監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスンvol.11
美しい髪は【腎・肝・肺】の養生から
「髪は女の命」といわれるように、美しい毛髪を保つことは、多くの女性にとって重要な関心事です。おしゃれを楽しむためのカラーリングやパーマは枝毛やパサつきを招く要因になりますし、体調によっても髪質は変化します。若白髪や薄毛に悩む人も多いようです。腎・肝・肺の養生から始める中医美容で、根本解決を図りましょう。
海藻よりも動物性タンパク質
美しい髪を称える日本語に「緑の黒髪」というものがあります。ここでいう「緑」とは、色のことではなく、生命力に満ちたイキイキとした状態を指しますが、理想的な髪の毛とはまさに、黒くてツヤがあり、滑らかでいて弾力に富み、そして適度のボリュームがあること。つまり健康な状態であることが美しさの条件なのです。
髪の毛の健康を維持するには、しっかりと栄養補給することです。「毛髪には海藻」と思っている人も少なくありませんが、海藻が育毛や養毛にいいという科学的な根拠はありません。もちろん、海藻に含まれるビタミンやミネラルは重要な栄養素ですが、むしろ、髪の毛の構成要素である動物性タンパク質を補給することが肝要です。特に、育毛の要ともいわれる毛乳頭が栄養不足になると一大事。ここに炎症や萎縮が起こると、抜け毛やパサつきの要因になります。肉や卵などを積極的にとるようにしましょう。
ストレスも美髪の大敵
髪の毛の質は体内変化によって左右されます。中医学では特に、五臓の腎、肝、肺が毛髪に深く関与していると考えています。
【腎】
腎は、発育と生殖を司っており、その盛衰が発育と老化に大きく関わっています。「髪は腎の華」ともいわれ、腎虚(じんきょ:腎機能の低下)になれば白髪やパサつき、抜け毛などを招きます。
腎の周期は、女性は7の倍数、男性は8の倍数で変化するとされています。女性は7×5=35歳くらいから、男性は8×5=40歳くらいから髪の毛が抜けやすくなり、それぞれ42歳、48歳くらいから白髪が増えてくるというわけです。腎虚には補腎(ほじん:腎を強化すること)。補腎は、アンチエイジングにもなり、加齢による白髪や脱毛を遅らせることにもつながります。補腎効果のある食材は、肉や牛乳、七味唐辛子、ワカメ、アボカド、黒豆、胡麻、胡桃、アーモンド、黒豆などです。
【肝】
髪は「血余(けつよ)」ともいわれることから、血を貯蔵する肝も毛髪に大きな影響力を持っています。ところが、自律神経系を司るこの肝は、ストレスにとても弱いのです。このような状態を肝鬱(かんうつ)といいます。
ショッキングな出来事に遭遇して、一晩で白髪になったり、思い悩む日々が続いて円形脱毛症になったりするのは肝鬱によるものです。肝の養生には、リラックスすることと、肝の血を養うこと。食材では、レバーやドライフルーツ、落花生、小豆、人参がいいでしょう。生薬では当帰(とうき)が補血代表格です。ストレスを感じているときには、紫蘇など香りのいい野菜や酸味のあるグレープフルーツ、レモン、スモモ、キウイフルーツなどが効果を発揮します。
【肺】
皮毛を司る肺には、「薫肌(肌を潤す)、充身(体を壮健にする)、沢毛(髪の毛のツヤを出す)」の働きがあります。肺の機能が低下すると、栄養分が全身にまわらず、髪の毛が細くなったりパサついたりするのです。肺の機能を高める食材は牛乳やキノコ、松の実、手羽先、豚足、ウナギ、ココナツミルクなどがおすすめです。
髪の毛はアンモニアやアルカリ類などの刺激物にも弱いため高濃度のアルコール入りローションをよく使う人は白髪になりやすいと言われています。アルカリ性のシャンプーは洗う時間を短めに、よくすすぐようにしましょう。
中医美容術 ~髪質に応じた漢方リンスで髪養生法~
髪の毛の質は一般的に、中性、脂性、乾燥性の3タイプに分けられます。
それぞれのタイプ別、「漢方リンス」のつくり方を別記しました。
毛髪の状態にもよりますが、月に一度のトリートメントで美しい髪の毛を保つことができます。ぜひご自宅でお試しくださいね。
【②で使用しているスベリヒユと玫瑰花(まいかいか)について】
・スベリヒユは日本名で、茎は赤く葉は肉厚の植物で、おひたしなどにして食べる地域もあります。中医学では「五行草(ごぎょうそう)」という名で親しまれている生薬で、肌トラブルの原因となる熱邪(ねつじゃ)などを解毒します。
・玫瑰花(まいかいか)はレストランでお茶として出されることもあり、バラ科のハマナスの蕾を乾燥させたもので色はピンクから赤色です。気血を巡らせる生薬でもあり、ストレスによる腹痛をやわらげたり、生理不順をととのえてくれます。
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この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など