家庭で役立つ中医学 頭痛、めまい、動悸編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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家庭で役立つ中医学
頭痛、めまい、動悸編

2023.09.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

頭痛、めまい、動悸は、多くの人が感じる身近な不調。中でも頭痛はよく見られる症状で、慢性的な頭痛に悩まされる人は日本に約4000万人いるとも推定されています。頭痛やめまいが慢性化していると「いつものこと……」とあきらめがちですが、症状がひどくなると仕事や生活に支障をきたしてしまうことも。この機会に体質をしっかり整えて、つらい症状を改善しましょう。

不調を整え、“頭痛体質”の改善を

いわゆる“頭痛持ち”と言われる症状は、主に「緊張型頭痛」「偏頭痛」「群発頭痛」の3つ。もっとも多いのはしめつけるような痛みの緊張型頭痛で、肩や首の筋肉の張りが主な要因とされています。偏頭痛はズキズキとした痛みで、脳の血管の拡張などが原因に。群発頭痛は脳の視床下部に関わるとされ、目の奥あたりに痛みを感じます。いずれの頭痛も身体的、精神的なストレスが原因と考えられていますが、そのメカニズムはまだはっきりと解明されていません。治療も、西洋医学では鎮痛剤で痛みを抑える一時的な対処が基本となります。
中医学では、慢性頭痛には体内の不調が関わっていて、“頭痛を起こしやすい体質”になっていると考えます。主な要因となるのは「気・血の停滞」「痰湿(余分な水分や汚れ)の停滞」「気・血の不足」。こうした体質を整えることで、慢性的な頭痛を根本から改善していきます。
また、頭痛と合わせて起こりやすい「めまい」や「動悸」の症状も、体内の不調が要因となって起こります。今回は、頭痛、めまい、動悸について体質別の対処法をご紹介するので、不調に悩まされている人はぜひ体質改善に取り組んでみてください。

[症状別対策]慢性頭痛

「気・血の停滞」タイプ
ズキンズキンする頭痛、針で刺されるようなチクチクする頭痛、首や肩の凝り、イライラ、PMS、お腹の張り、舌の色が暗い、などの症状が現れます。緊張やストレスで症状が悪化しやすいので、気持ちをリラックスさせて気の巡りをスムーズに保つよう心がけましょう。
【 おすすめ食材 】
セロリ、春菊、しょうが、玉ねぎ、青魚、いか、たこ、柑橘類、黒きくらげ、ミント、玫瑰花 など
〜おすすめメニュー〜
・セロリ、玉ねぎ、黒きくらげ、いかの炒めもの
「湿の停滞」タイプ
頭が重くて痛い、低気圧や雨の日に頭痛を発症しやすい、体が重だるい、むくみやすい、舌苔が厚くベタつく、などの症状が現れます。水分代謝が落ちているので、食生活を整えて「脾胃(胃腸)」の働きを良くすることを心がけて。
【 おすすめ食材 】
粟、玄米、大根、かぶ、竹の子、海藻類、白菜、そらまめ、緑豆、どくだみ茶、杜仲茶 など
〜おすすめメニュー〜
・大根と海藻入りの春雨サラダ
「気・血の不足」タイプ
軽い頭痛、疲れると頭痛を発症しやすい、立ちくらみ、疲労感、冷え、肩凝り、食が細い、軟便・下痢または便秘気味、舌の色が淡い、などの症状が現れます。栄養バランス良い食事を心がけ、しっかり食べて気・血を養いましょう。
【 おすすめ食材 】
長芋、じゃがいも、大豆製品、きのこ類、ほうれん草、ひじき、卵、鶏肉、黒ごま、れんこん、棗 など
〜おすすめメニュー〜
・ほうれん草と卵の炒めもの

[症状別対策]めまい

「血不足」タイプ
めまい、立ちくらみ、貧血気味、顔色が白い、乾燥肌、冷え、月経量が少ない、舌の色が淡い、などの症状が現れます。日々の食事で栄養をしっかり取り、不足しがちな血を養いましょう。
【 おすすめ食材 】
レバー、まぐろ、ほうれん草、小松菜、にんじん、きのこ類、プルーン、レーズン、棗 など
〜おすすめメニュー〜
・長芋、にんじん、きのこ、骨付き鶏肉を煮込んだスープ
「湿の停滞」タイプ
ぐるぐるする回転性のめまい、めまいに伴う吐き気、体が重だるい、舌苔が厚くベタつく、などの症状が現れます。利水作用のある食材を積極的に取り、体内の湿をすっきり取り除きましょう。食べ過ぎ、飲み過ぎにも注意して。
【 おすすめ食材 】
はと麦、大根、白菜、冬瓜、いんげん、緑豆、しょうが、陳皮、どくだみ茶 など
〜おすすめメニュー〜
・春雨、白菜、黒きくらげの炒めもの
「肝の熱」タイプ
めまい、血圧が高め・不安定、頭が張って痛い、暑がり、口の苦み、イライラ、怒りっぽい、舌の色が赤い、などの症状が現れます。「気」のエネルギーが停滞して「肝」に熱がこもっているので、ストレスをこまめに発散して気をスムーズに巡らせるよう心がけて。
【 おすすめ食材 】
セロリ、春菊、苦瓜、しじみ、いか、たこ、ミント、菊花、はぶ茶、おおばこ茶 など
〜おすすめメニュー〜
・たこと苦瓜の炒めもの
「腎の虚弱」タイプ
めまい、足腰が弱い、物忘れ、耳鳴り、頻尿、冷え、などの症状が現れます。腎は加齢とともに自然と衰えるため、40代以降の人は積極的にケアするよう心がけましょう。
【 おすすめ食材 】
長芋、舞茸、にんじん、えび、かき、海藻類、黒豆、黒ごま、黒きくらげ、栗、くるみ など
〜おすすめメニュー〜
・栗、くるみ、黒ごま入りのお菓子

[症状別対策]動悸

「血不足」タイプ
疲れると動悸が起こりやすい、息切れ、倦怠感、めまい、立ちくらみ、睡眠が浅い、などの症状が現れます。日々の食事でバランス良く栄養を取り、血をしっかり養いましょう。
【 おすすめ食材 】
ほうれん草、にんじん、金針菜、レバー、牡蠣、ひじき、黒きくらげ、棗、竜眼肉、蓮の実 など
〜おすすめメニュー〜
・棗と蓮の実入りのお茶
「潤い不足の熱」タイプ
更年期に多く、のぼせ、ほてり、ホットフラッシュとともに動悸が起こりやすい、イライラ、憂うつ、不安感、夢が多く寝汗をかきやすい、などの症状が現れます。体の潤いを十分養い、過剰な熱を冷ましましょう。
【 おすすめ食材 】
トマト、れんこん、白菜、白きくらげ、はまぐり、かき、豆腐、豆乳、百合根、梨、ぶどう など
〜おすすめメニュー〜
・かきとれんこんのオイスターソース炒め
「気・血の停滞」タイプ
動悸に伴い胸痛がある、頭痛、肩こり、イライラ、憂うつ、不安感、不整脈、舌の色が暗い、などの症状が現れます。ストレスを溜め込まず、気持ちを穏やかに保って気・血の巡りを良くしましょう。
【 おすすめ食材 】
玉ねぎ、らっきょう、春菊、にら、黒きくらげ、青魚、柑橘類、紅花、サフラン、黒酢 など
〜おすすめメニュー〜
・紅花(サフランでもOK)と陳皮のお茶

生活習慣のポイント

・栄養バランスのよい食事を心がけて。食べ過ぎ飲み過ぎはNGです。
・生活リズムを整えましょう。睡眠不足や過労は不調を招く要因です。
・心のゆとりを保ち、ストレスを溜め込めない心がけを。
・適度な運動を習慣に。気血を巡らせ、ストレス発散にもつながります。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。