監修:楊 紅娜(中医学講師)
こんにちは。中医薬大学で修士号を取得し、中国で10年間精神科臨床医としての経験を積んだ楊紅娜です。
今回は、なにかと気になるエイジングケアのお話。最近なんだか疲れやすい、肌のハリや乾燥が気になる、白髪が増えた…。そんな変化を感じ始めたら「腎」が衰えているサインかもしれません。腎は老化症状と深く関わり、エイジングケアの要となる臓腑。年齢を重ねてもイキイキと健やかに過ごせるよう、今から積極的にケアしていきましょう。
エイジングケアも「予防」が大切
中医学で最も大切にされるのは、不調や病気を「予防」すること。「未病(病気になる一歩手前の状態)を治す」という言葉があり、古典の医学書『黄帝内経』では次ように説いています。
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聖人(健やかな心身を保つ人)は、すでに発症した病気を治すのではなく、まだ病気になる前の状態(未病)を整える。また、体に乱れが起きてから治すのではなく、乱れる前の段階で防ぐ。病気になってから薬を与え、乱れが生じてから治そうとするのでは、のどが渇いてから井戸を掘り、戦いが始まってから武器を作るようなもので、遅すぎではないか。
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こうした考え方は、エイジングケアにも通じること。小さな加齢のサインは未病の状態と捉え、不調が強くなる前に予防ケアをしていくことが大切です。
体の老化と深く関わる「腎」
「腎」は生命エネルギーの源「精」を蓄える臓腑で、いわば“生命力の貯蔵庫”のような存在。脳や骨、歯、耳、泌尿器、生殖機能などと深く関わり、私たちの若々しさや活力を支えています。
ところが、腎が蓄える精は加齢とともに減少していくため、年齢を重ねると自然と生命力も衰えていくように。その結果、気力の低下、疲労感、もの忘れ、関節や腰の痛み、聴力の低下、頻尿、といったさまざまな老化症状が現れるようになります。
また、全身の潤いの源となる「腎陰(じんいん)」も不足しがちになり、肌の乾燥やシワ、髪のパサつきといった美容トラブルも起こりやすくなるのです。
このように、老化の症状は腎と密接に関わるため、その衰えを緩やかにすることがエイジングケアのカギに。腎は30代半ばくらいから自然と衰えていくため、“まだ大丈夫”と過信せず早めのケアを心がけましょう。
日々の食事でおいしくケア。「腎」を養う食養生
腎を元気にする食材は「黒いもの」「体を温めるもの」「鹹味(塩辛い味)のもの」がポイント。日々の食事に積極的に取り入れて、おいしくエイジングケアをしていきましょう。
<腎を養う基本の食材>
黒ごま、黒豆、黒米、黒きくらげ、黒なつめ、昆布、ひじき、わかめ、のり、プルーン、桑の実、ラズベリー、クコの実、くるみ、栗、松の実、枝豆、カシューナッツ、にら、山芋、にんじん、ブロッコリー、牡蠣、えび、羊肉、鴨肉、すっぽん、なまこ など
<体質別のおすすめ食材>
腎の不調には、主に「腎陽虚」「腎陰虚」「腎精不足」があります。気になる症状があれば、腎に不調があるサイン。基本の食材と合わせて、体質に応じたおすすめ食材も取り入れてみて。
● 腎陽虚タイプ
体の根本的なエネルギー「腎の陽気」が不足しているタイプ。手足や足腰の冷え、疲労感、めまい、むくみ、頻尿などの症状が現れます。
おすすめ食材:しょうが、シナモン、八角、よもぎ、ねぎ、うなぎ、牛肉、紅茶 など
● 腎陰虚タイプ
全身の潤いの源「腎陰」が不足しているタイプ。ほてり、のぼせ、寝汗、不眠、肌や髪の乾燥、便秘気味、尿量が少ないなどの症状が現れます。
おすすめ食材:梨、桃、百合根、白きくらげ、オクラ、はちみつ、オリーブオイル など
● 腎精不足タイプ
生命エネルギーの源「腎精」が不足しているタイプ。白髪、抜け毛、足腰のだるさ、聴力の低下、骨や歯のトラブル、もの忘れなど、老化の症状が現れやすくなります。
おすすめ食材:「腎を養う基本の食材」を参照
気をつけて!「腎」のダメージになるNG行動
ここでは腎にダメージを与える6つの行動をご紹介します。日常の中でついやってしまうことも多いので、なるべく気をつけて過ごしてみてください。
〜ケアのヒント〜
五行配当表(下図)で、腎に当てはまる項目をヒントにしてみて。例えば「寒さ」を避ける、「耳」に負担をかけない、といった日々の意識が腎を守ることにつながります。

<こんな行動に気をつけて>
[1]悪い姿勢で長時間座っている
悪い姿勢のまま長時間座っていると、腰や骨に負担がかかり腎のダメージに。デスクワークをする人は、正しい姿勢、適度なストレッチなどを心がけ、腰の負担を減らしましょう。
[2]耳の使いすぎ
大きな音に長時間さらされていると、耳が疲れて腎にも影響してしまいます。テレビや音楽の音量は控えめに、イヤホンもなるべく使わず過ごすのがおすすめです。
[3]冷えすぎ、温めすぎ
過度な冷房や暖房は、腎の負担に。腎は冷えに弱いので、“夏の冷房は控えめ・冬は上手に暖房”を心がけましょう。
[4]夜更かし、睡眠不足
睡眠や休息が足りないと、疲れが残って腎の消耗につながります。夜は早寝を心がけ、睡眠を十分取りましょう。腎を養う冬の時期は、特に長めの睡眠を意識して。
[5]冬の過剰な運動
冬は静かに過ごして腎を養う季節。たくさん汗をかくような激しい運動は控えましょう。特に夜の運動は避けたいので、“仕事帰りのスポーツジム”なども冬はできればお休みに。
[6]冬の薄着
腎は冷えに弱い臓腑。おしゃれは楽しみたいけれど、冬のミニスカート、お腹の出るショート丈、足首の出る短い靴下などは避けましょう。
エイジングケアのおすすめツボ4選
エイジングケアにおすすめしたい4つのツボ。いずれも体の生命力と関わる大切なツボで、免疫力アップ、胃腸機能の調整、疲労回復、婦人科系トラブルや泌尿器系トラブルに対して効果が期待できます。ツボ押しはいつでもできる手軽さが魅力。ぜひ覚えてこまめにマッサージしてみてください。
● 足三里(あしさんり):膝の皿の下、外側の窪みから指4本分下
● 神闕(しんけつ):へそ
● 気海(きかい): へそから指2本分下
● 関元(かんげん):へそから指4本分下
この記事を監修された先生
中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。
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