〜カラダとココロの深い関係〜 五臓と五志 「肝」編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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〜カラダとココロの深い関係〜
五臓と五志 「肝」編

2024.02.06 UPDATE

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.15

なにかに腹が立ったり、イライラしたり……。現代社会を生きていると、私たちは日々の暮らしで大なり小なりストレスにさらされています。「五臓と五志」第2回目のテーマは、そんな感情のコントロールに力を発揮してくれる「肝(かん)」のお話。気持ちを穏やかに保つカギは肝の働きにあるので、ストレスを感じやすい人は特に意識して、肝のケアを心がけてみてください。

精神活動と五臓の関係

前回のコラムでは五臓に宿る五つの感情(五志)についてお話しましたが、中医学では、精神の働きもまた五つに分けられ、それぞれが五臓と深く関係していると考えます。五つの精神活動は「魂・神・意・魄・志」の五神。臓器との関わりは次の通りです。

 

[五臓と五神]
肝=魂(こん):評価、判断をする理性や知恵
心=神(しん):精神活動を統率する要
脾=意(い) :思考、思慮。アイデアを生む原動力
肺=魄(はく):本能、感覚
腎=志(し) :強い意志、信念、根気

 

五神を宿す臓器が正常に働いていれば、それぞれの精神活動も安定します。例えば、「神」の右腕となり“評価、判断”をくだす「魂」は、「肝」に宿っています。そのため、理性的にものごとを判断するためには、肝が健やかに働いていることが大切。ところが、肝はストレスに弱いため、過剰なストレスを受けると機能が低下してしまいます。その結果、イライラして理性を失いがちになり、適切な判断がしにくくなってしまうのです。こうした精神不調を防ぐためにも、体質を積極的に整え、五臓を健やか保つことが大切です。

感情や精神の安定と深く関わる「肝」

五臓の肝は、魂(評価・判断)を司る一方、感情(怒・喜・思・悲・恐)では「怒」を宿しています。そのため、怒ったりイライラしたりすると肝がダメージを受け、反対に肝の働きが弱いと、怒りっぽい、イライラしやすいといった不調が現れやすくなります。こうした精神トラブルは、肝の「疏泄」作用と関係しています。疏泄は、全身に「気(エネルギー)」を巡らせる働きのこと。気がスムーズに流れていると、ストレスも解消され、精神状態も安定します。

 

一方、肝には“のびのびとリラックスした状態”を好むという特徴もあるため、過剰なストレスが続くと肝の疏泄作用が落ちてしまうことも。すると、精神状態が不安定になり、イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込みといった不調が起こりやすくなるのです。

 

また、肝は「血」を貯蔵する臓器で、魂はこの血を拠り所としています。そのため、血が不足すると魂が拠り所を失い、理性や判断力が低下してしまうことも。その結果、過剰に恐怖を感じる“怖がり”な精神状態になることもあります。
このように、肝はさまざまな面で感情や精神状態と関わっていて、“ココロの健康は肝の健康から”といっても過言ではないほど。なにかと抱えがちなストレスと上手に付き合い、精神を安定させるためにも、日頃のケアで肝の働きをしっかり守りましょう。

“のびのびリラックス”が「肝」ケアの秘訣

肝はストレスをコントロールしてくれますが、その分、ストレスが過剰になると負担も大きくなります。肝の機能低下を防ぐためにも、食事や生活習慣気配りで肝をきちんとケアしましょう。

 

【肝が弱いときの症状】
[精神症状]
イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込み(うつ気分)、怖がり
[身体症状]
ため息が多い、乳房の張り・痛み、肋骨あたりの張り・痛み、腹部の膨満感、頭痛、めまい、耳鳴り、ドライアイ、生理不順

 

【養生ポイント】
●Point. 1
日々のストレスはこまめに解消し、肝の負担を減らしましょう。ハーブティーやアロマテラピーなど、香りでリラックスするのもおすすめ。
[おすすめのお茶]玫瑰花茶、金柑と山楂子茶

 

●Point. 2
春は肝の働きが活発になる季節。暖かくなったら、
・早寝早起き
・散歩やウオーキング (できれば自然の多い場所で)
を心がけて。自然の陽気を浴びて、体内の陽気も充実させましょう。

●Point. 3
春の食養生は「辛味」「甘味」の食材を積極的に。「酸味」は控えめを心がけて。
注:酸味には収斂作用があります。酸味は肝を養いますが、春は特に“のびのび”させたい時期なので取りすぎに気をつけましょう。

 

【おすすめ食材】
ゆり根、大根、香菜、玉ねぎ、春菊、セロリ、山菜類、ほうれん草、なつめ、いちご、仏手柑(ぶしゅかん) など

 

【肝に効くツボ】
肝兪(かんゆ):肝臓の背部
期門(きもん):乳頭からまっすぐ下がった肋骨の下端

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。