監修:張 成龍(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の張成龍です。
前回のコラムでは、中国史上唯一の女性皇帝・武則天(ぶそくてん・則天武后)が愛用したとされる「神仙玉女粉」についてご紹介しました。その美容処方の考え方は、現代にも通じる中医美容の基本ともいえるもの。今回は、そんな古代の美の秘訣を今に生かすヒントをお伝えします。美しく健やかな肌をめざすためにも、ぜひセルフケアの参考にしてみてください。
現代にも通じる古代の美容処方
今なお語り継がれる武則天の美しさ。その秘訣とされた神仙玉女粉には、「益母草」「滑石」「胭脂」という3つの生薬が配合されたと伝えられています。主体となる益母草の効能は、血の巡りを良くして過剰な熱やむくみを取ること。滑石には皮脂や汚れを取り除く作用、胭脂には血の巡りを促す作用があり、現代の視点で見ても、その効果は理にかなったものといえます。
<現代で捉える神仙玉女粉の美容効果>
● 抗酸化・抗炎症作用
益母草に含まれるフラボノイドには高い抗酸化・抗炎症作用があるとされ、肌の老化を抑える働きが期待できます。
● 微小循環とターンオーバーの促進
血行が促され、肌のすみずみまで血が巡って栄養や潤いが行き渡ります。ターンオーバーも整い、くすみのない健やかな肌が保たれます。
● ミネラル浄化と皮脂バランスの調整
滑石には皮脂や汚れを吸着する性質があり、毛穴の詰まりや肌のくすみ予防につながります。
このように、神仙玉女粉は、体の内側と肌表面の両方から働きかける美容処方でした。こうした考え方は現代においても変わることはなく、特に“体の中から肌を整える”という視点は、今なお中医美容を支える基本となっています。
肌は「内臓の鏡」。体内の健康状態が肌質に現れる
中医学では、肌は体内の健康状態を映し出す“内臓の鏡”と考えます。中でも、「気血が旺盛であれば、肌は自然と輝く」とされ、「気」(エネルギー)と「血」の状態は肌と密接に関係しています。これは、血が体内を巡り、肌に必要な栄養や潤いを届けているため。また、気は血の巡りを支え、新陳代謝(ターンオーバー)を促す原動力で、血の生成にも深く関わっています。そのため、気・血が充実して滞りなく巡っていれば、健やかな肌を保ちやすくなるのです。一方、体内に「湿」(余分な水分や汚れ)や「熱」が溜まっている状態は、肌トラブルを招く要因に。炎症やニキビ、むくみといった症状につながりやすいので、肌の不調が気になる場合は湿熱を取り除くことも大切です。
肌も体も健やかに! 古来の知恵が生きるスキンケアの食養生
中医美容のスキンケアは、“体の中から”が基本。ポイントは、肌を養う気・血を充実させ、スムーズな巡りを保つこと。また、過剰な熱や湿を溜め込まず、肌トラブルを防ぐこともポイントです。こうした養生は、肌はもちろん体全体を健やかに整えることにもつながります。肌も体も元気にイキイキ!をめざして、ぜひ日々の食養生を心がけてみてください。
<健やか美肌をつくる食養生>
それぞれの症状に当てはまるものがあれば、不調のサインと捉えて積極的にケアを。
● 気が不足しているサイン
疲れやすい、だるい、食が細い、胃もたれ、息切れしやすい
~「気」を補う食材~
山芋、じゃがいも、かぼちゃ、大豆、枝豆、米、もち米、きのこ類、キャベツ、鶏肉、豚肉、牛肉、まぐろ、鮭、なつめ、桃、ぶどう など
● 血不足のサイン
肌の乾燥、髪のパサつき、抜け毛、爪が割れやすい、めまい
~「血」を補う食材~
黒ごま、黒きくらげ、黒豆、卵、レバー、にんじん、ほうれん草、金針菜、クコの実、プルーン、羊肉、ぶり など
● 気が滞っているサイン
イライラ、怒りっぽい、のどの詰まり、お腹の張り、ゲップやガスが多い
~「気」を巡らせる食材~
柑橘類、しょうが、ねぎ、しそ、三つ葉、春菊、みょうが、セロリ、クレソン、ジャスミン、ミント、菊花、八角 など
● 湿熱が溜まっているサイン
にきびや吹き出物が多い、むくみ、軟便、口内のベタつき、尿の色が濃い
~「湿」「熱」を取り除く食材~
はと麦、緑豆(もやし、春雨など)、とうもろこし、こんにゃく、冬瓜、苦瓜、セロリ、白菜、豆腐、海藻類、どくだみ など
毎日押して美肌をサポート。スキンケアのおすすめツボ4選
主に気・血に働きかける、美肌サポートのツボをご紹介します。血行促進、ストレス緩和、ホルモンバランスの安定といった効果が期待できるので、毎日のケアにぜひ取り入れてみて。
● 合谷(ごうこく):手の甲、人差し指と親指の骨が合流するところ。
血行を促し、肌のくすみ、むくみの改善をサポートします。
● 太衝(たいしょう):足の甲、親指と第二指の骨が接する付け根
気の巡りを整え、イライラ、ストレスを和らげます。月経前の肌荒れにもおすすめ。
● 三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本分上の骨の後ろ
血を補い、肌の潤いを保ちます。乾燥や冷えが気になる人におすすめです。
● 足三里(あしさんり):膝の皿の下、外側の窪みから指4本分下
胃腸を整え、疲れを取り、肌の元気を底上げします。肌や体の疲れが気になるときに。

2回にわたってお届けした、古代と現代の中医学スキンケア。その根本にあるのは、時を経ても変わることのない「健やかな心身が美しい肌をつくる」という考え方です。
「美しさとは、気血の輝きである。容姿が整い、体に気が満ちていれば、老いても若々しい」
これは、武則天が残したと伝えられる言葉。千年もの昔に、今と変わらぬ“美しさ、若々しさの秘訣”を見抜いていたことに、あらためて驚かされます。武則天ほどの行動力や知性を身につけるのはなかなか難しそうですが、 “心と体を整えるケア”は誰にでもできるもの。古代から受け継がれる中医学の知恵を無理なく暮らしに取り入れ、自分らしい美しさ、健やかさを育んでいけるといいですね。
この記事を監修された先生
中医学講師張 成龍
張 成龍(ちょう せいりゅう)中医学講師。中国・遼寧中医薬大学 国医堂にて、叢法滋、陳以国ら名医・名師のもとで6年間研鑽を積み、鍼灸および内科領域における高度な臨床技術を習得。中国では鍼灸内科を中心に、循環器内科・皮膚科・糖尿病内科・リウマチ内科・腫瘍内科など多岐にわたる診療科にて従事。北京紫禁城国医館では総合診療も経験。2017年に来日後は、「イスクラ産業株式会社」および「イスクラ中医鍼灸院」にて臨床と研究を継続し、日本における中医学の発展に寄与している。
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