肺気虚?肺陰虚?邪気の影響?乾燥シーズンを乗り切るタイプ別「肺」ケア - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

中医学の基礎

肺気虚?肺陰虚?邪気の影響?
乾燥シーズンを乗り切るタイプ別「肺」ケア

2026.10.20 UPDATE

のどの調子が悪い女性

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

こんにちは。中医学講師の楊敏です。
コンコンと空咳が出たり、息切れがしたり……。秋が深まると、こうした呼吸器系の症状が気になる人も多いのではないでしょうか。空気が乾燥する秋は「肺」がダメージを受けやすい時期。今回は、乾燥はもちろん、気の不足、邪気の侵入など、よくある肺トラブルのケア方法をご紹介します。肺の不調は疲労感や免疫力の低下といった全身症状にもつながるので、気になる症状があればしっかりケアしていきましょう。

呼吸だけじゃない!「肺」のさまざまな働き

「肺」の基本的な働きは「呼吸」です。一方、中医学では肺にはさまざまな役割があり、呼吸のほか、水分の供給・代謝、皮膚や粘膜の状態、体の防衛力などと関わっていると考えます。

 

〜中医学で考える「肺」の働き〜
[1]呼吸を担い、「気」の生成と関わる
肺は、呼吸を通して外界から「清気」(酸素)を取り込み、不要になった「濁気」(二酸化炭素)を排出します。取り込んだ清気は、生命活動を支える「気」(エネルギー)の生成に関わります。この働きが弱くなると、疲れやすい、息切れ、咳などの症状が現れるようになります。

[2]水分の供給・代謝に関わる
肺には「宣発(せんぱつ)」「粛降(しゅくこう)」という機能があります。宣発は、上方、外側へと散布する働き。肺に運ばれた水分は、この宣発機能によってのどや鼻、皮膚へ運ばれ、粘膜や皮膚を潤します。
一方、粛降は下方、内側へと運ぶ働きで、体内の余った水分を下へ降ろし、体外に排出されるよう調整します。この働きが乱れると、鼻水や痰、むくみなどが起こりやすくなります。

[3]体のバリア機能を守る
「衛気」(体の防衛力となる気)を体表に行き渡らせることも、肺の宣発機能の働きです。全身に張り巡らされた衛気はバリアの役割を果たし、外からの刺激や邪気(ウイルスなど)の侵入から体を守ります。この働きが弱くなると、かぜをひきやすくなったり、皮膚トラブルが起こりやすくなったりします。

“ひ弱”といわれるほど「肺」はデリケート

肺は、体の中で一番上にある臓腑。傘のようにほかの臓腑を覆っていることから、“華蓋(かがい)”とも称されます。一方、肺は鼻やのどを通じて外界と直接つながっているため、外からの刺激や邪気の侵入を受けやすいことも特徴。気候の変化やほこりなどの異物にデリケートに反応し、咳やくしゃみ、鼻水などの不調がすぐに現れるため、中医学では“嬌臓(きょうぞう:ひ弱で傷つきやすい臓腑)”とも呼ばれています。
肺の働きが弱くなると、体のバリア機能が落ちてかぜやインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる心配も。秋冬の乾燥シーズンは特に気をつけたいので、気になる症状があれば早めのケアで肺の働きを守りましょう。

〜タイプ別ケア〜 肺の「虚証」編

エネルギーが足りない「気虚」、潤い不足の「陰虚」は、肺の不調によくみられるタイプ。体質を整えることで改善につながるので、日頃からのケアを心がけましょう。

 

● エネルギーが足りない「肺気虚」タイプ
肺の「気」が不足して、働きが弱くなっているタイプ。バランスのよい食事でしっかり栄養を取り、体内の気を充実させましょう。

<気になる症状>
息切れ、咳、喘息、疲れやすい、少し動くと症状が悪化、痰、声が小さく張りがない、かぜを引きやすい、汗が出やすい、舌の色が淡い、舌苔が白い

<おすすめ食材>
長芋、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、きのこ類、鶏肉、牛肉、卵、大豆、銀杏 など

 

● 潤い不足の「肺陰虚」タイプ
肺の潤いが不足して、不調が起こりやすい状態に。症状は、空咳や口・のどの乾燥感などが特徴です。肺は乾燥に弱いため、日々の食事で潤いをしっかり養うよう心がけて。

<気になる症状>
空咳、痰は少ない、息切れ、口やのどの乾燥、しわがれ声、痩せる、午後に微熱が出やすい、ほてり、寝汗、便の乾燥、舌が紅く乾燥して裂け目がある

<おすすめ食材>
れんこん、きゅうり、トマト、梨、あんず、ぶどう、ゆず、牛乳、豆乳、豆腐、白きくらげ、クコの実、梅 など

〜タイプ別ケア〜「邪気の侵入」編

外気に直接触れる肺は、邪気の侵入を受けやすい臓腑。不調を感じたら早めのケアを心がけ、症状の悪化を防ぐことが大切です。

 

● 冷えのかぜ症状「風寒犯肺」タイプ
寒い季節に多くみられる、冷えタイプのかぜ症状。体をしっかり温めて冷えを取り除き、肺の機能を整えて症状を和らげましょう。

<気になる症状>
くしゃみ、薄い透明な鼻水、鼻づまり、咳、喘息、薄く白い痰、悪寒、発熱、頭痛、舌苔が白い

<おすすめ食材>
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、大葉、みょうが、ふきのとう、パクチー、エシャロット など

 

● 高熱やのどの痛み「風熱犯肺」タイプ
肺が熱邪に侵され、のどの痛み、咳、粘りのある痰などの症状が現れます。熱で体内の津液が消耗されるので、熱を冷ましながら潤いを補うことも心がけて。

<気になる症状>
咳、黄色く粘りのある痰、喘息、息が荒い、高熱、胸痛、咽の痛み、口の渇き、便秘、尿の色が濃い、舌が紅い、舌苔が黄色い

<おすすめ食材>
きゅうり、トマト、ごぼう、大根、すいか、へちま、ミント、枇杷葉茶、どくだみ茶 など

 

● 乾燥の季節に多い「燥邪犯肺」タイプ
空気の乾燥で肺の潤いが損なわれ、空咳、皮膚やのどの乾燥などが現れます。肺の潤いを補い、乾燥による咳などの症状を和らげましょう。

<気になる症状>
空咳、痰は少なく粘りがあって出しにくい、鼻の粘膜がヒリヒリ痛む、唇の皮むけ、のどの乾燥、口の渇き、舌が紅い、舌苔の乾燥

<おすすめ食材>
きゅうり、トマト、れんこん、梨、あんず、枇杷、柿、かりん、レモン、はちみつ、ごま、桑葉茶 など

 

● 痰の量が多い「痰湿阻肺」タイプ
肺に「痰湿」(余分な水分や汚れ)が停滞し、機能が低下して不調が起こるように。溜まった痰湿を取り除き、肺をすっきりさせて痰や咳の症状を抑えましょう。

<気になる症状>
痰は白色で量が多く出しやすい、息苦しい、咳、喘息、痰鳴音(ゼイゼイ、ゴロゴロ)がある、舌苔が白くベタつく

<おすすめ食材>
玄米、はと麦、しょうが、冬瓜、大根、昆布、緑豆もやし、春雨、みかん、金柑、陳皮 など

暮らしのケア

● 暴飲暴食は避け、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。刺激の強いものや喫煙は、のどの症状を悪化させるので気をつけて。

● 過労や睡眠不足は気を消耗し、肺気の不足につながります。きちんと休息を取り、日々の生活リズムを守りましょう。

● こまめな水分補給で体の乾燥を防ぎましょう。加湿器などを上手に使い、適度な湿度を保つことも大切です。

● 秋は急に冷え込むことも。季節の変わり目は温度変化に早めに対応し、かぜの予防を心がけましょう。秋冬は、首・胸元を温めることもポイントです。

● 適度な運動を習慣に。肺の呼吸機能が高まり、体力維持にもつながります。運動ができないときは、深呼吸をするのもおすすめ。

● ストレスは気の巡りを停滞させ、肺の機能にも影響します。日常のストレスはこまめに発散し、なるべく溜め込まないように。

 

<空咳には「梨」がおすすめ!>
梨は肺を潤す代表食材。秋の乾燥対策にぴったりなので、おやつの時間にぜひ取り入れてみて。
〜おすすめ梨メニュー〜
*梨と白きくらげのシロップ煮
*梨と杏仁の温かいコンポート
*梨と白ごまの蒸しケーキ
*梨の皮入り紅茶 ※皮と芯をティーバックなどに入れ、熱湯を注いで5分ほど蒸らせばOK

 

<咳対策におすすめのツボ>
● 尺沢(しゃくたく):肘を曲げた時にできるシワの上、親指側にある腱の外側
● 太淵(たいえん):手のひら側、手首の親指近くの窪み

ツボの位置

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。