監修:和田 暁 先生(一般社団法人薬膳アカデミア理事長)
【難易度★☆☆】 梨はのどにこもった粘り気のある痰を出し、潤いを与え、乾燥を和らげます。
梨 涼性/甘味、微酸味 のどの熱(炎症)や粘り気のある痰を出し、乾燥による咳、口渇、二日酔い など
梨の歴史は古く、中国のさまざまな古典書に効能が記されています。その一部をご紹介いたします。
●《千金·食治(せんきん・しょくち)》”除客熱気,止心煩(熱を取り除き、胸苦しさを止める)”
●《唐本草(とうほんぞう)》”梨削貼湯火瘡,不爛、止痛、易瘥。又主熱嗽,止渴(火傷に梨を剥いて貼れば、膿まず、痛まず、治りやすい。また、主に熱性の咳、のどの乾きを止める)”
●《食療本草(しょくりょうほんぞう》”胸中痞塞熱結者可多食好生梨(胸の塞がりや熱を感じる時は、生の梨を多く食すとよい)”
●《開宝本草(かいほうほんぞう)》”療傷寒熱発,驚邪,嗽,消渴,利大小便(寒熱が発する傷を癒やし、驚邪や咳、のどの乾き、大小便に利く)”
●《本草綱目(ほんぞうこうもく)》”潤肺凉心,消痰降火,解瘡毒、酒毒(肺を潤し心を冷ます、痰を消し火を降ろす、皮膚毒や二日酔いの解毒)”
現在の梨の効能は本草綱目の説を基準とし、肺熱と心熱を解消し、粘り気の強い痰、二日酔いに優れていると広く知られています。また、幅広い用途の中には、中風による失語症によいとも古典書には記されています。梨は古くから万能の果物として活用されていたことが伺えます。
白きくらげとなつめの梨蒸し
RECIPE
秋最後の節気「霜降(そうこう)」から立冬へ向かう頃は、呼吸器の粘膜が乾燥することで、免疫の低下を招きやすくなります。気温が低くなるからといって、寒さをしのぐために辛いものを食べ過ぎると肺に熱が籠もり、乾燥する原因に。その結果、乾燥による咳痰、粘り気の強い黄色い痰、便秘がおこりやすくなります。 今回は枸杞の実、白きくらげを加えることで、より早く乾燥を和らげるレシピに仕上げました。 梨は涼性ですので、胃腸が弱くて冷えやすい方や痰が薄く白っぽい方は控えましょう。胃腸虚弱の方は、なつめを一緒にいれることをおすすめします。 さあ、潤いと補気で冬入りの準備を始めましょう。
調理時間20分
材料
梨……………………2個
白きくらげ…………2g
なつめ………………4個(種なし)
枸杞の実……………小さじ1
蜂蜜…………………少々
水……………………大さじ2
COOKING
- 1白きくらげ、なつめをそれぞれ水でもどす。白きくらげが柔らかくなったら、石つきをとる。
- 2梨の皮を剥き、スプーンで中をくり抜く。
- 3②でくり抜いた梨は細かく刻む。
- 4くり抜いた梨に、②と水でもどした白きくらげ、なつめ、枸杞の実を入れる。
- 5水でといた蜂蜜を③にいれる。
- 6蒸し器で約12分蒸す。
料理のポイント
- point! なつめは、蒸す前に酢やレモンなどと軽く煮ると皮が柔らかくなり食べやすく なります。
- point! 梨の皮は、お湯と一緒に煮ます。そのお湯でウーロン茶をいれるととっても美味しいフレーバーティーになります。
- point! くり抜いた梨が多い場合は、すりおろしてドレッシングを作ると便利です。
この記事を監修された先生
一般社団法人薬膳アカデミア理事長和田 暁 先生
和田 暁(わだ しゃお)
上海中医薬大学中医学部卒、同大学付属病院勤務。昭和大学研修中、日本医食同源第一提唱者の新居裕久教授と出会い、中医学を毎日の食卓へ届けることを目指し、薬膳普及の道へ進む。
2015年、世界中医薬学会連合会より世界初の高級中医薬膳伝授師称号を授与。現在、一般社団法人薬膳アカデミア理事長・世界中医薬学会連合会常務理事、日本国際中医薬膳管理師会会長、上海中医薬大学日本校教授、東京栄養士薬膳研究会顧問。
主な著書に『薬膳で治す』(時事書房・共著)『まいにち養生ごはん』(学陽書房・監修)『中医婦人科学』(上海科技出版社・共著)雑誌『助産雑誌』連載執筆など。