監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.6
“美肌は夜つくられる”“寝ないと老ける”……。女性なら、一度はそんな言葉を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。こうした説にはきちんと理由があって、キレイをキープするためには睡眠はとても大切なもの。寝つきが悪い、眠りが浅い、といった「不眠」の症状を感じている人は、しっかりケアをして睡眠の質を高めましょう。
精神トラブルが「不眠」を招く
睡眠と美容に深い関係がある理由は、美肌を保つ上で欠かせない2つのホルモン(成長ホルモン、睡眠ホルモン)が、夜の睡眠中に分泌されているから。成長ホルモンは肌のターンオーバーを促し、日中に受けた紫外線などのダメージを修復してくれます。また、睡眠ホルモン(主にメラトニン)には強い抗酸化作用があり、肌の老化を緩やかにする働きも。そのため「不眠」で十分に睡眠が取れないと、ターンオーバーが乱れ、老化も進みやすくなり、肌荒れやシミ、くすみといった不調が起こりやすくなるのです。不眠を招く主な要因は、ストレスや過労、精神的な刺激など。中医学でも、不眠は精神の乱れから起こる症状とされ、次のような体内の不調が精神状態の悪化につながると考えます。
【精神トラブルを招く体内の不調】
・陽虚(体のエネルギー不足)
・陰虚(体の潤い不足)
・血虚(体の栄養不足)
・肝うつ(気の巡りの停滞)
・痰熱(余分な水分・汚れの停滞による熱)
こうした体質は、精神活動やストレスをコントロールする「心」「肝」の機能低下につながります。その結果、不安感、憂うつ、イライラといった精神トラブルを起こし、不眠を招きやすくなるのです。また、質の良い睡眠を取るためには、体内の「陰陽」バランスが保たれていることが大切。そのため、上記のような陰陽バランスの崩れた体質になると、睡眠の質が落ちてしまうのです。
「不眠」の主な症状
・寝つきが悪い
・眠りが浅く、夢が多い
・夜中に何度も目が覚める
・早朝に目が覚める
簡単! 不眠対策の“つぼ押しケア”
ツボ押しのポイントは、“いた気持ちいい”と感じるくらいの強さでゆっくり押すこと(3〜5回程度)。強すぎず・多すぎず、“ちょうどいい”と感じる程度のケアを心がけましょう。
【不眠に効くツボ】
神門(手首のしわの小指側端、手首をそらすとくぼむところ)
四神聰(頭頂部の前後左右指1本外側)
【タイプ別・体質改善のツボ】
下記のタイプ別症状から、自分の体質をチェックしてみて。
〈陽虚タイプ〉
①大椎(だいつい):うつむいた時、首のつけ根でいちばんでてている骨のすぐ下
②命門(めいもん):左右の腎兪の中間、背骨の上、
③腎兪(じんゆ):ウエスト位置、背骨から指2本分外側
④関元(かんげん):へそから指4本分下
⑤神闕(しんけつ):へそ
〈陰虚タイプ〉
⑥印堂(いんどう):陥没している眉間の中央
⑦陰交(いんこう):へそから親指1本分下
⑧志室(ししつ):ウエストの一番細いくびれラインの上
⑨太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間の窪み
⑩復溜(ふくりゅう):内くるぶしから指3本分上
〈血虚タイプ〉
⑪血海(けっかい):ひざの内側、皿から指3本分上
⑫肝兪(かんゆ):肝の背部
⑬脾兪(ひゆ):肝兪から指3本分下
⑭足三里あしさんり):膝の皿の下・外側の窪みから指4本分下
〈肝うつタイプ〉
⑮太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が交わるところの窪み
⑯風池(ふうち):首の付根。後頭骨の下のくぼみ
⑰行間(ぎょうかん):足の甲にある親指と人差し指の間
⑱侠渓(きょうけい):足の甲の薬指と小指の間
⑫肝兪(かんゆ):肝の背部
〈痰熱タイプ〉
⑲豊隆(ほうりゅう):すねのやや外側、足首と膝の中間
⑳上脘(じょうかん):へその指幅5本分上
㉑曲池(きょくち):ひじを曲げた時にできる、シワの終わるところ
㉒内関(ないかん):腕の内側、手首から指3本分上
体質ケアで睡眠の質をアップ
“ぐっすり快眠”は美容と健康のカギ。日々の食事から体内の不調を改善して、不眠や精神トラブルを起こしにくい体質をめざしましょう。
陽虚タイプ
冷え、むくみ、腹痛、生理痛などの症状が現れます。
[おすすめ食材]
しょうが、にら、ねぎ、羊肉、シナモン、フェンネル、クローブ、くるみ、紅茶 など
陰虚タイプ
冷のぼせ、寝汗、目の乾燥、のどや口の渇き、コロコロ便などの症状が現れます。
[おすすめ食材]
白きくらげ、ゆり根、山芋、セロリ、黒ごま、すっぽん、梨、枸杞の実、マルベリー など
血虚タイプ
女性に多く、精神疲労、動悸、めまい、肌や髪のカサつき、抜け毛などの症状が現れます。
[おすすめ食材]
レバー、烏骨鶏、プルーン、にんじん、ほうれん草、龍眼肉、棗、枸杞の実、紅茶、玄米茶 など
肝うつタイプ
イライラ、怒りっぽい、目の充血、口の乾き、尿の色が濃い、便秘気味などの症状が現れます。
[おすすめ食材]
冬瓜、苦瓜、緑豆、あずき、たけのこ、セロリ、菊花、スベリヒユ、バラ茶、緑茶 など
痰熱タイプ
過食気味な人に多く、頭重、めまい、むくみ、胸が重苦しい、吐き気、痰が多いなどの症状が現れます。
[おすすめ食材]
はと麦、いんげん、山芋、冬瓜、海藻類、緑豆、山査子、陳皮(みかんの皮)、どくだみ茶 など
この記事を監修された先生
中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。