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ココロの春バテ”五月病”対策

2023.05.02 UPDATE

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.7

すがすがしい気候とは裏腹に、なんだか気分はどんより……。この時期はそんな心の不調を感じている人も多いのでは? 新年度から1カ月ほどが過ぎる5月の頃は、日々溜まっていく疲れや緊張もピークになり、“五月病”と呼ばれる心のトラブルを起こしやすくなります。気持ちのいい季節を元気に過ごすためにも、疲れたなと感じたら積極的にケアをして、ココロとカラダを健やかに整えましょう。

“がんばり過ぎ”が五月病の原因に

“五月病”は、4月からの新生活でストレスや疲労が溜まり、心身に不調が起こる状態のこと。やる気が出ない、眠れない、食欲がないといった不調が現れ、新年度で環境が変わった人に多く見られることから、一般に五月病と呼ばれています。医学的には「適応障害」という精神疾患にあたり、主に次のような心身の症状が見られます。
[精神的な症状]
気分の落ち込み、抑うつ、イライラ、不安感、やる気がでない、集中できない など
[身体の症状]
不眠、食欲不振、だるい、疲れやすい、頭痛、肩こり、動悸、胸が苦しい、腹痛、下痢 など
五月病の主な要因は、一言でいうと“がんばり過ぎ”。環境の変化に早く適応しようとがんばり続けていると、「交感神経(体の働きを活性化させる)」が優位な状態が続き、疲れを感じにくくなります。すると、疲れていることを自覚できず、知らず知らず無理をしてしまうことに。その結果、脳や体に疲労が溜まり、さまざまな不調が現れるのです。適応障害は比較的軽い精神疾患で、早めに対処をすれば改善もしやすいことが特徴。放っておくと「うつ病」に進行してしまうこともあるので、“がんばり過ぎかな”と感じたらきちんとケアすることが大切です。

情緒の不安定は「気」の停滞、乱れから

中医学では、五月病は過剰なストレスによる「肝」の不調から起こる症状と考えます。肝は体内の「気(エネルギー)」の巡りをスムーズに保ち、情緒をコントロールする臓器。そのため、過剰なストレスなどで肝がダメージを受けると、気の巡りが停滞したり乱れたり(逆流)して、情緒も不安定な状態に。その結果、落ち込み、イライラ、頭痛、腹痛といった心身の不調が現れるようになります。また、体内の気は“心の元気”の源でもあるため、気の不足から五月病などの精神不調を招いてしまうこともあります。“心と体はつながっている(心身一如:しんしんいちにょ)”とする中医学では、精神的なトラブルも体内の不調から考えて対処します。気分が落ち込んだり、イライラしたり……。そんな時は体の不調にもしっかり向き合い、心身ともに健やかな状態を保つよう心がけましょう。

“五月病”を改善する体質別ケア

五月病の症状は、気の停滞、逆流などの体質が主な要因に。日常のストレスをこまめに解消し、気持ちをリラックスさせて、気の巡りをスムーズに保つことを心がけましょう。また、気が不足している人は、胃腸を元気にしてしっかり栄養を取ることも大切です。
共通のケア
五月病の症状を感じている人に共通のおすすめケアです。体質別のケアにプラスして、ツボ押しや食材選びに取り入れてみてください。
【おすすめのツボ】
印堂(いんどう)、百会(ひゃくえ)、神門(しんもん)
● 鍼灸では、内関、太衝、三陰交などもおすすめ。
【おすすめ食材・生薬】
食材:ゆり根、小麦、玄米、あさり、しじみ、玫瑰花茶、ジャスミンティー、アーモンド など
生薬:合歓花、合歓皮、酸棗仁、琥珀、珍珠、鬱金 など
「気滞」タイプ
気の巡りが停滞し、イライラ、憂うつ、胸が張って苦しい、頭痛、胃や腹部の張り・痛み、生理不順、といった症状が現れます。
【おすすめのツボ】
期門(きもん)、肝兪(かんゆ)
【おすすめ食材・生薬】
香りの良いもので気を巡らせる
食材:ミント、金柑、グレープフルーツ、みかん、ゆず、カボス、山査子、大根、クレソン など
生薬:陳皮、蓮の実、仏手柑 など
「気逆」タイプ
気の巡りが乱れて上に逆流し、怒りっぽい、頭痛、めまい、ほてり、舌の色が紅い、舌苔が黄色い、といった症状が現れます。
【おすすめのツボ】
行間(こうかん)、膻中(だんちゅう)
【おすすめ食材・生薬】
余分な熱を冷まし、気の乱れを整える
食材:冬瓜、苦瓜、あずき、緑豆、たけのこ、セロリ、アロエ など
生薬:五行草、菊花 など
「気の不足」タイプ
胃腸が弱く、栄養不足で気を十分に養えないタイプ。気分が落ち込む、やる気が出ない、疲れやすい、息切れ、動悸、かぜをひきやすい、食欲不振、舌の色が淡い、といった症状が現れます。
【おすすめのツボ】
足三里(あしさんり)、心兪(しんゆ)、脾兪(ひゆ)
【おすすめ食材・生薬】
胃腸を元気にして、気を補う
食材:山芋、じゃがいも、米、大豆製品、きのこ類、鶏肉、牛肉、羊肉、えび、魚類 など
生薬:大棗、人参、黄耆、甘草 など

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。