監修:和田 暁 先生(一般社団法人薬膳アカデミア理事長)
【難易度★☆☆】
えのきは、気血を補い、体力の維持や知力の発達をサポートします

えのき 平性・涼性/甘味・鹹味 疲労・消化不良・乾燥した便の解消 など
えのきは中国では「金針菇」と称され、これは、金針菜の花のつぼみに形が似ていることから名付けられたとされています。栽培の歴史は古く、中医学においては、脾、大腸、肝の経絡に働きかけ、胃腸を養う、肝を補う、便通を促すなどの目的で利用されてきました。ビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富で、「益智菇」(記憶力を高めるきのこ)とも呼ばれ、小児の発育や記憶力の向上にも役立ちます。気血が不足している方、栄養が低下している方、小児の成長期や高齢者にとって、理想的な食材といえるでしょう。加熱によって出る「ぬめり成分」はムコ多糖類で、腸内の善玉菌のエサとなり、消化不良や便秘の解消、さらに乾燥による肌荒れや美肌サポートも期待できます。ただし、胃腸が冷えやすい方、慢性的な下痢や冷え性の方は、摂取を控えるか量を調整することが望ましいでしょう。
えのきの蒸し焼き ねぎ油がけ
レシピ

こんにちは。一般社団法人薬膳アカデミア理事長の和田暁です。
二十四節気の寒露を迎えたこの時期は、夏の蒸し暑さから解放され、爽やかな風を感じられるようになります。読書や芸術鑑賞、グルメ、行楽などの秋である一方、昼夜の寒暖差が大きく、空気は乾燥して冷たくなりがちです。さらに、夏の疲れが出やすく、体力の低下や、風邪・咳といった体調不良に悩む方も増えてきます。そんなときにおすすめなのが、栄養豊富で低カロリー、気力を補い体を潤す「えのき」です。
滋養と潤いをもたらすクコの実、さらにオクラや海苔を加えることで、えのきの潤す力をより引き立てることができます。また、加熱によってβカロテンの吸収率が高まるにんじんも、脾を健やかにし気を補う「健脾補気」として、消化不良や体力低下、目の乾燥対策に役立つとされています。そこに、温性で香りの良いねぎやしょうがをプラスすることで、かぜ予防にも一役買ってくれるでしょう。調理法は、えのきの潤す力を最大限に引き出す「蒸し焼き」で、「こんがり焼く」調理法よりも乾燥を抑えられます。ぜひ、この季節にぴったりの一品を作ってみてください。
調理時間15分
材料
【2人分】
えのき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200g
にんじん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4cm(1/3本)
昆布だし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200ml
海苔・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全形の1/2
オクラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3本
塩昆布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
クコの実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ1
ねぎ油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ1
塩麹・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少々
しょうが(みじん切り)・・・・・小さじ1
豆苗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少々
作り方
- 1えのきの根元を切り落とし、6等分に分ける。にんじんは細切りにし、えのきと一緒に束ねて、根元をラップで巻く。(料理のポイント参照)
- 2①を昆布だしで約5分ゆでる。ゆでた後、ラップを外し、根元に海苔を巻く。
- 3オクラは塩もみしてから、さっと湯通しし、輪切りにする。塩昆布は1cm幅に切る。クコの実はさっと湯通ししておく。
- 4②と③を器に盛り付ける。
- 5フライパンにねぎ油、塩麹、しょうがを入れて熱し、香りが立つまで加熱する。
- 6⑤を④にかけ、仕上げに豆苗を散らす。
料理のポイント
-
point!
工程①で、えのきとにんじんは、画像のようにラップで巻いてください。
- point! ねぎ油がない場合は、熱したごま油大さじ1に、ねぎのみじん切り1/3本分と塩少々を混ぜたもので代用できます。
- point! 豆苗は、カイワレ大根で代用できます。
この記事を監修された先生

一般社団法人薬膳アカデミア理事長和田 暁 先生
和田 暁(わだ しゃお)
上海中医薬大学中医学部卒、同大学付属病院勤務。昭和大学研修中、日本医食同源第一提唱者の新居裕久教授と出会い、中医学を毎日の食卓へ届けることを目指し、薬膳普及の道へ進む。
2015年、世界中医薬学会連合会より世界初の高級中医薬膳伝授師称号を授与。現在、一般社団法人薬膳アカデミア理事長・世界中医薬学会連合会常務理事、日本国際中医薬膳管理師会会長、上海中医薬大学日本校教授、東京栄養士薬膳研究会顧問。
主な著書に『薬膳で治す』(時事書房・共著)『まいにち養生ごはん』(学陽書房・監修)『中医婦人科学』(上海科技出版社・共著)雑誌『助産雑誌』連載執筆など。