夏は「心」の働きを守って!〜汗の季節の体ケア〜 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

中医学の基礎

夏は「心」の働きを守って!
〜汗の季節の体ケア〜

2026.08.18 UPDATE

屋外で汗をふく女性

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

こんにちは。中医学講師の楊敏です。
厳しい暑さが続く夏の盛り。2026年は天気予報に「酷暑日」という用語も追加され、体調管理に一層の注意が呼びかけられるようになりました。中医学でみると、夏は五臓の「心(しん)」に負担がかかりやすい時期。心の働きが弱くなるとこころと体のさまざまな不調につながるので、日々のケアで心をしっかり守りましょう。

汗をかく夏は「心」に負担がかかりやすい

夏の暑さはさまざまな不調の要因となりますが、中でもダメージを受けやすいのは五臓の「心」です。
中医学では「汗は心の液」といわれ、汗と心の状態は密接に関わっていると考えます。汗をたくさんかくと、まず体内の「津液」(水分)を消耗してしまいます。すると、血中の水分も不足して粘度が増し(ドロドロ血)、心に負担がかかるように。また、汗をかくと津液と一緒に「気」(エネルギー)も流失してしまうため、心のエネルギーが不足しがちになります。こうした状態が続くと、血行不良や動悸、めまい、疲労感といった不調を招いてしまうのです。
一方、心は精神状態とも密接に関わる臓腑。そのため、心の働きが弱くなると精神が不安定になり、不眠、イライラ、不安感といったこころの不調が現れることもあります。

夏に気をつけたいのは「心の気陰両虚」と「心血虚」

心の不調にもさまざまなタイプがありますが、夏に注意したいのは「心の気陰両虚(きいんりょうきょ)」と「心血虚(しんけっきょ)」です。
気陰両虚は、たくさん汗をかくことで体内の津液(陰)や気を消耗してしまうことが要因に。一方、気や津液は血の生成にも関わるため、多量の発汗が続くと血も消耗してしまいます。また、夏は「脾胃」(胃腸)の働きが低下しやすく、食欲が落ちてしまうことも。その結果、栄養不足から血を十分に生成できず、心血虚(血不足)を招いてしまうのです。
さらに、夏は暑さによる睡眠不足にも注意が必要です。睡眠は心身の疲労を回復し、陰(血や津液)を養う大切な時間。そのため十分に睡眠が取れないと、気陰両虚や血不足の一因になることもあります。

体質ケアで「心」の働きを健やかに

心は生命活動の中心を担う大切な臓腑。その分、働きが弱くなると全身に影響し、心身にさまざまな不調が起こるようになります。暑さに負けず夏を乗り切るためにも、日々のケアで心の働きを健やかに保ちましょう。

 

●「心の気陰両虚」タイプ
心煩(胸苦しい、イライラして落ちつかない)、頭痛、顔が紅い、汗っかき、口の乾燥、疲労感、倦怠感、動悸、息切れ、口内炎、舌の色が紅い、舌の乾燥などの症状が現れやすいです。

ケアの基本は、汗で消耗しがちな気と津液をしっかり養うこと。潤いの多い食材を意識しながら、日々の食事でバランス良く栄養を摂るよう心がけましょう。
水分補給は大切ですが、冷たいものを大量に飲むと脾胃の負担になるので気をつけて。コップ1杯程度の常温または温かい飲み物をこまめに摂ることがポイントです。

 

<おすすめ食材>
すいか、苦瓜、きゅうり、トマト、青梗菜、長芋、にんじん、牛乳、大豆製品、合鴨、豚肉、鶏肉、ピータン、白きくらげ、緑豆、メロン、マンゴー、キウイフルーツ、梅、ゆり根、蓮子芯、麦茶 など
〜おすすめ料理〜
*きゅうり、苦瓜、にんじんの野菜ジュース
*鴨南蛮そうめん 梅肉添え
*緑豆と白きくらげのおしるこ

 

●「心血虚」タイプ
顔色や唇の色が白い、頭がふらふらする、めまい、立ちくらみ、動悸、物忘れ、偏食・少食、寝つきが悪い、夢が多く熟睡できない、汗が少ない、手足の冷え、足がつりやすい、舌の色が淡いなどの症状が現れやすいです。

ケアの基本は、しっかり栄養を摂って血を養うこと。そのためにも、冷たい飲食、食べ過ぎ飲み過ぎなどは避け、脾胃を元気に保つよう心がけましょう。

 

<おすすめ食材>
レバー、あん肝、卵、ほうれん草、小松菜、金針菜、パクチー、あさり、しじみ、かき、桃、プルーン、なつめ、竜眼肉、クコの実、桑の実、黒ごま など
〜おすすめ料理〜
*あさりのお吸い物 パクチー添え
*ほうれん草、金針菜、錦糸卵のマヨネーズ和え 黒ごまをかけて
*なつめ、竜眼肉茶

暮らしのケア

● 心の気血を養うためにも、脾胃の働きを守ることが大切。脾胃は冷えや湿気に弱いので、冷たいもの、水分の摂り過ぎに気をつけて。

● 夏はあっさりした食事になりがちですが、栄養をバランスよく摂って気・血・津液をしっかり養うことが大切です。食中毒などを防ぐためにも、しょうが、みょうが、ねぎ、しそ、梅、酢などを上手に取り入れて。食欲アップにもおすすめです。

● 汗をかき過ぎないよう、冷房や除湿を適度に使って室温の調節を。外出する際は、帽子、日傘などを上手に使いましょう。
※冷房や扇風機の風は、体に直接当たらないように気をつけて。

● 汗のかき過ぎには注意が必要ですが、体の熱を発散させるためにも適度な発汗は大切。朝夕の涼しい時間帯や冷房の効いた室内で、無理のない範囲で体を動かしましょう。

● 睡眠中は陰(血や津液)を養う時間。暑さ対策などをしっかりして、睡眠を十分取るよう心がけましょう。

 

~夏の昼寝のススメ~

中国には、「子午覚(しごかく/子午觉)」という、子と午の時間に睡眠や休息をとる養生の考え方があります。「子」は23時から翌1時、「午」は11時から13時を指します。「子」の刻は陰気が盛んになるため、この時間には眠りについているのが理想です。一方、「午」の刻は陽気が最も盛んになる時間帯であり、中医学では「心」と関わりの深い時間でもあります。特に夏は、この時間に15~30分ほど昼寝をするのがおすすめ。短い昼寝は心身の疲れをやわらげ、「心」の働きを整えることにもつながります。

 

<夏におすすめのツボ>
~動悸や不眠に~
● 神門(しんもん):手首のしわの小指側端、手首をそらすとくぼむところ
● 心兪(しんゆ):背骨と肩甲骨の間。肩甲骨の下から1/3、背骨から指2本分くらいのところ
→ゴルフボールやテニスボールを床に置き、ツボに当ててマッサージするのもおすすめ

~倦怠感やめまいに~
● 足三里(あしさんり):膝の皿の下、外側の窪みから指4本分下

夏におすすめのツボ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。