監修:佐々木 絵理子(薬剤師)
スマートフォンを操作するとき、ペンで文字を書くとき、ふと自分の指先を見て「また爪が割れてる…」「二枚爪になってボロボロ」とため息をついていませんか。ハンドクリームをこまめに塗ったり、お気に入りのネイルオイルでお手入れしたりしても、なぜか繰り返す爪のトラブル。こういった繰り返す不調は、外側からのケアだけでは足りていないという、体からのサインかもしれません。今回は、爪のお悩みに根本的にアプローチする「健やかな爪を育てる養生法」を薬剤師の佐々木がご紹介します。気軽にできるものばかりなので、今日からぜひ取り入れてみてくださいね。
どうして私の爪は弱いの?中医学が教える「爪と血」の深い関係
爪は「健康状態を映し出す鏡」とも言われます。中医学においては、「肝(かん)は筋(すじ)を主(つかさど)り、その華(はな)は爪にある」という教えがあります。これは、「肝」という臓腑が筋(すじ)の働きをコントロールしており、その状態が一番わかりやすく現れるのが「爪」だという意味です。そして、この肝の重要な役割は、全身に栄養を潤沢に届ける「血(けつ)」をたっぷりと貯蔵すること。つまり、体に十分な血があり、それが指先の末端までしっかり巡っていれば、自ずとピンク色でツヤのある、割れにくい丈夫な爪が育つというわけです。
逆に言えば、爪が割れやすい、薄い、二枚爪になりやすいというのは、体が「末端まで届ける血が足りていないよ!血虚(けっきょ)の状態だよ!」と教えてくれている一つのサインなのです。
★ご自身の爪の状態(色や形)から、体質や体調をより詳しくチェックしたい方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
現代女性は「血」が不足しがち!スマホの使いすぎも要注意?
「しっかりご飯を食べているのに、どうして血が足りなくなるの?」「血液検査では貧血ではないのに」と不思議に思うかもしれません。
ここで大切なのが、中医学における「血」とは、検査値としての“血液”だけではなく、体に栄養と潤いを届ける“はたらき”も含めて捉えるという点です。中医学では女性は「血を以て本となす」(血を根本とする)と言われるほど、一生を通じて血と深い関わりがあります。毎月の月経などで血を消耗しやすい分、意識して養わないと“足りない”方向に傾きやすいのです。
さらに、現代ならではの落とし穴が「目の酷使」。中医学では、目は肝の血によって滋養されていると考えられています。そのため、目を使いすぎると、肝に蓄えられている血が消耗しやすくなるのです。
仕事中の長時間のパソコン作業、通勤電車でのスマホチェック、寝る前のSNSタイムや動画視聴……。こうした「見る時間」が増えるほど、目も体も休まる時間が減り、結果として“爪まで回す栄養(血)の余裕”がなくなってしまうということ。心当たりがある方は、目をいたわることも爪ケアの一部だと意識してみてくださいね。
今日からできる!内側から「健やかな爪」を育てる3つの養生法
爪のトラブルが「血の不足」や「目の酷使」と関係していると考えると、日常で見直せるポイントが見えてきます。血を補い、血の消耗を防ぐ、気軽に始められる養生を3つご紹介します。
(1)血を補う食材で、美味しく血をチャージ
血を補うためには、毎日の食事が基本となります。血を養う食材としては、黒ごま、黒豆、ほうれん草、にんじん、なつめ、クコの実などが日常に取り入れやすいでしょう。難しく考えず、「いつもの白ご飯に黒ごまをふる」「おやつをチョコレートからドライフルーツ(なつめ等)に変えてみる」といった、ちょっとした工夫で十分です。デスクワークの合間に、クコの実をお茶に入れて飲むのもおすすめです。
(2)スマートフォンを手放し、目を労わる時間を作る
先ほどお伝えしたように、目の疲れは爪の大敵です。1日のうち、意識して「目を使わない時間」を作りましょう。目を閉じてリラックスしたり、遠くの景色をぼーっと眺めたりする時間は、血の消耗を和らげてくれます。寝る前の30分はスマートフォンを手放して、好きな香りのハンドクリームで指先を優しくマッサージする時間に充ててみませんか。
(3)「夜のゴールデンタイム」にはベッドの中へ
せっかく食事で血を補う食材を取り入れても、しっかり眠らなければ体は整いにくいもの。中医学では、23時〜1時は胆経、1時〜3時は肝経が活発になる時間帯とされており、この時間に深く眠っていることは、健やかな爪を育てる味方と考えられています。遅くとも日付が変わる前にはベッドに入る習慣を心がけましょう。
焦らずじっくり。今日からの「養生」が未来の爪を作る
爪という小さな部分に起こる不調が、実は体内の血の状態や、目の疲れと繋がっているとは意外ですよね。爪は1日に約0.1mmずつしか伸びないため、今日のケアが結果として現れるのは少し先になります。しかし、内側からの養生は決して裏切りません。外側からの保湿ケアにプラスして、ほんの少し「血」を意識した生活を送ってみてください。数か月後には、強くて美しい、本来のあなたの爪に出会えるはずですよ。
【注意事項】
本記事は、中医学・漢方の一般的な理論や養生法を紹介するものであり、医師による診断・治療に代わるものではありません。
爪に起こる変化が急激である場合や痛みを伴う場合、長期間改善が見られない場合は、自己判断せず、医療機関にご相談ください。
この記事を監修された先生
薬剤師佐々木 絵理子
薬剤師。国際中医薬膳師。
富山医科薬科大学(現・富山大学)薬学部卒業。調剤薬局や大学病院で薬剤師として勤務する中で、養生の重要性を広く伝えたいという想いがうまれ、イスクラ中医薬研修塾に入塾。現在はイスクラ産業株式会社 中成薬事業本部広報課に所属し、中医学情報サイト「COCOKARA中医学」の運営やSNSを通じて、健康維持に役立つ養生法などを発信している。
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