家庭で役立つ中医学 胃腸トラブル編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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家庭で役立つ中医学
胃腸トラブル編

2023.08.15 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

つい食べ過ぎたり飲み過ぎたり、仕事や人間関係でストレスを抱えたり……。そんな日々のダメージを受けて、胃腸はなにかとトラブルを起こしがち。病院に行くほどでもないけれど、胃もたれや胃痛、食欲不振、便秘といった不調に悩まされている人は多いと思います。そこで今回の「家庭で役立つ中医学」では、胃腸トラブルの対処法についてご紹介します。夏は食欲不振や食中毒などを起こしやすい時期。夏バテしないためにも、きちんとケアして胃腸を元気に保ちましょう

「脾胃」は“冷え”と“湿気”に弱い臓器

中医学では、胃腸にあたる臓器を「脾(ひ)」「胃」と捉えます。脾は栄養や水分を吸収して「気・血・津液(しんえき)」を生み出し、全身に運ぶ臓器。また、胃は食べ物を消化する働きを担っています。これらの働きが正常であれば、身体にバランスよく気・血・津液が行き渡り、元気で免疫力も高い状態に。反対に脾胃の働きが弱くなると、気・血の不足、「痰湿(余分な水分や汚れ)」の停滞などが起こり、疲労感、貧血、むくみ、免疫力の低下といった不調を招いてしまいます。また、胃腸の元気もなくなるため、食欲不振、胃もたれ、腹痛、下痢などのトラブルも起こりやすくなるのです。
脾胃は、“冷え”と“湿気”に弱い臓器。そのため、湿度が高く、冷たい飲食が増える夏の時期は、脾胃がダメージを受けて不調を起こしやすくなります。細菌やウイルスの増加による食中毒も心配なので、胃腸が弱っているなと感じたら早めのケアで不調を改善しましょう。

【症状別対策】食欲がない(胃の不快感・痛み)

「脾胃のエネルギー不足」タイプ
脾胃のエネルギーとなる「気」が不足して、食欲が落ちているタイプ。食欲不振のほか、疲労・倦怠感、痩せる、胃がしくしくと痛む、吐き気、軟便、下痢、舌の色が淡く歯痕がつくなどの症状が現れます。気を養う食材を積極的に取って、脾胃の元気を取り戻しましょう。
【 おすすめ食材 】
長芋、大和芋、さつま芋、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、大豆、鶏肉、卵、なつめ、蓮の実 など
「湿の停滞」タイプ
「湿(余分や水分や汚れ)」が溜まり、脾胃の機能が落ちているタイプ。食欲不振のほか、胃のつかえ、生唾が出る、軟便・下利気味、むくみ、尿が少ない、舌苔が厚くベタつくなどの症状が現れます。利水作用のある食材で溜まった湿を取り除き、水分の取り過ぎにも注意しましょう。
【 おすすめ食材 】
粟、はと麦、とうもろこし、冬瓜、枝豆、いんげん、緑豆、春雨、もやし、とうもろこしの髭 など
「気の停滞」タイプ
過剰なストレスなどで「気」の巡りが停滞し、脾胃の不調を招いているタイプ。食欲不振のほか、胃痛、お腹の張り、ゲップやガスが多い、のどの詰まり、イライラ、怒りっぽいなどの症状が現れます。香りの良いものでストレスを発散させ、気の巡りをスムーズに整えましょう。
【 おすすめ食材 】
春菊、セロリ、パプリカ、赤しそ、香菜、柑橘類、陳皮、ミント、バラ、たこ、いか、あさり など
「食べ過ぎ」タイプ
食べ過ぎ飲み過ぎで、脾胃が疲れているタイプ。一時的な食欲不振で、胃の膨満感、舌苔が厚くベタつくなどの症状が現れます。消化を促し、脾胃の働きを整えることを心がけて。
【 おすすめ食材 】
そば、粟、大根、ごぼう、ちんげん菜、きゅうり、海藻類、春雨、もやし、山楂子、麦芽 など

【症状別対策】お腹が痛い(軟便・下痢/便秘)

[症状別対策]下痢:
「脾胃の陽気不足」タイプ
「陽気(体を温めるエネルギー)」が不足して脾胃が冷え、不調を起こしているタイプ。腹痛のほか、食欲不振、食後に下痢をしやすい、痩せる、疲労感、舌が太く色が淡い、舌苔が白いなどの症状が現れます。体を温める食材を積極的に取り、脾胃の冷えを改善しましょう。
【 おすすめ食材 】
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、にんにく、シナモン、山椒、八角、茴香 など
「腎の陽気不足」タイプ
全ての臓器の根本を支える「腎」の「陽気(体を温めるエネルギー)」が不足しているタイプ。腹痛のほか、冷え症、明け方に下痢をしやすい、足腰がだるい、むくみ、舌が太く色が淡い、舌苔が白いなどの症状が現れます。腎の働きを強くして、陽気を養うことを心がけましょう。
【 おすすめ食材 】
「脾胃の陽気不足」の食材を基本に、黒豆、にら、えび、くるみ など
このほか、暴飲暴食で腹痛を起こしている場合は、“食欲がない”ときの「食べ過ぎ」タイプを参考に。
[症状別対策]便秘:
「過剰な熱」タイプ
体内に過剰な熱がこもり、便が乾いてしまうタイプ。便秘のほか、お腹の張り・痛み、口臭、舌が紅い、舌苔が黄色く乾燥しているなどの症状が現れます。冷性の食材を積極的に取り、体の熱を冷まして通便を良くしましょう。
【 おすすめ食材 】
そば、粟、大根、きゅうり、苦瓜、海藻類、緑豆、春雨 など
「体の乾燥」タイプ
体内の潤い不足で腸が乾燥し、便秘を起こしているタイプ。便秘のほか、硬いコロコロの便、口臭、舌が紅く舌苔が少ないなどの症状が現れます。体の潤いをしっかり養い、腸の乾燥を改善することを心がけましょう。
【 おすすめ食材 】
ヨーグルト、はちみつ、バナナ、桃、ひじき、小松菜、ほうれん草、松の実、プルーン、いちじく、ごま など
このほか、下記のような原因も。
・お腹の張りが強くガスが多いときは「気の停滞」
・冷え症で腹痛、頻尿などがあるときは「陽気不足」
それぞれ“食欲がない”ときの「気の停滞」タイプ、「脾胃の陽気不足」「腎の陽気不足」タイプを参考にしてください。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。