〜カラダとココロの深い関係〜 五臓と五志 「心(しん)」編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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〜カラダとココロの深い関係〜
五臓と五志 「心(しん)」編

2024.01.02 UPDATE

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.14

落ち込んで食欲がなくなったり、緊張で胃がキリキリしたり……。そんな経験に、多くの人は心当たりがあると思います。“心身一如(しんしんいちにょ)”と言われるように、ココロとカラダは一つにつながっているもの。その関係を知れば、心身を健やかに保つヒントにもなります。今回からのテーマは「五臓と五志」。第一回は、精神活動の要ともなる「心(しん)」についてお話します。

五臓は感情を宿す

中医学の基本となる五行説では、“五臓は感情を宿している”と考えます。これは、五臓に不調があれば感情に現れ、また感情が乱れれば五臓が影響を受けるということ。それぞれの臓器が宿す感情は次の通りです。

 

【五臓と五志】
肝=怒(怒り、イライラ)
心=喜(喜び)
脾=思(物思い、憂い)
肺=悲(悲しみ)
腎=恐(恐れ、驚き)

 

そのため、例えば過剰なストレスでイライラしていると、「肝」がダメージを受けて「気(エネルギー)」の巡りが停滞しがちに。反対に、肝が弱っているとストレスにうまく対処できず、よけいにイライラしてしまうこともあります。このように、感情と身体の状態は深く関わり合っているもの。心身を健やかに保つためにも、その特徴を知って不調のケアに上手に生かしていきましょう。

五行配当表

「心」は精神をコントロールする要

五臓の「心」は、“神を主る”臓器。神は広く精神活動のことで、人の意識、また五臓に宿る全ての感情(怒・喜・思・悲・恐)も、根本は心がコントロールしていると考えます。まさに、人の“こころ”の働きそのものです。そのため、心の働きが弱くなると、精神が不安定になったり、不眠の症状が現れたりするようになります。

 

一方、心と特に関わりが深いのは「喜び」の感情。気持ちが明るく、穏やかに喜んでいる状態が心にとってはベストで、精神もリラックスします。ところが、喜びは大きすぎても問題に。過剰な喜びで興奮してしまうと、心がダメージを受けて精神が不安定になってしまうのです。
中国には、そんな心の状態をわかりやすく伝える「范進中挙」という物語があり、だれもがそのお話から学ぶのだそう。ちょっと興味深いので、要旨をご紹介します。

 

『范進中挙はこんなお話』
科挙(隋〜清代の官僚試験)の合格を目指す人々の悲喜こもごも描く、中国清代の小説「儒林外史(呉敬梓 作)」の一場面。
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貧しくも優秀だった范進は、54歳までに二十数回も科挙(古代中国で行われた、官僚になるための試験。)を受け続けたが、すべて不合格。再び迎えた試験では受験の費用が足りなかったものの、友人や近所の人々の援助でなんとか行くことができた。受験後は米を買うお金さえなく落ち込む日々だったが、そんな折、科挙で7位に入賞したことを知る。すると、范進は興奮のあまりついに発狂してしまった(大喜傷心)。それを見た義父は、范進の頬を平手で強く叩く。范進は驚きと恐怖で気絶してしまったが、しばらくすると落ち着いて目覚めた(恐勝喜)。
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喜びは良い感情だけれど、大きすぎても心のダメージになる、ということを表すエピソードです。日常生活では、それほど喜べることがあるなら嬉しい限りですが、あまり興奮しすぎないよう、少し気をつけたいものですね。

“恬淡虚無”の境地で「心」を健やかに

心の働きを整えることは、精神を安定させる基本ともいえます。心身の疲れ、不眠などの症状がある人は心が弱っているサインと考え、積極的にケアしましょう。

 

【心が弱いときの症状】
動悸、息入れ、倦怠感、精神疲労、不眠

 

【ケアの基本】
●Point. 1
心を静め、寛容で、欲は少なく(恬淡虚無)。
なかなか難しいことですが、心を落ち着かせ、リラックスモードで過ごすことを心がけて。

 

●Point. 2
“汗は心の液”といわれ、たくさん汗をかくと心に負担がかかります。夏の時期は、特に汗のかきすぎに注意しましょう。

 

【おすすめ食材】
棗、ゆり根、竜眼肉、れんこん、豚や鶏のハツ、小麦、卵 など

【心に効くツボ】
百会:左右の耳の上から結んだ線の中央
印堂:眉間の中央、少しくぼんだところ
心兪:背骨と肩甲骨の間。肩甲骨の下から1/3、背骨から指2本分くらいのところ
神門:手首の内側、小指の下。手首をそらすとくぼむところ

心に効くツボ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。