〜カラダとココロの深い関係〜 五臓と五志 「肺」編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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〜カラダとココロの深い関係〜
五臓と五志 「肺」編

2024.03.05 UPDATE

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.16

体と心の関係を知る「五臓と五志」第3回目は、「肺」をテーマにお話します。肺は呼吸という生命活動の基礎を支え、免疫力とも深く関わる臓器。その分、不調があると体の健康状態にも影響が出やすくなります。肺は比較的、感情のダメージを受けにくいとされていますが、油断は禁物。心身の元気を保つためにも、感情を上手にコントロールすることが大切です。

「肺」は悲しみのダメージを受ける

体の基礎活動(呼吸)を担う「肺」は、精神面でも本能や感覚=「魄(はく)※」と深く関わっています。魄は精とセットで働き、“陽・動”を特徴とする神に対し、“静・陰”の性質でバランスを保っています。そのため、肺が健やかで魄がしっかり機能していれば、精神活動全体がバランスよく機能します。

 

一方、感情面(五志)では、肺は「悲しみ」を宿す臓器。悲しみが強ければ肺がダメージを受け、肺が弱いときは悲しい気持ちになりやすい、という特徴があります。ただし、大人は理性や思考が成熟しているため、“肺が弱いから精神トラブルが起こる”というケースはそれほど多くありません(肺に宿る魄・本能の影響が少ないため)。
気をつけたいのは、まだ本能的で体も未熟な子どもの時期。大人と比べて肺の機能も弱く、空気の乾燥などで肺がダメージを受けると、めそめそ泣きやすい、落ち込みやすい、といった精神トラブルを招きやすくなります。

 

いずれにしても、感情は体の状態に影響するもの。悲しみが大き過ぎて病気を招く、という物語が中国にはいくつも伝わるので、油断せず心身をケアしていきましょう。
※五つの精神活動である五神「魂・神・意・魄・志」の一つ

悲し過ぎて病を患う…。そんな二つのエピソード

“心身一如(心と体は一つ)”を表現するエピソードは中国に多々ありますが、次に紹介するのは大きな悲しみから病気を患ってしまう二つのお話。一つは“喜びは悲しみに勝つ”、というハッピーエンドを迎えますよ。

一つ目は、中国清代の小説『紅楼夢(曹雪芹 作)』から。
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物語のヒロイン・林黛玉は、美しく才知に富み、詩を愛するとても繊細な女性。彼女は、主人公である賈宝玉と相思相愛になるものの、上流階級の御曹司である彼はほかの女性と結婚することに。それを知った林黛玉は、深い悲しみに捉われてしまいます。その悲しみが癒えることはなく、ついには肺癆(肺結核)を患い、若くして亡くなってしまいます。
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という、こちらは悲しみのあまり重い肺病を患ってしまう悲恋のエピソード。全体としては上流階級に生きる男女の恋や人間模様を描いた名文学なので、興味のある人はぜひ読んでみてください。

もう一つは、中医学に多大な影響を残した金元四大家(元代の4人の名医)の一人、朱丹溪と患者とのエピソードです。
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ある若い男性が、結婚して間もない妻を病気で亡くしました。その悲しみから泣き暮らす日々を送っていた男性は、いつしか体調を崩してしまいます。その後、長らく医師の診察を受け続けたものの、回復することはありませんでした。最後の頼みの綱で、男性は名医と名高い朱丹溪に診てもらうことに。すると、病状を細かく診た朱丹溪は、まじめな顔で「妊娠していますね、おめでとう!」と伝え、妊娠を守る処方を渡します。この診断に、男性は大笑い。その後しばらくは、思い出すたびに自然と笑いがこみ上げてきたといいます。
さて、それから数ヶ月。気づけば食欲が増し、悲しみも癒え、不思議なことに長年の不調はすっかり治っていたそうです。
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深い悲しみは体の不調を招く要因となりますが、一方で、心から“笑う”“喜ぶ”ことは、体を自然と元気にしてくれるのですね。最近では笑いの効果が科学的にも証明されつつあるので、心身に不調がある時こそ、たくさん笑って過ごしたいものです。

「肺」のケアで悲しみに負けない体質に

肺は「気(エネルギー)」の生成と深く関わっているため、肺が弱いと心身ともに元気が失われがちになります。肺はとてもデリケートで、暑さや寒さ、汚れに弱く、特に乾燥のダメージを受けやすい臓器。感傷的な気分を引きずらないためにも、空気が乾燥する季節は特に意識して肺のケアを心がけましょう。

 

【肺が弱いときの症状】
[精神症状]
感傷的になりやすい、いつもより涙もろい、ため息が多い、落ち込みやすい
[身体症状]
疲れやすい、元気がない、声が小さい、咳が出やすい、のどや鼻の乾燥

 

【おすすめ食材】
潤いの多いもの、白いものを積極的に。
梨、ゆり根、山芋、れんこん、白ごま、白きくらげ、牛乳、豆乳、ヨーグルト、はちみつ など

 

【おすすめお茶】
麦冬杏仁茶(麦冬、杏仁、 生甘草のブレンド茶)

 

【肺に効くツボ】
肺兪(はいゆ):背骨と肩甲骨の間、真ん中あたり
中府(ちゅうふ):鎖骨の外端下のくぼみから指幅1本分下あたり

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。