監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
雨が降ると、なんだか眠気が続いたり、頭が痛かったり…。そんな不調に悩まされている人は、「低気圧」が原因かもしれません。自然の影響は避けられないものですが、つらい症状はなるべく軽くしたいもの。日々のケアで身体を整え、ぐずついた雨の日もすっきり元気に過ごしましょう。
低気圧で眠気や頭痛を感じるのはなぜ?
気圧は空気による圧力で、人の体は常にその影響を受けています。気圧は日々変化しますが、体がそれに対応できていれば特に問題は起こりません。一方、天気が変わるタイミング、季節の変わり目などで気圧の変化にうまく対応できないと、心身にさまざまな不調が現れるようになります。
一般に、不調を感じやすいとされるのは「低気圧」のとき。気圧の変化は自律神経に影響するとされ、雨や台風などで気圧が大きく変動するタイミングでは、交感神経・副交感神経のバランスが崩れやすくなります。交感神経が優位になると、血管が収縮して緊張型頭痛などの要因に。反対に、副交感神経が優位になると、血圧や心拍が低下して体が休息モードになり、眠気やだるさを感じやすくなります。
「湿の停滞」「脾胃の虚弱」が低気圧不調の要因に
低気圧による不調は雨や台風の時期に多いことから、中医学では、体内に溜まった「湿」(過剰な水分)が大きな要因になると考えます。湿は水のように重く、体内の「陽気」の巡りを妨げることが特徴。そのため、雨の日などに「湿邪」の影響で体内に湿が溜まると、体の重だるさ、頭重、頭痛といった不調が起こりやすくなります。また、活動のエネルギーとなる陽気も滞りがちで、眠気や倦怠感なども感じやすくなるのです。
もう一つ、雨の時期に注意したいのが、湿気に弱い「脾胃」(胃腸)の機能低下です。脾胃は食べ物を消化・吸収し、その栄養素を全身に運ぶ働きを担っています。そのため、脾胃が弱くなると体や頭に十分な栄養が行き届かず、日中も眠気が続く、頭がぼーっとする、といった不調を感じるように。また、水分代謝も落ちるため、体内に湿が生じ、前述のような湿による不調も起こりやすくなります。
低気圧による眠気や頭痛は、こうした体の不調を改善することで緩和につながります。下記の症状に当てはまるものがあれば、しっかり体質を整えていきましょう。
〜低気圧不調の体質チェック〜
湿の停滞タイプ
□ 体が重だるい
□ 頭重、頭痛
□ 眠気
□ 倦怠感
□ 関節のこわばり、痛み
□ むくみ
□ 食欲不振
□ 軟便、下痢
□ 舌苔がベタつく
脾胃の虚弱タイプ
□ 疲労感、倦怠感
□ 眠気、食後の強い眠気
□ 食欲不振
□ 胃もたれ
□ お腹の張り
□ 便秘、下痢
□ 舌の色が淡い
※両タイプを併せ持つ人もいます。
低気圧を乗り切る! 体質ケアのおすすめ食養生
中医学には「天人合一(てんじんごういつ)」という言葉があります。これは、自然界と人は一体で、人は常に自然の影響を受けているということ。環境や気候の変化に順応していれば心身は健やかに保たれ、反対に、うまく順応できずにいると不調を生じやすくなります。
低気圧による眠気や頭痛も、気候の変化に順応しきれず起きている症状。不調を起こさないためにも日々のケアを心がけ、天気や気圧に左右されない健やか体質を目指しましょう。
● 湿が溜まっている人は…
「除湿利水」の食材
そば、とうもろこし、はと麦、しょうが、大根、きゅうり、冬瓜、へちま、さやいんげん、昆布、わかめ、あさり、春雨、もやし、小豆、緑豆、黒豆 など
〜おすすめ料理〜
・大根、きゅうり、もやしのサラダ
・冬瓜と昆布の煮物
・とうもろこしの髭茶
● 脾胃が弱っている人は…
「健脾益気」の食材
山芋、長芋、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、しいたけ、えのき、エリンギ、しめじ、鶏肉、牛肉、卵、すずき、たら、大豆、黒豆、りんご、栗、蓮の実、なつめ など
〜おすすめ料理〜
・鶏ささみ入り、かぼちゃときのこのサラダ
・長芋、とうもろこし、黒豆、しいたけの炊き込みご飯
・なつめ、黒豆茶
暮らしのケア
・胃腸にやさしい食生活を。飲み過ぎ食べ過ぎ、冷たい飲食(特に冷たい飲み物のがぶ飲み)は避け、バランスの良い温かい食事を心がけましょう。
・就寝、起床、食事などの時間は、なるべく“規則正しく”を意識して。自律神経のバランスを保つためには、生活リズムを整えることも大切です。
・心身に疲れが残らないよう、十分な休息、睡眠を。夜しっかり眠れば日中の眠気も軽減されるので、寝る前にお風呂に入るなど、質の良い睡眠を取るよう心がけましょう。
・適度な運動で汗をかき、体内に溜まった湿を発散させて。湿度の高いときこそ、積極的に体を動かす習慣をつけましょう。
・日々のストレスはこまめに発散を。ストレスが溜まり自律神経のバランスが崩れると、眠気や頭痛を感じやすくなります。
<低気圧対策のツボ>
● 湿を取り除く
陰陵泉(いんりょうせん):膝の内側にある骨(脛骨)の下にある窪み
● 脾胃を整える
足三里(あしさんり):膝の皿の下・外側の窪みから指4本分下
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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