秋の「咳」は“肺のケア”で和らげる - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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秋の「咳」は
“肺のケア”で和らげる

2024.11.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

ひんやりとした風が気持ちのいい秋。気温も落ち着き過ごしやすい季節ですが、この時期は夏のベタつきから一転、空気がカラカラに乾燥し始めます。カサつく肌や髪が気になることはもちろん、咳や痰など呼吸器系の不調も起こりやすいので要注意。乾燥ダメージを放っておくと免疫力の低下にもつながるので、しっかりケアをして肺の機能を守りましょう。

秋は「肺」の乾燥に気をつけて

秋は、呼吸と深く関わる「肺」がダメージを受けやすい季節です。肺はみずみずしく潤った状態を好み、柔らかく傷つきやすい臓腑。そのため、呼吸を通じて秋の乾いた空気が肺に取り込まれると、肺が乾燥し、のどにも影響して、咳や喘息、痰といった呼吸器系の不調が起こりやすくなるのです。

また、肺は外気に直接触れるため、ウイルスや細菌などの邪気に侵されやすく、気温や大気中の粒子などにも敏感に影響を受けてしまいます。小さなダメージでも不調を起こしてしまうことから「嬌臓(きょうぞう)」(ひ弱な臓)とも呼ばれるので、予防&早めのケアで肺を守ることが大切です。

「肺」がダメージを受けると免疫力も低下

中医学では、肺は“体の傘(華蓋:身分の高い人物が乗る輿を覆う傘)”と例えられることもあります。これは、肺が一番上にある臓腑で、傘のように体全体を守っているから。肺は体内の「気」(エネルギー)の生成と関わり、「衛気」(体の免疫力のようなもの)を全身に巡らせる働きを担っています。そのため、肺が健やかに機能していれば体力や免疫力がしっかり保たれ、ウイルスなどにも感染しにくくなるのです。
秋の乾燥ダメージを放っておくと、これから冬にかけてかぜやインフルエンザにかかりやすくなってしまいます。のどのイガイガ感や空咳などが現れたら、肺が乾燥しているサイン。不調を感じたら、早めの対処で肺を健やかに保つよう心がけましょう。

タイプ別 咳を鎮める肺ケア

肺の不調にはいくつかタイプがあります。症状を参考に自分の体質をチェックして、適切なケアで呼吸器系のトラブルを改善しましょう。

 

「肺気虚」タイプ
もともと胃腸が弱い人、虚弱体質の人などに多いタイプ。肺のエネルギーとなる「気」が足りていないので、胃腸の働きを整えてしっかり栄養を摂り、気を十分に養いましょう。

 

<気になる症状>
疲労感、息切れ、ときどき咳が出る、薄い痰が出る、かぜをひきやすい、顔色が白い、舌の色が淡く舌苔が白い

 

<おすすめ食材>
長芋、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、しいたけ、えのき、エリンギ、しめじ、鶏肉、卵、さわら、たら、すずき など
〜おすすめメニュー〜
・鶏肉、きのこ、にんじん、ひじきの炊き込みご飯
・さわらのホイル蒸し しいたけ、エリンギ、にんじん、銀杏添え

 

 

「肺陰虚」タイプ
秋冬の乾燥などで肺の潤いが不足しているタイプ。慢性の咳、喘息などで「陰液」(潤い)を消耗している人にも多く見られます。日々の食事で体内の潤いを養い、乾燥する季節は加湿器なども上手に使いましょう。

 

<気になる症状>
のどの乾燥、空咳、痰はないか少なめ(咳がひどくなると痰に血が混じることも)、息切れ、しゃがれ声、声のかすれ、疲労感、舌の色が紅く舌苔が少ない

 

<おすすめ食材>
長芋、きゅうり、トマト、れんこん、百合根、梨、びわ、ぶどう、銀杏、杏仁、松の実、はちみつ、白きくらげ、桑葉、枇杷葉 など
〜おすすめメニュー〜
・銀杏入り、れんこん、にんじん、ごぼうのきんぴら(刺激になる唐辛子は避けて)
・梨のコンポート びわ添え

 

 

「風寒」タイプ
邪気(風邪、寒邪)の侵入で肺が不調を起こし、かぜ症状で咳が出るタイプ。冬の寒さやクーラーの冷えが主な要因なので、まずは体をしっかり温め、邪気を追い払うことを心がけて。

 

<気になる症状>
咳がひどい(悪化すると喘息を起こすことも)、薄く白い痰が多い、寒気、発熱、くしゃみ、薄く透明な鼻水、鼻詰まり、舌苔が白い

 

<おすすめ食材>
体を温め咳を止める:しょうが、ねぎ、大葉、みょうが、パクチー、エシャロット など
湿を取り除いて痰を抑える:とうもろこし、くわい、冬瓜、たけのこ、わかめ、さやいんげん、はまぐり、みかん、金柑、陳皮 など
〜おすすめメニュー〜
・しょうが、ねぎをたっぷり入れた、たらとはまぐりの鍋(昆布だし)
・金柑入り陳皮茶

 

☆陳皮は自家製も簡単! みかんをよく食べる人はぜひ作ってみて。
陳皮の詳細や作り方は『漢方・中医学で薬食同源vol.1 ―まるごと役立つ「みかん」-』参照

 

「熱」タイプ
邪気(風邪、熱邪)の侵入が肺に影響し、熱かぜの症状で咳が出るタイプ。かぜが長引いたときにも多く見られ、激しい咳が出やすいので気をつけて。体内の過剰な熱を冷まし、咳を鎮めることを心がけましょう。

 

<気になる症状>
咳がひどい(悪化すると喘息を起こすことも)、黄色く粘りのある痰、息が荒い、熱感、高熱、のどの痛み・腫れ、便秘、舌の色が紅い、舌苔が黄色くベタつく

 

<おすすめ食材>
きゅうり、苦瓜、へちま、大根、ごぼう、ふきのとう、海藻類、びわ、桑葉、ミント、枇杷葉、どくだみ、おおばこ、くちなし、アロエ など
〜おすすめメニュー〜
・きゅうり、大根、海藻のサラダ ミント添え
・枇杷葉とどくだみのお茶

暮らしのポイント

・過度な飲酒、喫煙は避けて。
・脂っぽいもの、塩分の摂り過ぎを控え、薄味で栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
・睡眠不足や過労は体の潤い不足を招く要因に。生活リズムを整え、休息をしっかり取って。
・ウォーキング、ヨガなど適度な運動を習慣にして、体力、免疫力を高めましょう。
・日々のストレスはこまめに発散し、溜め込まないように。

 

<咳に効くツボ>
肺に作用し、呼吸器系の不調(咳やのどの痛み)を和らげます。
・尺沢(しゃくたく):肘を曲げた時にできるシワの上、親指側にある腱の外側
・魚際(ぎょさい):手のひら側、親指の付け根の膨らみの中央あたり

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。