監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン Vol.66
10月の節気(※)は「寒露」と「霜降(そうこう)」。露が冷たく感じられ、山里では少しずつ霜が降り始めます。澄んだ夜空には月が明るく浮かび、ほんのりとキンモクセイが香る、そんな秋本番の季節です。この時期は涼しく過ごしやすい日が続きますが、一方で空気の乾燥も本格的に。髪がパサつき「枝毛」も目立ちやすくなるため、しっかり対策をして潤いヘアを保ちましょう。
※二十四節気:1年の気候変化を24に分けて表したもの
どうして「枝毛」になるの?
「枝毛」は、髪が傷んで毛先が裂けてしまう状態のこと。毛髪は主に3つの層で成り立っていて、芯となる「メデュラ(毛髄質)」を「コルテックス(毛皮質)」が覆い、一番外側を「キューティクル(毛小皮)」が包み込んでいます。髪がダメージを受けるとこのキューティクルがはがれ、コルテックスに含まれる水分やタンパク質(ケラチン)が流出し、パサついて枝毛になるのです。また、皮脂の少ない乾燥肌の人も、髪の潤い不足から枝毛ができやすくなります。枝毛は一度できてしまうと修復することはできませんが、放置すると毛先がパサついて、見た目の印象が悪くなってしまうことも。体の中からしっかり保湿をすればパサつきは改善できるので、諦めずにケアすることが大切です。
「肝血不足」「腎精の虚弱」が髪の乾燥を招く
中医美容学では、髪と体の状態は密接に関わっている考えます。例えば「髪は血の余り」という言葉がありますが、これは全身に「血」が十分行き渡り、その余りが髪に届けられるということ。つまり、十分な血があれば髪にも栄養や潤いがしっかり届き、健康な状態が保たれるというわけです。
また「髪は腎の華」とも言われ、生命力や潤いの源となる「腎」が元気であれば、抜け毛や白髪も少なく髪も良い状態が保たれるとされています。
反対に、血不足や腎の虚弱といった不調があると、髪の栄養や潤いも不足して、パサつきや枝毛などのトラブルが起こりやすくなるのです。
このように、髪の状態には体内の不調も影響しているため、枝毛を予防、改善するためにはヘアケアと合わせて体質を整えることも大切です。
乾燥体質を改善し、潤いのある髪に
中医学では「肝蔵血」(肝は血液を貯蔵する)と「腎蔵精」(腎は親から受継いだ生命力などの源の精を貯蔵する)と言われ、「肝」と「腎」の働きが弱っている「肝腎不足」の状態は、「精血不足」で髪のトラブルを招きやすい体質です。枝毛が気になる人は肝腎に不調があるサインと考え、積極的に改善しましょう。
【 肝腎不足(精血不足)の体質チェック 】
3つ以上、当てはまる症状がある人は肝腎不足と考えて。弱った肝腎を整え、精・血をしっかり養いましょう。
□めまい、貧血、爪が割れやすい
□肌の乾燥やシワができやすい
□脱毛など髪のトラブルが気になる
□ドライアイ、目のかすみ
□疲れやすい、夕方は特に疲れやすい
□月経不順、血の色が薄く量は少ない
□腰やひざが重だるい
□妊娠しにくい
□集中力や記憶力の低下
□足がつりやすい
[おすすめ食材]
肝と腎を補い、血を養う「黒色」「赤色」の食材を意識して。女性は月経で血不足を招きやすいので、積極的に血を養いましょう。
●肝腎を補い、血を養う食材
肉類、クコの実、なつめ、トマト、黒豆、黒ごま、ひじき、ほうれん草、山芋、ナッツ類 オリーブオイル、アボカド など
●髪の主成分「ケラチン」を多く含む食材
手羽先、牛すじ、豚足、すっぽん、フカヒレ など
[おすすめ生薬]
沙棘(サージ)、五行草、亀板(きばん)、鼈甲(べっこう)、鹿角(ろっかく) 、阿膠(あきょう)、枸杞子、当帰 など
[暮らしの養生]
・過労や睡眠不足は腎の負担に。無理をせず、十分な睡眠で疲れを取りましょう。
・目を酷使すると血の消耗につながります。スマホの使い過ぎには気をつけて。
中医美容の潤いヘアケア
枝毛ができやすい人は、乾燥肌で頭皮の潤いが足りないことも。髪の潤い補給と合わせて、頭皮もきちんとケアしましょう。
【 頭皮&ヘアケアのポイント】
●頭皮ケア
・洗い過ぎはNG。乾燥肌の人は2〜3日に1回を目安に、毎日洗いたい人はシャンプーを使う頻度を減らすなどの工夫をしましょう。
・頭皮を指の腹で押すようにマッサージ。血行が促されて頭皮の環境が良くなり、健やかな髪づくりにつながります。
●ヘアケア
・少量のオイルを髪につけてトリートメント。キューティクルを保護して、髪の潤いを守ります。乾燥肌の人は頭皮につけても大丈夫。オリーブオイルやティーツリーオイルなど、シンプルな天然のオイルがおすすめです。
☆シャンプーなどの成分は、髪と頭皮に潤いや栄養を与えるものを選んで。
[おすすめ商品]
[おすすめ生薬]
沙棘、高麗人参、当帰、紫根、地楡(ちゆ)、五行草、旱蓮草(かんれんそう) など
【髪のダメージ対策 】
1.熱:
ドライヤーの温度は120〜140℃を目安に。熱よりも強い風量で乾かすのがおすすめです。
2.摩擦:
髪のこすり洗いや過度なブラッシングはNG。ブラッシングの際は、ヘアミストなどで湿らせて。
3.乾燥:
濡れたまま放置すると、髪の水分が蒸発して乾燥の要因に。ドライヤーで乾かし、オイルなどでケアしましょう。
4.紫外線:
春から夏の外出時は帽子や日傘を習慣に。強い紫外線から髪を守りましょう。
5.薬剤:
カラーリングやパーマは頻度を少なめに。薬剤は髪にやさしいものを選んで。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など