監修:佐々木 絵理子(薬剤師)
「最近、抜け毛が増えた気がする……」
シャンプーの後、排水口にたまった髪を見て、不安になったことはありませんか。抜け毛は、男性・女性を問わず起こる、身近でありながら人には相談しにくい悩みの一つ。特に秋は、夏の疲れが残っていたり、空気の乾燥が始まったりと、髪や頭皮の変化が気になりやすい時期です。
今回は、中医学の視点から髪と体のつながりをひも解き、抜け毛につながりやすい5つのタイプと、それぞれに合った養生法を、薬剤師の佐々木がわかりやすくご紹介します。
秋になると、どうして抜け毛が気になるの?
髪には、新しい髪が育つ「成長期」、成長が止まる「退行期」、毛根が活動を休み、髪が抜け落ちる「休止期」があり、1本1本が異なるタイミングでこのサイクルを繰り返しながら生え替わっています。そのため、健康な方でも毎日ある程度の髪が抜けるのは自然なことです。
中医学では、髪の変化も体の内側を映すサインの一つと考えます。秋になって抜け毛が増えたように感じたら、髪の状態とあわせて、夏の間の食事や睡眠、疲れの状態を振り返ってみましょう。
夏は、暑さや発汗によって、生命活動を支えるエネルギー源の「気(き)」や、栄養と潤いを届ける「血(けつ)」を消耗しやすい季節です。また、暑さで食欲が落ちたり、冷たいものを摂りすぎたりすると、消化吸収を担う「脾胃(ひい)」が疲れてしまいます。中医学では、脾胃は食べ物から気や血をつくり出す大切な役割を担っており、脾胃が弱ると、髪を養うための気や血も不足しがちに。そこに睡眠不足や秋の乾燥が重なることで、髪のパサつきや抜け毛などが現れやすくなるのです。
健やかな髪を育てる鍵は「血」と「腎」
中医学には、「髪は血の余り」という言葉があります。これは、体内の「血」の充実度が髪に表れやすいということを意味します。中医学における血は、全身に栄養と潤いを届け、肌や爪、髪を健やかに保つ存在。体に十分な血があり、それがしっかり巡っていれば、髪は健やかに育つと考えます。反対に、血が不足すると、髪を十分に養いにくくなり、髪が細い、乾燥する、つやが低下する、抜け毛が気になるといった変化につながると考えます。
また、中医学では「髪は腎の華」とされ、成長や老化に関わる「腎(じん)」の状態が、髪の豊かさや丈夫さに表れると考えます。そのため、年齢とともに髪が細くなる、ハリやコシが減る、白髪が増えるといった変化にも、腎の状態が関わっていると捉えるのです。
抜け毛につながりやすい5つのタイプ
同じように見える抜け毛でも、その背景にある体の状態は一人ひとり異なります。ここからは、抜け毛につながりやすい5つのタイプと、それぞれに現れやすい症状をご紹介します。気になる項目を確認しながら、今の自分に合った養生法を見つけるヒントにしてみてください。
※複数のタイプに当てはまる場合は、それぞれの養生法を組み合わせて取り入れましょう。
[1]髪が細く乾燥しやすい「血虚タイプ」
気になる症状:髪の乾燥、つやの低下、顔色がすぐれない、立ちくらみ、爪が割れやすい
考えられる体の状態:髪に栄養と潤いを届ける血が不足している。女性では、月経による血の消耗も影響。
~おすすめ食材~
ほうれん草、小松菜、にんじん、なつめ、クコの実、かつお、まぐろ、黒ごま、黒豆 など
~生活のポイント~
血虚タイプは、食事と休養で血をコツコツ養うことが大切です。無理なダイエットや食事抜きを避け、肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく摂りましょう。また、中医学では、夜更かしや目の使いすぎは血の消耗につながると考えます。寝る前はスマートフォンを少し早めに手放し、目と体をゆっくり休ませましょう。
[2]髪のハリやコシが減ってきた「腎虚タイプ」
気になる症状:髪のボリューム低下、白髪、足腰がだるい、耳鳴り、物忘れが多い
考えられる体の状態:加齢や慢性的な疲労によって、成長や老化に関わる腎が弱っている。
~おすすめ食材~
黒ごま、黒豆、黒きくらげ、ひじき、山芋、くるみ、栗 など
~生活のポイント~
腎虚タイプの養生で大切なのは、頑張りすぎず、十分な休養をとること。中医学では、加齢に加えて、慢性的な過労や睡眠不足も「腎」の働きを弱らせる要因になると考えます。予定を詰め込みすぎず、疲れを感じた日は早めに休みましょう。
[3]食欲がなく、疲れやすい「脾胃気虚タイプ」
気になる症状:髪の細さやボリューム低下、食欲不振、胃もたれ、食後のお腹の張り、軟便、食後の眠気、疲れやすい
考えられる体の状態:消化吸収を担う脾胃が弱り、髪を養うための気と血を十分に作り出せていない。
~おすすめ食材~
お米、山芋、かぼちゃ、さつまいも、にんじん、キャベツ、しいたけ、鶏肉、大豆製品 など
~生活のポイント~
中医学では、脾胃が健やかであれば、食べたものから必要な栄養を受け取り、髪を養う気血を作ることができると考えます。このタイプは、たくさん食べるよりも、まずは胃腸が気持ちよく働ける食べ方を意識しましょう。冷たい飲み物や生もの、脂っこい料理を続けて摂ることは控え、温かく消化のよい食事を心がけて。
[4]ストレスが多く、肩や頭がこわばる「気滞・瘀血タイプ」
気になる症状:ストレスによる抜け毛、イライラ、ため息、寝つきが悪い、肩や首のこり
考えられる体の状態:ストレスなどによって気の流れが滞り、血の巡りにも影響している。
~おすすめ食材~
玉ねぎ、春菊、しそ、みょうが、柑橘類、にら、サンザシ など
~生活のポイント~
このタイプは、何かを補うだけでなく、気と血を「巡らせる」ことが大切です。ウォーキングやストレッチ、深呼吸、入浴など、心地よく体を動かす時間をつくりましょう。忙しいときは、肩をゆっくり回す、窓を開けて深呼吸をする、好きな香りのお茶を飲むといった小さなリフレッシュを。
[5]頭皮が脂っぽい「湿熱タイプ」
気になる症状:頭皮のべたつき、体の重だるさ、口の粘り、吹き出物
考えられる体の状態:余分な水分である「湿」と熱が体内にこもり、頭皮環境にも影響している。
~おすすめ食材~
きゅうり、冬瓜、セロリ、はと麦、緑豆、小豆、海藻類 など
~生活のポイント~
湿熱タイプは、体に余分な湿と熱をため込まない食生活を意識しましょう。揚げ物、脂の多い料理、甘いお菓子、アルコール、夜遅い時間の食事が続いている方は、まず回数を少し減らすところから始めてみてください。
髪をいたわることは、体をいたわること
髪は、今日の養生ですぐに変わるものではありません。それでも、毎日の食事や睡眠、休養を整えることは、髪を養う「血」や「腎」をいたわり、健やかな髪を育む土台になります。抜け毛を、「今の体はどんな状態かな?」と自分を見つめ直すきっかけにする。それが、髪だけでなく心も体も一緒にいたわる、中医学ならではのセルフケアです。
今日の自分にできる、小さな養生を一つ。未来の健やかな髪のために、無理なく続けてみてくださいね。
【注意事項】
本記事は、中医学・漢方の一般的な理論や養生法を紹介するものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。
抜け毛が急激に増えた場合、部分的に脱毛した場合、頭皮に炎症がある場合、または長期間改善が見られない場合は、自己判断せず、医療機関にご相談ください。
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この記事を監修された先生
薬剤師佐々木 絵理子
薬剤師。国際中医薬膳師。
富山医科薬科大学(現・富山大学)薬学部卒業。調剤薬局や大学病院で薬剤師として勤務する中で、養生の重要性を広く伝えたいという想いがうまれ、イスクラ中医薬研修塾に入塾。現在はイスクラ産業株式会社 中成薬事業本部広報課に所属し、中医学情報サイト「COCOKARA中医学」の運営やSNSを通じて、健康維持に役立つ養生法などを発信している。
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