監修:楊 敏 先生(中医学講師)
長い妊娠期間を経て、念願の出産を迎えた後、お母さんは消耗した身体を十分に回復させる必要があります。産後の速やかな回復は、その後の健康維持のためにとても重要です。
中国では、産後の養生を「坐月子」(ツオユエズ)といい、産後1ヵ月は冷たい水を触らない、冷房・冷気を避けて温かくし、産後直後は洗髪もしないなど、昔から伝わる多くの養生法が今でも大切にされています。
中医学では、出産は赤ちゃんの他にも、出血や胎盤の娩出(後産)なども含め、身体の中のいらないものが体外へと出ていくと考えます。まずは失った気血を補うことが養生の基本となります。
【産後の注意点】
(1)冷たい飲食物を避ける。冷風冷気を避けて保温に心がける。
(2)活血・補気・補血の食材を取り入れて子宮と身体全体の回復を促す。
(3)過労・PCやスマートフォンの見過ぎ(眼の過労)・睡眠不足を避ける。
(4)周りの人の手を借りてゆっくりする時間を作り、ストレスをうまく発散する。
(5)授乳中の酒・たばこはもちろんNG。
(6)授乳2時間前からカフェイン飲料を飲むのはNG。
(7)新生児がいる部屋でアロマ(精油)を使うのはNG。アロマで気分転換するときは別室で。
(8)赤ちゃんと同じように、自分をやさしく労わってあげましょう。
ここからは産後のお悩み別に養生をお伝えしていきます。
産後のお悩み(1)なかなか終わらない悪露
【考えられる原因】
出産による「気虚」(エネルギー不足)、「瘀血(おけつ)」(血行不良)
補気・活血(エネルギーを補って血を巡らせる)
産後のお悩み(2)乳汁不足
母乳のもとになる気と血の不足による「気血不足」
健脾・益気・補血(脾を健やかにし、気を充実され、血を補う)
豚足のスープ
産後のお悩み(3)乳腺炎
乳汁が出ないことで熱毒が鬱滞し「痰熱(たんねつ)」となって乳腺を塞ぐために起こる炎症。
清熱・利湿・通絡(余分な熱を冷まし、湿を取り除き、乳腺の通りを良くする)
産後のお悩み(4) 汗をだらだらかく
汗とともに気が体外に出て「気虚」を招き、「気虚」が進行して汗が止まりにくくなっている状態。
健脾・益気(脾を健やかにして気を充実させる)
五味子茶
産後のお悩み(5)産後うつ
妊娠・出産・育児による心身疲労が重なって自律神経が失調した「肝欝気滞(かんうつきたい)」
疎肝・理気(肝の巡りを良くして気の滞りを緩和する)
その他、便秘もよくあるお悩みの一つです。
対策・養生については、前回の「妊娠中の養生・便秘」をご覧ください。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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