監修:楊 敏 先生(中医学講師)
痛み、しびれ、だるい、重い、脱力など腰痛の症状はさまざま。はっきりとした病名の有無に関わらず、慢性的な腰痛でつらい思いをしている人も多いのでは?
腰痛は老化に伴い起こりやすい疾患のひとつですが、最近では若い人にも増えています。今回は、現代病とも言われる腰痛の対処・予防法をお伝えします。
腰痛は人間の宿命!?それでもつらい…
そもそも「腰」という漢字は、肉づきに要(かなめ)という意味が合わさってできているもの。「腰」は人のからだにとって、扇の要のような重要な役目があり、ぎっくり腰になると動けなくなるのは、要が壊れたからと言えるでしょう。
ひとことで腰痛といっても原因は多く、椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、腰椎分離症、脊柱管狭窄症、側湾症など脊柱に由来するものや、尿路結石、子宮筋腫、子宮内膜症、胆嚢炎などの腰以外に由来するもの。また、ストレスなどの心因性によるものもあります。このように腰痛の裏には大きな病気が潜んでいる可能性もあるので、腰痛があれば一度専門家や病院の検査を受けることをおすすめします。
ただ、病名が分かっても分からなくても慢性的な腰痛はつらいですよね。もちろん投薬や手術で痛みを止める方法もありますが、中医学的な体質別ケアで改善する可能性も大いにあります。まずは、自分の腰痛タイプを知ることから始めましょう。
中医学で考える腰痛の原因3タイプ
(1)腎虚・労損タイプ
また、「久立傷骨」(長く立つと骨を傷つける)とも言われ、長時間立つ仕事をする人や重い荷物を運ぶ人は骨を司る腎が損傷されやすくなります。逆も然り「長く座ると肉を傷つける」という中国のことわざもあり、座りっぱなしで足の筋肉が弱っている人ほど腰痛になりやすくなります。立ちすぎも座りすぎも、どちらも骨を司る腎へダメージを与えてしまうのです。
【気になる症状】
足腰がだるくて痛い、重だるい・膝もだるい、冷え症、頻尿・夜間尿、耳鳴り、腰がしくしく痛む、腰を押すと痛み揉むと楽になる など
【気になる症状】
重い痛み、動けない、患部が冷たい、軟便・下痢をしやすい、浮腫み、舌の苔が真っ白
激痛・刺痛があり、酷くなると患部や皮膚にあざができて動くと痛みが強くなる。舌の色が紫っぽく瘀点瘀斑(黒い点やあざ)がある
タイプ別の予防・改善法
(1)腎虚・労損タイプ
過労・過度な性生活・夜更かし・長期間同じ姿勢を取ることを避け、適度な運動をする。また、ハイヒールは避け、保温し、慢性的に過労をしないことを心掛けましょう。
【おすすめの食材】
豚や牛の筋、軟骨、豚の腎臓、えび、黒豆、大豆、胡桃、ごま、にんにく、杏仁(杏の種の仁)、カシューナッツ、クコの実 など
保温を心がけ、冷たい飲食物を避ける。温かい風呂にゆっくり浸かるようにしましょう。
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、らっきょう、シナモン、ハトムギ、ウド など
急性期は安静するのが一番。医師の指示どおりに処置を行い、局部の内出血や炎症に対して冷湿布を使いましょう。
いわし、あじ、玉ねぎ、なす、黒きくらげ、紅花、田七人参、桃仁(ももの種の仁)など
【ちょこっと豆知識】
田七人参
腰痛を緩和・予防するツボと体操
痛みが強くない場合は、足腰の筋肉を強化したり、縮んだ筋肉を伸ばすために朝、晩フラフープをするように20回ずつ腰を回転するのがおすすめ。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。