よくわかる中医学vol.18-「七情」と上手に向き合う方法- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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よくわかる中医学vol.18
-「七情」と上手に向き合う方法-

2019.02.07 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.18

前回のよくわかる中医学では、人の感情を7つに分けた「七情(しちじょう)」について紹介しました。七情は「怒」「喜」「思」「憂」「悲」「恐」「驚」の7つの情緒のこと。これらの感情が強すぎたり、長く続くと「五臓」(肝、心、脾、肺、腎)の気の流れに異常をきたしてしまいます。

わたしたちの感情はいったいどのように体と結びつき、影響を与え合っているのでしょうか。
今回のよくわかる中医学では、七情が五臓におよぼす症状とその対処法について紹介します。精神の安定も健康を保つ重要な条件です。七情と五臓の関係を知って、自分の体と心の状態に向き合ってみましょう。

※「憂」は脾に属するとする説と、肺に属するとする説があります。

「怒」と「肝」の関係

「怒」は「肝(かん)」(肝臓)と関連が深いとされています。
普段の生活のなかで感じる「怒り」は、適度であればやる気を沸き上がらせるなどプラスに働くことがあります。ところが、「怒り」の度が過ぎると気を上らせ、肝を傷めてしまいます。カッと気が上って起こる下記のような症状がみられます。
【症状】
□赤ら顔になる
□目が赤くなる
□血圧が上がる(ひどくなると血管が破れて脳卒中に至ることもある)
□めまいがする
□頭、脇腹が張るように痛む
【摂り入れたい食材】

肝のはたらきを改善するオレンジやみかんなどの柑橘類、パクチー・春菊・しそなどのハーブ類、酸味のある食べ物

【COCOKARA中医学関連ページ】
よく分かる中医学vol.4-「肝」の働きと養生(1)-

「喜」と「心」の関係

「喜」は「心(しん)」(心臓)と関連が深いとされています。
喜ぶという感情は、適度であれば気分が良くなり、気血の巡りも良くします。マイナスに働くことがないように思えますが、過度な喜びは気を緩ませ、集中力の欠如、思考力の低下につながってしまうので、感情のコントロールが必要です。症状としては下記のようなものがみられます。
【症状】
□やる気が起きない
□倦怠感
□ものごとに集中できない
□注意散漫
【摂り入れたい食材】

心のはたらきを養う蓮の実。スープ、炊き込みご飯、茶わん蒸し、お茶など幅広く活用できます。

【COCOKARA中医学関連ページ】
よく分かる中医学vol.6-「心」の働き-

「思」・「憂」と「脾」の関係

「思」、「憂」は「脾(ひ)」(胃腸)と関連が深いとされています。
勉強でも仕事でもものごとをよく考えることは重要ですが、考え過ぎたり、同じことを何度も考えて堂々巡りになってしまうと気が結んだ状態になってしまいます。例えば、考え過ぎるとため息がでるのは、結ばれていた気が破られて、一瞬気の流れが良くなって楽になるため。症状としては下記のようなものがみられます。
【症状】
□食欲がなくなる
□胃もたれ
□胃痛
□軟便・下痢
【摂り入れたい食材】

脾を養うなつめ、卵、はと麦が役立ちます。

【COCOKARA中医学関連ページ】
よく分かる中医学vol.8-「脾胃」の働きと養生-

「悲」と「肺」の関係

「悲」は「肺」と関連が深いとされています。
悲しいときには泣いて涙を流した方が良いと言われています。しかし、思い出すたびに泣いてしまうなど、悲しみが続いてしまうと、気を抑えて消してしまい、免疫機能を損傷します。特に免疫機能と関連の深い「肺」が傷つけられてしまうのです。症状としては下記のようなものがみられます。
【症状】
□胸苦しい
□息切れ
□呼吸が浅い
□無力・倦怠感
【摂り入れたい食材】

肺を養うには白い食材を取り入れると良いでしょう。長芋、白きくらげ、百合根などがおすすめです。

【COCOKARA中医学関連ページ】
よく分かる中医学vol.9-「肺」の働きと養生-

「恐」・「驚」と「腎」の関係

「恐」は「腎」と関連が深いとされています。
度を超える恐怖が長時間続くと、腎の気が持つ固摂作用(液体が漏れ出ないようにする働き)を失調させ、気が下がってしまいます。また、急な驚きは気を乱し、心・腎の働きも乱れてしまいます。恐怖や驚きによって、尿もれ・流産をしてしまうのは、気が下がり外に漏れ出てしまったためと考えられるのです。
【症状】
□急に白髪が増える
□尿や大便の失禁
□流産
【対処法】

腎を養うには黒い食材が使われます。黒豆、くるみ、黒ごま、しいたけなどがおすすめです。

【COCOKARA中医学関連ページ】
よく分かる中医学vol.2-「腎」の働き-

ここまで、七情と五臓のつながりについてご紹介しました。きっと同じ経験をした方もいるはず。何事も適度に、ご自身の感情のコントロールに意識を向けてみましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。