監修:楊 敏 先生(中医学講師)
よくわかる中医学vol.31
「痰湿」タイプに見られる主な症状
(1)体が重だるい
水や脂肪が溜まっている、痰湿の典型的な症状です。余分な水分を上手く排出できず、体が重く感じるようになります。
(2)水太り、むくみやすい
水分の摂りすぎなどによって、体に余分な水分や汚れが溜まっている状態です。汗や尿量が少なく、余分な水分が排出されないため、皮膚もぶよぶよしています。
(3)血中の悪玉コレステロールや中性脂肪、体脂肪率が高い
これらの数値が高いと、血流を妨げ三大疾病の原因となる恐れがあります。
中医学では、体内に溜まっていて外からは見えないどろどろの痰湿のことを「無形の痰湿」と言います。定期的な検診を受けて、大きな病気になる前に未然に防ぐことが大切です。
(4)めまいと吐き気・嘔吐が一緒に起こる
めまいには主に気血両虚によるものと痰湿によるものが考えられます。頭部への気血の通り道に痰湿が溜まり、めまいの症状とともに吐き気・嘔吐をもよおすことが多いのが特徴です。
(5)軟便・下痢しやすい
気虚タイプにも当てはまりますが、痰湿タイプの場合は食べ物の食べすぎによって胃の運化機能が落ちている状態です。胃が食べ物を気血に変えることができず、痰湿として溜まっていきます。この痰湿が腸に溜まってしまうことにより、軟便や下痢の症状を引き起こします。
(6)痰や鼻水が多い
痰湿が溜まっている典型的な症状です。同じ溜まっている状態でも、寒・熱タイプのどちらかによって痰の色や濃さが異なります。
・寒タイプ(痰湿):痰は白く、薄いよだれや鼻水が出やすい
・熱タイプ(湿熱):痰は黄色く、粘り気がある
(7)オイリー肌で、ニキビや吹き出物が化膿しやすい
体内の痰湿が皮膚から溢れている状態です。
・寒タイプ(痰湿):白く化膿があまりみられないニキビ・吹き出物、顔色も白く熱感がない
・熱タイプ(湿熱):化膿しやすいニキビ・吹き出物、顔色が赤く熱がこもっている
「痰湿」タイプに見られる舌の特徴
「痰湿」タイプの舌はむくんでいて、厚いベトベトした舌苔があることが特徴です。湿気が多いところに苔ができやすいように、体内に痰湿が多いと苔が溜まりやすくなります。
白い苔なら寒タイプ(痰湿)、黄色い苔なら熱タイプ(湿熱)と見分けることができます。
「痰湿」を引き起こしてしまう主な原因
(1)水分・甘いもの・油っぽいもの・冷たい飲食の摂りすぎ、お酒の飲みすぎ
「脾胃(ひい)」(胃腸)の運化機能が衰え、余分な水分や汚れが溜まりやすくなります。
運動量などによって摂るべき水分の量は人それぞれですが、普段あまり汗をかかない生活をしている人は水分の摂りすぎに注意しましょう。
(2)運動不足
運動不足などによって汗をかかない生活が続くと、体内に余分な水分が溜まってしまう原因に。暑さなどによる生理的な汗よりも、運動をしてかく自発的な汗の方が老廃物が出やすいです。
(3)夜遅く食事を多く摂る
どうしても夜遅い時間の食事になってしまう場合は、できるだけ腹八分目を心がけるようにして、あっさりとした食事を摂るようにしましょう。また、夜遅い食事を摂った後すぐに寝てしまうのも禁物です。
寝ながらお菓子を食べる生活は禁物!
「痰湿」タイプおすすめの食材
食物繊維が多い食材がおすすめです。
・玄米、雑穀米
玄米、はと麦、粟 など
胃が痛い・痛くなりやすい人は控えめにしたほうが良いでしょう。
・海藻類
昆布、わかめ、ひじき、のり など
中性脂肪・体脂肪率が高い人は特に、海藻サラダなどにして毎日の食卓に取り入れ、よく噛んで食べることを心がけると良いでしょう。
→夏に向けたむくみ解消ダイエットに「わかめのサラダ」
・根菜類
ごぼう、大根、かぶ、にんじん など
・青魚
いわし、さんま、さば、あじ など
・その他のおすすめ食材
こんにゃく、寒天、あさり、しじみ、小松菜、ピーマン、冬瓜、緑豆、春雨、バナナ、サンザシ など
→蒸し暑さが気になる時に「冬瓜のえびあん仕立て」
→湿気の多い夏に「春雨と鶏ひき肉のピリ辛炒め」
わかめのサラダ
「痰湿」タイプおすすめのツボ
(1)水分代謝を促す「水分(すいぶん)」
おへそから真上に親指の幅1本分上がったところ。
(2)胃腸トラブル、便秘、下痢を緩和する「大腸兪(だいちょうゆ)」
背骨と左右の骨盤を結んだ線の交わるところ。
(3)脚のむくみを緩和する「足三里(あしさんり)」
膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下。
体質チェックで「痰湿」タイプがあると診断された方は、日々の食事やマッサージで、体内の老廃物を排泄しやすいように養生を心がけましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。