監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
長かった夏も終わりを迎え、そろそろ季節は秋。厳しい暑さから解放され、少しずつ体もらくになる季節です。ところが、9〜10月はまだ夏の疲れが残り、湿度も高めで「脾胃」(胃腸)の不調が気になりやすい時期。放っておくと“秋バテ”などの不調も起こりやすくなるので、しっかりケアをして脾胃の元気を取り戻しましょう。
「脾胃」は生命力を養う土台
「脾胃」(胃腸)は「後天の本」と呼ばれ、中医学では、生まれた後に生命力を養っていく体の土台と位置づけられています。これは、脾胃が体に必要な栄養やエネルギーを生み出しているため。具体的には、飲食物を消化吸収し、気(エネルギー)・血・津液(潤い)を生成することで、生命活動の根本を支えています。
そのため、脾胃の働きが弱くなると他の臓腑にも影響し、疲れやすい、だるい、冷えやすいといった全身の不調が現れるように。精神的にも元気がなくなり、憂うつ、気分の落ち込みなどを感じやすくなります。
湿気と冷え。「脾胃」に残る夏のダメージに気をつけて
五行説で捉えると、脾胃の性質は「土」にあたります。土は生命を育みますが、水はけの悪い寒冷地の土壌では、植物はうまく育ちません。これは脾胃にとっても同じで、過度な湿気や冷えがあると、脾胃の働きを損なうように。そのため、湿気の多い夏に暑さで冷たいものを摂り過ぎると、脾胃が疲れて働きが低下してしまうのです。
こうした夏のダメージを秋まで引きずると、胃のつかえ、食欲不振、疲労感、倦怠感といった不調が続き、いわゆる“秋バテ”を招いてしまうことも。不調が長引くと秋冬になっても体力を十分に回復できず、かぜなどにかかりやすくなってしまう心配もあります。初秋の時期に胃腸の不調や疲れを感じたら、早めのケアで改善するよう心がけましょう。
食養生で疲れた「脾胃」を元気に!
夏から秋にかわる時期に気をつけたい脾胃の不調は、主に「脾胃気虚」と「湿の停滞」。これらの不調は互いに影響し合っているので、合わせて改善することが大切です。
「脾胃気虚」「湿の停滞」のケア
脾胃のエネルギー不足や「湿」(余分な水分や汚れ)の停滞によって、消化吸収の働きが落ちている状態。ケアの基本は、日々の食事でバランス良く栄養を摂り、気(エネルギー)をしっかり養うこと。また、溜まった湿を取り除き、脾胃をすっきりさせることも大切です。
<気になる症状>
胃のつかえ、口の中のネバつき、食欲不振、痩せ気味、疲労感、倦怠感、無力感、軟便・下痢、湿による体の重だるさ、手足のむくみ
<おすすめ食材>
気を養い、脾胃を元気にする:玄米、長芋、とうもろこし、キャベツ、鶏肉、うなぎ、すずき、はも、大豆、なつめ、蓮肉、はと麦 など
余分な水分を取り除く:冬瓜、きゅうり、とうもろこし、とうもろこしの髭、さやいんげん、そら豆、白菜、黒豆、大豆、緑豆、春雨、もやし、海藻類、蛤、鯉、しょうが など
〜おすすめ料理〜
*蓮肉、なつめ入りのお粥
*にんじん、きゅうりのぬか漬け(浅漬けでもOK)
*冬瓜、いんげん、鶏肉の炒めもの
*黒豆茶
[食事のワンポイント]
気温・湿度が高く脾胃が疲れがちな時期は、食中毒にも注意が必要です。手洗いや食品の十分な加熱、適切な保存を心がけましょう。しょうが、しそ、みょうが、梅干し、わさび、酢などを料理に取り入れるのもおすすめです。
〜四季の「土用」は胃腸ケアを習慣に〜
「土用の丑の日には、うなぎを食べる」。そんな夏バテ予防の習慣はおなじみですが、実は「土用」は夏だけのものではありません。四季それぞれにあり、暦の上では立春・立夏・立秋・立冬の前の約18日間が土用の期間とされています。
土用は季節の変わり目にあたり、体調を崩すことも多いタイミング。そのため、しっかり食べて体力を保つためにも、この時期は古くから胃腸をいたわることを大切にしてきました。中医学から見ても、土用は五行の「土」にあたり、「脾胃」が影響を受けやすい時期。そのため、季節の養生として、土用の時期は脾胃を養うことを大切にしています。
季節の変わり目は、気温や環境の変化によるストレスで、気づかぬうちに脾胃が疲れてしまうことも。一番気をつけたいのは夏(立秋前)の土用ですが、ぜひ四季それぞれの土用も意識してみてください。2026〜2027年の土用は以下の通り。「土用は脾胃をケアする季節」と覚えて、この時期は日々の食事や過ごし方を見直してみましょう。
[2026年の土用]
秋土用:10月20日~11月6日
[2027年の土用]
冬土用:1月17日~2月3日
春土用:4月17日~5月5日
夏土用:7月20日~8月7日
秋土用:10月21日~11月7日
暮らしのケア
● 胃腸に負担をかけない心がけを。暴飲暴食はもちろんNG。冷たい飲食、脂っこいもの、塩分、水分の摂り過ぎにも気をつけて。
● 朝は“温かいもの”をお腹に入れる習慣を。脾胃を温めることで、消化吸収機能が高まります。
● 過労や睡眠不足は「気」の消耗につながります。生活リズムを整え、しっかり休息を取るよう心がけましょう。
● 適度な運動を習慣に。発汗が促され、気血の巡りもよくなり、余分な水分(湿)の発散につながります。
● 精神トラブルは脾胃の大きなダメージに。日々のストレスはこまめに発散し、気持ちを穏やかに保つよう心がけましょう。
<脾胃のケアにおすすめのツボ>
~食欲不振、軟便・下痢、倦怠感などに~
● 足三里(あしさんり):膝の皿の下、外側の窪みから指4本分下
● 中脘(ちゅうかん):みぞおちとおへそを結んだ線の中間
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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