監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.31
こんにちは。中医薬大学で修士号を取得し、中国で10年間精神科臨床医としての経験を積んだ楊紅娜です。
今回お話するのは、梅雨から夏に気をつけたい「陰虚(いんきょ)」と「湿熱(しつねつ)」の体質について。厳しい暑さと湿気で体内のバランスが崩れると、体調不良はもちろん、メンタルの不調も起こりやすくなります。不眠などが続くとこころの元気もさらになくなってしまうので、夏を気持ちよく過ごせるよう、今からしっかり体質をケアしましょう。

過剰な“暑さ”と“湿気”が心身のダメージに
高温多湿の梅雨から夏は、「暑邪(しょじゃ)」「湿邪(しつじゃ)」の影響を受けやすい時期。暑邪と湿邪は、文字通り暑さと湿気によるダメージで、もともと体内に過剰な熱や湿気がたまりやすい「湿熱」体質の人は、これらの影響を受けやすく、胃もたれや皮膚の化膿・炎症、不眠など、心身のさまざまな不調がより現れやすくなります。
また、体内の潤いが不足しがちな「陰虚」体質の人は、もともと水分が足りず熱をうまく冷ますことができないため、暑さで多量の汗をかくと、体の乾燥症状に加えて、のぼせやほてりといった熱による不調がさらに悪化しやすくなります。
こうした陰虚・湿熱の体質の人は、イライラ、怒りっぽい、不安感、焦燥感といったメンタルの不調も招きやすいので要注意。夏はただでさえ蒸し暑く、イライラと不機嫌になりがちです。気持ちを健やかに保つためにも、日々のケアで積極的に体質を整えていきましょう。
あなたは大丈夫? 「陰虚」「湿熱」体質チェック
熱や湿が過剰になったり、潤いが不足したり。体内のバランスが崩れると心身にさまざまな不調が現れます。これからどんどん気温が上がり、湿気も多くなる季節。陰虚・湿熱の体質になっていないか、症状からこまめにチェックしてみてください。
<「陰虚」タイプの症状>
□ イライラしやすい、怒りっぽい
□ ほてり、のぼせ
□ 寝つきが悪い
□ 乾燥肌、シワができやすい
□ 目、鼻、口の乾燥
□ のどが渇く
□ 便秘気味
□ 尿の色が濃く、量が少ない
□ 生理周期が短い
□ 食事の量が多くても、瘦せている
□ 舌が薄く細い。舌の色が紅い。舌が乾燥して舌苔が少ない
<「湿熱」タイプの症状>
□ 怒りっぽい
□ 不安感、焦燥感
□ 不眠
□ オイリー肌、ニキビができやすい
□ 皮膚の化膿、炎症(アトピー性皮膚炎など)
□ 体臭・口臭が強い
□ 口の中の苦味
□ 胃もたれ、食欲不振
□ 粘りのある便、残便感
□ 尿の色が濃く臭いが強い
□ おりものが黄色く臭いが強い

「陰虚」タイプの体質ケア 〜潤いを養い、守る〜
<こんな人は注意! 陰虚の主な要因>
先天的要因
・両親が陰虚体質
・妊娠中(母親)の、熱性の食べ物の摂り過ぎ
後天的要因
・長期間の過度なストレス
・女性の更年期
・男性の過度な性行為
・辛いもの、揚げもの、焼きものなどの食べ過ぎ
・熱性疾患(発熱など)
[ 食養生 ]潤いアップ食材を積極的に
〜おすすめの飲食物〜
果物:すいか、メロン、りんご、いちご、バナナ、梨、プラム、柿、マルベリー
野菜:れんこん、きゅうり、冬瓜、苦瓜、海藻類、クコの実、白きくらげ
肉類:豚肉、鴨肉、かに、貝類
お茶:緑茶、白茶
☆おすすめ:白きくらげと蓮の実のデザート
〜控えたい飲食物〜
果物:ライチ、さくらんぼ、栗、なつめ
野菜:ねぎ、玉ねぎ、しょうが、にんにく、にら、唐辛子、山椒、シナモン
肉類:鶏肉、羊肉、えび
お茶:紅茶、プーアル茶
☆辛いもの、揚げもの、焼きものも控えめに
[ 運動 ]関節に負担のかからない運動を
陰虚体質の人は、潤い不足で関節のトラブルを招きやすくなります。運動をすると特に膝関節に負担がかかりやすいので、スイミング、ウォーキング、ピラティスなど、やさしい運動がおすすめ。また、気温が高い時間帯や環境を避け、汗をかき過ぎないように。運動中はこまめに水分を補給して、体の潤いを守りましょう。
[ 暮らしのポイント ]
〜睡眠〜
・睡眠は潤いを養う時間。夜更かしはせず、十分睡眠を取りましょう。
・体がほてりやすいので、寝つきをよくするためにも室内を涼しく。
〜避けたいこと〜
・喫煙、過度なアルコールの摂取は控えましょう。
・サウナは過剰な発汗につながります。“ととのう”習慣として人気ですが、陰虚の人は避けて。
・汗をかき過ぎないよう、長風呂に気をつけて。
〜陰虚におすすめのツボ〜
・三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本分上の骨の後ろ
・太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間の窪み

「湿熱」タイプの体質ケア 〜こころと体をスッキリさせる〜
<こんな人は注意! 湿熱の主な要因>
先天的要因
・両親が湿熱体質
・妊娠中(母親)の、喫煙、飲酒、脂っこい食事
後天的要因
・高温多湿の環境
・喫煙、過度な飲酒
・甘いもの、脂っこいものの摂り過ぎ
・過剰な栄養(補い過ぎ)
[ 食養生 ]熱を冷まし、余分な水分を取り除く食材を
〜おすすめの飲食物〜
果物:すいか、メロン、キウイフルーツ、オレンジ、梨、いちご
野菜:きゅうり、冬瓜、大根、れんこん、たけのこ、小豆、苦瓜、緑豆、セロリ、海藻類、スベリヒユ
お茶:はと麦茶、どくだみ茶
☆おすすめ:はと麦のお粥
〜控えたい飲食物〜
辛いもの、甘いもの、揚げもの、焼きもの、脂っこいもの など
☆料理は“あっさりうす味”を意識して
[ 運動 ]しっかり汗をかいて
溜まった湿を取り除くためにも、しっかり発汗することを意識して。ただし、夏の日中に外で激しい運動をすることは避けて。涼しい環境で、体力に合わせて気持ちよく体を動かしましょう。
[ 暮らしのポイント ]
〜睡眠〜
・不眠を招きやすいので、なるべく眠りやすい環境づくりを。クーラー、除湿機などを上手に使って、過ごしやすい気温・湿度を保ちましょう。
・睡眠不足に気をつけて。体質を整えるためにもしっかり睡眠を取りましょう。
〜避けたいこと〜
・喫煙、過度なアルコールの摂取は控えましょう。
・湿熱体質は“過剰”な状態。さらに補う滋養強壮剤はなるべく摂らないように。
・サウナや長風呂はNG。体内に熱がこもる要因になります。
〜湿熱におすすめのツボ〜
・合谷(ごうこく):手の甲、人差し指と親指の骨が合流するところ
・内庭(ないてい):足の甲、第2指と第3指の間のみずかきの根本
・太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が交わるところの窪み

「陰虚」「湿熱」体質のメンタルケア
夏になると、他の体質の人に比べてメンタル不調をきたしやすい「陰虚」や「湿熱」体質の人にとっては、メンタルケア(情志養生)がより重要になります。これらの体質は、不安、不眠、怒りといった情緒的な不調が現れやすいため、「清静無為」の方針に基づき、心を静める訓練(瞑想など)を取り入れることがおすすめです。
情志養生については、Vol.25「健やかメンタルの秘訣は中医学の教えにあり!」で詳しく紹介しています。
この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。