家庭で役立つ中医学 尿トラブル編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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家庭で役立つ中医学
尿トラブル編

2023.10.17 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

頻尿や尿漏れといった尿トラブルは、多くの人が経験する身近なもの。特に年齢を重ねると起こりやすくなる症状ですが、デリケートな問題で相談しにくく、一人で悩んでいる人も多いのではないでしょうか。尿トラブルは、原因を見極めて体質を整えることで緩和が期待できます。症状がつらい場合はまず病院を受診し、合わせて体質を整ええることで、根本から不快な症状を改善していきましょう。

尿の問題はどうして起こる?

尿は腎臓の働きによってつくられます。腎臓は握りこぶしほどの小さな臓器ですが、1日に約150リットル(大型のドラム缶1本分相当)もの血液をろ過し、不要な水分や老廃物を尿として排出します。腎臓でろ過された尿は膀胱に溜められ、いっぱいになると脳の指令膀胱を収縮。尿を止めている尿道括約筋を緩めて、排泄をします。この過程のどこかに不調が起こると、尿トラブルが起こるようになります。例えば、加齢などで尿道括約筋が緩むと、意思に反して尿が漏れてしまうように。また、閉経後のホルモン変化などが原因で、脳の指令がうまく機能しない、尿量がコントロールできない、といったこともあります。こうしたさまざまな不調が要因となって、頻尿、夜間頻尿、尿漏れといった不調が起こるようになるのです。一方、尿トラブルには前立腺肥大、膀胱結石といった病気が隠れていることも少なくありません。気になる症状がある人は一度病院を受診してみましょう。

加齢による「腎」の衰えが要因に

中医学では、尿トラブルは五臓の「腎」と深く関わっていると考えます。腎は水分代謝や排尿、ホルモン調節などの働きを担う臓器。そのため、加齢とともに腎の働きが衰えると、頻尿や尿漏れなどが起こりやすくなるのです。また、精神不安、体内に「湿熱」が溜まった体質なども、過活動膀胱や膀胱炎といった不調の要因となります。

〜尿の観察で体質チェック〜
中医学では、尿の色やにおいなどを観察することで、体に熱があるか、冷えているかなどの体質を判断します。尿は大切な健康バロメーターの一つ。毎日のチェックを習慣にしてみましょう。

 

[健康な人の尿]
色:透明無色か淡黄色
におい:あまりにおわない
量:1000~2000ml/日
回数:日中3~5回、夜間0~1回程度

 

[不調がある人の尿]
●熱がこもっている
色:濃い、濁っている
量:少ない
におい:強い
回数:少ない、または多い
→尿漏れや頻尿がある人は「腎の潤い不足」タイプ参照
●冷えている
色:透明無色
量:多い
におい:におわないか、少しにおう程度
回数:多い(頻尿)
→尿漏れや頻尿がある人は「腎の陽気不足」タイプ参照
● 膀胱炎、尿路結石の可能性がある ※早めに受診を
色:赤い(血尿)、濁っている
回数:多い(頻尿)
その他症状:排尿時の痛み・不快感、尿道の熱感
→膀胱炎「湿熱」タイプ参照
●尿路のがんの可能性がある ※早急に受診を
血尿はあるが、排尿時の痛みはない

症状別・尿トラブル対策

尿のトラブルは不快でとても気になるもの。症状によっては外出もしにくくなり、気
持ちが塞ぎがちになってしまうこともあります。毎日を気持ちよく過ごすためにも体
質をしっかり整えて、気になる尿トラブルを改善していきましょう。

 

■ 頻尿・夜間頻尿・尿漏れ
「腎の陽気不足」タイプ
腎の「陽気(体を温めるエネルギー)」が足りず、体が冷えて尿量や回数が多くなっ
ているタイプ。体を温め、しっかり栄養を取って、不足しがちな陽気を養いましょ
う。冷たい飲食はく避けて。
【 気になる症状 】
尿の色が無色透明、尿量が多い、冷えると頻尿が悪化、手足の冷え、腰痛、足腰がだ
るい、むくみ、耳鳴り、舌が腫れぼったい、舌苔が白い
【 おすすめ食材 】
山芋、しょうが、ねぎ、玉ねぎ、にら、しいたけ、白菜、そらまめ、えび、くるみ、
シナモン、紅茶、杜仲茶 など
〜おすすめメニュー〜
・えびとにらの炒めもの、くるみ添え

 

「腎の潤い不足」タイプ
「腎陰(潤い)」が不足しているタイプ。尿量が少なくなり、熱をうまく冷ませずほ
てりなどの症状が現れます。腎陰を養う食材を積極的に取り、体にこもった過剰な熱
を冷ましましょう。
【 気になる症状 】
尿の色が濃く尿量が少ない、ほてり、腰痛、足腰がだるい、疲れ目、かすみ目、耳鳴
り、舌が紅い、舌苔が少ない
【 おすすめ食材 】
自然薯、トマト、青梗菜、れんこん、はまぐり、あわび、黒豆、牛乳、豆乳、ブルー
ベリー、枸杞の実、菊花 など
〜おすすめメニュー〜・黒豆、枸杞の実入り豆乳プリン

 

「心神不安」タイプ ※過活動膀胱に多い
精神が不安定で、不眠、憂うつ感などがあるタイプ。尿意切迫で何度もトイレに行き
たくなり、尿漏れを起こしてしまうことも。ハーブや柑橘類など、香りの効果で気持
ちをリラックスさせて。
【 気になる症状 】
頻尿、尿意切迫(ひどくなると尿漏れ)、憂うつ感、不安感、神経質、睡眠障害、舌
先が紅い、舌苔が薄く白い
【 おすすめ食材 】
春菊、セロリ、大葉、苦瓜、金針祭、ゆり根、かき、柑橘類、ぶどう、ミント、ロー
ズ、ラベンダー、緑茶 など
〜おすすめメニュー〜
・オレンジピール入り緑茶
☆頻尿・尿漏れに効くツボ:陰陵泉(いんりょうせん)、三陰交(さんこういん)
※神経質になっている時は+神門(しんもん)

 

■ 膀胱炎
「湿熱」タイプ
過剰な熱と「湿(余分な水分や汚れ)」が溜まり、尿道の熱感や排尿時の痛み、尿の
濁りなどの症状が現れます。体の熱を冷まし、湿をすっきり取り除くことを心がけ
て。
【 気になる症状 】
尿意切迫、排尿時の痛み・不快感、残尿感、尿の色が濃く濁っている(血尿があるこ
とも)、舌の色が紅い、舌苔が黄色くベタつく
【 おすすめ食材 】
蕎麦、はと麦、とうもろこし、きゅうり、苦瓜、すいか、大根、海藻類、緑豆、緑
茶、どくだみ茶 など
〜おすすめメニュー〜
・春雨、きゅうり、海藻のサラダ
[ワンポイント]
女性は尿道が短く細菌が膀胱まで届きやすいため、膀胱炎にかかりやすいとされてい
ます。トイレの回数が少ない人は水分を十分取って尿の回数を増やし、細菌が留まら
ないようにしましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。