、もやし など
●「腎陽虚・気化不利」タイプ
冷えると排尿時の痛みや不快感、残尿感、尿の切れが悪い、冷え、疲労感、足腰のだるさ、腰痛、などの症状が見られます。体を温めて陽気を守り、腎をしっかり養いましょう。腹巻きなどで腰回りを温めることもポイントです。
<おすすめ食材>
長芋、にら、ブロッコリー、えび、うなぎ、すずき、黒豆、ごま、シナモン など
尿トラブルに効くおすすめツボ
● 腎兪(じんゆ):ウエスト位置、背骨から指2本分外側
→指や拳で押す。蒸しタオルなどで温めるのもおすすめです。
● 関元(かんげん):おへその中央から指4本分下
→指で気持ちいいと感じる程度に5秒ほど押す。

<こんなときは病院へ!>
・血尿
・常に尿が泡立っている
・量が極端に多い、少ない、まったく出ない
・腐ったりんごのような甘酸っぱいにおいがする
・排尿直後から尿がにごっている、強いアンモニア臭がある
これらの場合は病気や感染症が疑われるため、早めに医療機関を受診してください。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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