監修:張 立也 先生(中医学講師)
近年、未婚率や初婚年齢の上昇に伴い、初産年齢も上昇しています。厚生労働省の統計では、初産の平均年齢は平成27年には30.7歳となり、不妊治療を選択する人も増加しています。今回は、中医学による妊活のポイントをご紹介します。
中医学による妊活ポイント
30代になると妊娠力は徐々に低下していきますが、妊娠しやすい20代でも不規則な生活や疲労、ストレスなどによってホルモンのバランスが乱れ、排卵しにくくなることもあります。その一方で、40代でも妊娠力を保っている人もいて、妊娠のしやすさには人それぞれ個人差があります。
こうした妊娠力が低下した状態に対して、妊娠しやすい体質づくりをするうえでバックアップしてくれるのが中医学の知恵や漢方薬です。中医学は、もともと体に備わっている力を取り戻し、さらに高めていこうというものですから、月経を本来の状態に戻したり、卵巣を元気にしたりして妊娠しやすい体に整えるのは得意とするところです。
また、一人ひとりの体質や年代に合わせてきめ細やかに対応するのも中医学の特徴です。妊活をサポートするうえでも、個々の体質や現在の体の状態を見極めながら、「養血(ようけつ)」「活血(かっけつ)」「補腎(ほじん)」などのアプローチを行っていきます。
「養血」は体の栄養となる血を補うこと、「活血」は血の巡りをよくして体の隅々まで必要な栄養を届けること、「補腎」は生殖機能を司る五臓の腎(じん)を補うこと。
これらをキーワードに、漢方薬を上手に用いながら妊娠しやすい心と体づくりに取り組み、生理周期を整えて妊娠力を高めていくことが大切です。
妊娠しやすい体づくりへ3つのアプローチ
● 養血(ようけつ)
血を養い充実させることで妊娠力を高める
「血」は全身の臓器や組織に栄養を届け、精神を安定させる働きがあります。毎月の月経で血が不足しやすいので日頃からたっぷりと血を養っておくと、妊娠力を高めることができます。血が不足した状態は「血虚(けっきょ)」といい、月経が遅れたり経血量が少なくなることも。
● 活血(かっけつ)
血流を良くして子宮の環境を整え授かりやすい体に
子宮や卵巣はストレスや冷えなどから血の巡りが悪くなりやすい環境にあります。血流の滞った状態を「瘀血(おけつ)」とおいい、重い生理痛が発生することも。血流をよくすることで子宮や卵巣の環境が整い、妊娠力アップにつながります。
● 補腎(ほじん)
生殖機能をつかさどる腎を補い健やかに保つ
生命エネルギーの源である五臓の腎は成長、発育、ホルモン分泌、生殖機能などに関わります。特に、体に潤いを与え体内の余分な熱を冷ます「腎陰(じんいん)」と、体をあたため成長を促す「腎陽(じんよう)」のふたつのバランスを重視しています。腎の機能が衰えると、腎陰や腎陽が不足し陰陽バランスが崩れ、不調となってあらわれます。卵子の老化にも直結するため、妊活では、腎を補い健やかに保つことが大切です。
7の倍数と「腎」の充実度
中医学では、女性の体は7の倍数で変化すると考えます。「腎」は卵巣機能や女性ホルモンとも深い関わりがあります。次にご紹介するのは7年毎の変化の特徴です。
14歳…腎が盛んに活動し初潮を迎える。未熟な状態なので月経周期や期間は不安定。
21歳…腎が充実し心身ともに整い、妊娠し易い体に。生理痛、生理不順などのトラブルが現れ始める。
28歳…腎が最も充実し、生殖機能がピークを迎える。PMS(月経前症候群)、子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科系トラブルが現れることも。
35歳…腎が徐々に衰え始める。妊娠力が低下し、肌荒れや肌の疲れなど外見にも衰えの兆候が。
42歳…腎の機能が顕著に低下し、女性ホルモンの分泌が減少。月経は量や周期が不安定に。白髪やシワが目立つようになってくる。
上記の腎の充実度からみると、妊娠に適しているのは21歳頃から35歳頃といえるでしょう。ただし、妊娠のしやすさには個人差があり、40代になっても妊娠力を保っている人もいます。
将来妊娠を希望される方や現在妊活中の方は、今回ご紹介した、中医学の養血、活血、補腎をベースとした“妊娠力”を高める体づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事を監修された先生
中医学講師張 立也 先生
張 立也(ちょう りつや)中医学講師。
医学博士。不妊カウンセラー。
中国・遼寧中医薬大学医学部卒業。同大学に医師・講師として勤務。1996年に来日し、埼玉医科大学で医学博士号を取得。 現在は日本中医薬研究会専任講師として、中医学の普及と指導に務める。
主な著書に「中医の非薬物療法基礎と臨床」「中医整体学」など。