“こころ静かに、穏やかに”秋のメンタルケア - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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&RELAX中医美容

“こころ静かに、穏やかに”
秋のメンタルケア

2025.08.05 UPDATE

秋の公園を歩く女性

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.33

こんにちは。中医薬大学で修士号を取得し、中国で10年間精神科臨床医としての経験を積んだ楊紅娜です。
8月に入り、暑さの厳しい日が続きますね。とはいえ、この時期は立秋を迎え、暦の上ではそろそろ秋。爽やかな季節が待ち遠しくもありますが、陽気な夏から一転、秋はなんとなく気分が落ち込んだり憂うつになったりと、メンタルの不調を感じやすい時期でもあります。季節の変わり目を上手に乗り切るためにも、日々のケアで積極的にメンタルを整えていきましょう。

デスクワークをする笑顔の女性

こころも体も、秋は“内向き”を心がけて

中医学では、二十四節気の「立秋」から「霜降」の3か月を秋としています。秋は「容平」の季節といわれ、万物が成熟し、形が安定する時期。陰陽のバランスも変わり、春夏に活発だった「陽」が落ち着いて、「陰」が盛んになっていきます。
こうした変化に合わせ、秋は気持ちも行動も内向きにし、静かに過ごして「陽気」を体内に収めることが大切。古典の医学書『黄帝内経』でも、秋の養生について次のように説いています。
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秋の3か月を「容平」という。天気は急に変わり、地気は清粛(静かで落ち着いた様子)とする。早寝早起きし、鶏と同じように夜明けとともに起き、暗くなれば眠る。心を安らかに保ち、精神を落ち着かせ、意志を外に向けず、秋の粛殺(秋の厳しい天候が草木を枯らす様子)の影響を緩和し、肺気を清浄に保つ。これが秋に応じた養生の道である。これに逆らえば「肺」が傷つき、冬に下痢を起こしやすく、冬の閉蔵に適応する能力が低下する。
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青線部分がポイントで、まとめると以下の通り。
・心を安らかに保ち、精神を落ち着かせる。
・気持ちをあまり外に向けず、“内向き”を心がける。
・冷えや乾燥のダメージを和らげ、肺を健やかに保つ。
こうした心がけは冬の備えにもつながるので、ぜひ意識して過ごしてみてください。

 

★“自然との調和”については、Vol.27「“気持ちも明るく、軽やかに” 春のメンタルケア~基礎編~」で詳しく紹介しています。

陰陽の季節変化

季節養生の方針

悲しくなったり、落ち込んだり…。秋のメンタル不調

自然界では、秋は陽から陰に転じる季節。体内でも陽気が落ち着き、陰が優位になるため、気持ちも自然と静かに落ち着いていきます。こうした状態の中、秋になっても夏のように活発に過ごしていると、陽気を過剰に消耗してこころのエネルギーも不足した状態に。その結果、気分が落ち込んだり、なんとなく悲しくなったり、いわゆる“秋鬱”と呼ばれるメンタル不調を起こしやすくなるのです。

 

秋に起こりやすいメンタル不調は…
□ 気分が落ち込む
□ 寂しさを感じる
□ 訳もなく悲しい気持ちになる
□ ため息が多い
□ 趣味や活動への興味を失い、楽しめない など
繰り返しになりますが、こうしたメンタル不調を防ぐカギは、むやみに活動せず落ち着いて過ごすこと。新しいことにあれこれ挑戦してエネルギーを消耗するより、なにかにじっくり取り組み、深めていく。そんな内向きな過ごし方が、秋には合っているのです。

フラワーアレンジメントを楽しむ女性

食事、睡眠、服装。秋の上手な暮らし方

[ 基本 ]
気持ちも行動も、秋は5つのキーワードを意識して過ごしてみてください。
1.控えめ 2.内向的 3.安定 4.静か 5.穏やか

 

[ 食事 ]陽気を守り、潤いを養う
ポイントは体内の陽気を守ること。また、肺を乾燥から守るため、潤いを養う食材を摂ることも心がけて。
<陽気を守る>
●「酸味」の食材には、陽気が漏れ出るのを防ぐ収れん作用があるため、積極的に取り入れましょう。
おすすめ食材…山査子(サンザシ)、梅、キウイフルーツ、ラズベリー、レモン など
●「辛味」の食材は、陽気を発散させてしまうため、控えめに。
控えたい食材…しょうが、ねぎ、にんにく、らっきょう、唐辛子 など

<潤いを養う>
おすすめ食材…梨、ぶどう、大根、れんこん、豆乳、白きくらげ、はちみつ など

〜ワンポイント〜
秋冬は体を温める陽気を体内に収めているため、冷たいものを食べてもダメージが少なめ。なるほど、冬のアイスクリームをおいしく感じるのは、そのためかもしれません。

 

[ 睡眠 ]早寝早起きで夏より長めに
秋は少しずつ夜が長くなる季節。早寝早起きを心がけ、自然に合わせて夏よりも長く睡眠を取りましょう。
秋の睡眠の理想は…
就寝:22時/起床:6時(睡眠:8時間)

 

[ 服装 ]急な厚着は避けて
夏の間は体の表面に出ている陽気も、秋になって体が冷えると体内に収まっていきます。そのため、気温が少し下がったからと急に厚着になってしまうと、体が冷えを感じず陽気が収まりにくくなることも。徐々に寒さに慣れて陽気をしっかり収めるよう、服装は気温に合わせて少しずつ温かくしていきましょう。

 

[ 運動 ]ゆったり、やさしい運動を
中医学では、秋はあまり活発に動かず陽気を守る時期。“スポーツの秋”ともいわれますが、激しい運動は控え、やさしい有酸素運動で気持ちよく体を動かしましょう。ウォーキング、ヨガ、ピラティス、太極拳などがおすすめです。

リビングルームでヨガをする女性

秋を楽しく!イベントいろいろ

秋の中国にはイベントが盛りだくさん。家族や友人が集まって食事をしたりおしゃべりをしたり、みんなで楽しく過ごします。そんなひとときは、なんとなく落ち込みがちな秋の気分を明るく変えるきっかけに。中国ならではの風習も興味深いので、ぜひ楽しんでみてください。

 

<立秋: 8月7日(2025年)>
夏に痩せた分の肉を食べる「貼秋膘」という風習があり、立秋には餃子などの肉料理を食べます。“秋に脂身を貼る”とは、なんともわかりやすいですね!寒い冬を元気に乗り切るための習慣なので、この日ばかりはダイエットなど気にせず、おいしく楽しく食べてみてはいかがでしょうか。

 

<七夕(乞巧節):旧暦7月7日>
織姫と彦星の物語にちなんで、中国の七夕は“バレンタインデー”に。好きな人に想いを伝えたり、プレゼントを贈ったり、デートを楽しんだり……。そんな過ごし方をする人が多いのだそうです。大人になると短冊に願い込めることも少なくなるので、“好きな人と過ごす日”にしてみるとまた違った七夕を楽しめそうですね。

 

<中秋節:旧暦8月15日>

中秋の名月を鑑賞する日。丸い月には円卓を囲む団らんのイメージがあり、この日は遠方の家族も集まって再会を楽しみます。中秋節に欠かせない「月餅」は家族で切り分け、幸せを祈りながら食べるのだそうです。

 

<重陽節:旧暦9月9日>
一番大きな陽数(奇数)「9」が重なる日。9と「久」の発音が同じで“末永い”という意味があることから、中国では9月9日を「敬老の日」と定めました。菊酒を飲んだり、高い場所に登ったりといった古来の風習と合わせ、家族で長寿を祝う人となっています。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。