よくわかる中医学vol.30-潤い不足の「陰虚」タイプ- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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よくわかる中医学vol.30
-潤い不足の「陰虚」タイプ-

2019.11.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.30

体質ごとの特徴と養生法を伝えるシリーズ、今回は潤い不足の「陰虚(いんきょ)」タイプです。
体に必要な潤いが不足すると、体内の熱を冷ますことができなくなり、微熱や乾燥といった症状があらわれやすくなります。潤いは加齢とともに不足していきますが、睡眠不足や慢性病が原因となることもあるので注意が必要です。
まずは体質チェックをして、陰虚タイプが強い人は養生を心がけましょう。

「陰虚」タイプに見られる主な症状

(1)のぼせ・ほてりを感じる
潤いが不足して熱を冷ますことができず、体に熱がこもって熱くなっている状態です。これを「陰虚内熱(いんきょないねつ)」「陰虚火旺(いんきょかおう)」といい、陰虚の典型的な症状の一つです。
陰虚の人は細身であることが多いとされています。同じのぼせ・ほてりでも、ストレスによる気のうっ滞が原因の場合もあり、陰虚の特徴やその他の症状から判別して考えます。
また、更年期障害の症状であるホットフラッシュは、加齢により、体の潤いを蓄える腎の機能が衰えている「腎陰虚(じんいんきょ)」の状態です。上半身がのぼせ、突発的な汗が出ます。

(2)夕方以後に微熱が出やすい、頬に赤みが出る
夕方から夜にかけて、中医学では陰の時間とされています。「陰虚内熱」の状態にあると陰の時間に熱を冷ますことができず、37度くらいの微熱が出たり、熱が体の上に上って頬に赤みが出やすくなります。

(3)から咳が続く、痰があまり出ない
乾燥している季節や環境にいると、から咳がでやすい人は、肺に潤いが足りず呼吸の機能が弱まっている「肺陰虚」の状態です。慢性的に続く場合、肺だけでなく腎も陰虚の状態に進行してしまっている可能性があります(肺腎陰虚)。

(4)寝汗をよくかく
寝ているときに汗をかき、目が覚めると汗が止まる症状(盗汗(とうかん))です。陰の時間に「陰虚火旺」の状態にあると汗を収れんできず、滲むような汗をかいてしまいます。昼間に暑くなくても汗をかく場合(自汗(じかん))は「気虚」と関係があり、自汗・盗汗どちらも症状がある人は「気陰両虚(きいんりょうきょ)」と考えられます。

(5)口・喉・目が乾きやすい
ドライマウス・ドライアイの人は陰虚により粘膜を潤わす力が不足した状態です。口や喉が渇きやすいため、冷たいものを食べたり飲みたくなるという特徴もあります。特に、乾燥の季節や暖房の使いすぎによって症状があらわれやすいので注意しましょう。

(6)肌がカサカサしていて白い粉をふく(落屑(らくせつ))
陰虚または陰血不足により肌に潤いと栄養が行き届かず、乾燥肌を起こしている状態です。

(7)便がコロコロしていて硬くて出にくい
体内の水分と「津液(しんえき)」(血液以外の水分、汗、涙、リンパなどの体液)の不足によって、乾燥便、コロコロ便になってしまう状態です。排便の不調は繰り返しやすいです。すぐ薬に頼るのではなく、食事習慣とライフスタイルの見直しを行うようにしましょう。

「陰虚」タイプに見られる舌の特徴

陰虚タイプの舌は、雨が降らず干ばつになった地面のように、ひび割れ、苔も生えないのが特徴です。

裂紋舌(れつもんぜつ):潤いが足りず、乾燥して裂け目が見えている状態
・少苔(しょうたい)または無苔(むたい):潤いが足りず、舌の苔が少ない、またはない状態
紅舌(こうぜつ):陰虚により虚熱があり、舌が全体的に赤くなっている状態

「陰虚」を引き起こしてしまう主な原因

(1)潤す役割のある陰液を消耗してしまう急病や慢性疾患
(2)過労や夜型の生活習慣
夜は陰を増やす時間なので、この時間に休息をとっていないと体に十分な陰液を養えないと考えられています。早めの休息が大事です。
(3)刺激の強いものの摂りすぎ
唐辛子の強い料理、お酒、たばこ など
(4)生まれつきの虚弱体質
(5)加齢

 

「陰虚」タイプおすすめの食材

潤す作用のある白い食材がおすすめです。また、水を司る腎を養う黒い食材も摂り入れるといいでしょう。

・白い食材:豆乳、豆腐、百合根、れんこん、牛乳、杏仁、梨、松の実、白ごま、白きくらげ など
・黒い食材:すっぽん、あさり、しじみ、あわび、はまぐり、黒ごま、桑の実 など
舌が全体的に赤い人は体に熱を持っていると考えられるので、きゅうり・トマトなどの熱を冷ます作用のある夏野菜を積極的に摂り入れましょう。温性・熱性の食材は控えめに。

また、から咳の症状がある場合、特に梨、れんこん、銀杏、びわがおすすめです。
中医学には「酸甘化陰(さんかんかいん)」という言葉があり、甘酸っぱいもの(果物など)は潤いをもたらすと考えます。

【楊敏先生の特製美容スイーツ】
陰を補い、スローエイジングにおすすめな簡単レシピです。
黒炒りごま:松の実:くるみ=2:1:1の割合でミキサー(すり鉢)にかけ粉にします。少量の蜂蜜を加えて練り、瓶につめて冷蔵保存。朝か夜に1日大さじ1杯分食べてください。便秘の人にはヨーグルトに混ぜてもOKです。冷蔵で半年間保存できます。
これら3つの食材は、陰血を補うことで肌や髪を潤します。また、便通を助ける作用もあるので、中国では秋から冬にかけてよく食べられるスイーツです。中国のお店ではミキサーにかけて販売しているところもあります。

編集部のすり鉢で作ってみました。ごまの良い香り、はちみつの甘さとよく合っておいしいです!

「陰虚」タイプおすすめのツボ

血虚・瘀血タイプのページでも紹介した「三陰交」など、以下の3つのツボがおすすめです。

(1)腎陰を補う「湧泉(ゆうせん)」
足裏の中心より上の方、足指を曲げると「人」の字状の交点にできるくぼみ。
(2)肺を潤して咳を緩和する「尺沢(しゃくたく)」
軽く肘を曲げた内側にできる横じわの真ん中にある太い筋の親指側のみぞ。
(3)腎・肝・脾の陰を補う「三陰交(さんいんこう)」
内くるぶしの指4本分上の骨の後ろ。

体質チェックで「陰虚」タイプがあると診断された方は、日々の食事やマッサージで、潤いを補う養生を心がけましょう。

 

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。