監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.20
なにかと疲れがちな現代社会では、日々の健康対策は大きな関心ごと。朝のウォーキング、寝る前のストレッチなど、“体にいいこと”を日課にしている人も多いのではないでしょうか。そんな健康習慣の一つにおすすめなのが、ツボマッサージ。ツボのケアは、なんといってもその手軽さが魅力です。いつでもどこでも簡単にできるので、ぜひ日々のケアに取り入れてみてください!
「経絡」はツボが集まる「気血」の通り道
ツボ療法は、二千年以上の歴史を持つ中国の伝統医学。本当に効くの?と半信半疑の人も少なくないと思いますが、その有効性は世界保健機関(WHO)にも認められています。
ツボは、正式には「経穴(けいけつ)」と呼ばれます。これは、「経絡」の上に並んでいるポイントということ。経絡は体内の「気」(エネルギー)と「血(けつ)」の通り道で、その上にある経穴を刺激すると、気血の巡りが良くなります。すると、経穴とつながる臓腑や部位にも気血がよく巡り、さまざまな不調の改善につながると考えられています。
そこでおすすめなのが、経絡のマッサージ。経絡の上には多数のツボがあるので、マッサージすることでさまざまなツボが刺激されます。手軽にできて健康維持につながるので、ぜひ日々の習慣に。今回は、体の中でも重要なツボが集まる手の経絡とお手軽マッサージ法についてご紹介します。
手の内側・外側に通る、6本の主要な経絡
数十に枝分かれする経絡の中で、主要な12本を「正経」といいます。そのうちの6本は手の経絡で、手のひら(腕の内)側に3本、手の甲(腕の外)側に3本通っています。
<手のひら側「手の三陰経」〜胸部から手へ下がる〜>
[1]手の太陰肺経
胸部から親指の先へ流れる経絡。主に「肺」(呼吸器系)の働きと関わります。
[2]手の少陰心経
心から小指の先へ流れる経絡。主に「心」の働き、精神面と関わります。
[3]手の厥陰心包経(けついんしんぽうけい)
胸から中指の先へ流れる経絡。主に「心」の働き、精神面と関わり、胃の症状への作用も。
<手の甲側「手の三陽経」〜手から頭部へ上がる〜>
[1]手の陽明大腸経
人差し指から肩を通り、鼻、口へ流れる経絡。目、鼻、口、のどなどの状態と関わり、腹部の不調にも。
[2]手の太陽小腸経
小指から肩甲骨を通り、耳、目へ流れる経絡。肩や目、耳などの状態と関わり、発熱にも。
[3]手の少陽三焦経
薬指から骨を通り、耳、目へ流れる経絡。頭、目、耳などの状態と関わり、消化器系への作用も。
簡単! 気血を巡らせる、経絡マッサージ
手でポンポンと叩いたりさすったり。経絡をちょっと意識すれば、そんな簡単なマッサージでさまざまなツボを刺激することができます。気血の巡りが良くなり、メンタル不調や体調不良の予防、改善にもつながるのでぜひ続けてみてください。
【 たたく 】
・胸からお腹にかけて、両手の手のひらでポンポンとたたく。
・両手を交差させ、腕全体をポンポンとたたく。
☆軽くリズミカルにたたくのがポイント!
【 さする 】
経絡の流れに沿って、始点から終点へ、終点から始点へとさすっていく。
・三陰経(内側):胸 → 肩 → 腕の内側 → 手のひら → 腕の内側 → 肩 → 胸
・三陽経(外側):手の甲 → 腕の外側 → 肩 → 首 → 肩 → 首 → 腕の外 → 手の甲
<さする方向にも意味がある?!>
経絡の流れに沿ってさすると、補法(体に足りないものを補うこと)、経絡の流れと逆方向にさすると、瀉法(体内の余分なものを取り除くこと)とされます。一般的に、「実証」タイプの人は「瀉法」、「虚証」タイプの人は「補法」で体のバランスを整えていきます。
「実証」は気(エネルギー)・血・津液が過剰だったり、巡りが滞ったりしているタイプ、「虚証」は体内の気・血・津液が不足している虚弱気味なタイプです。詳しくは関連記事をご覧ください。
今回のように健康維持のためのマッサージを行う際は、経絡の流れに沿った方向と逆方向の両方をセットで行い、バランスを保つように心がけましょう。
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この記事を監修された先生
中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。