月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は、月経3~10日ぐらい前に精神的・肉体的に様々な症状が現れ、月経がはじまると軽減、または消失する女性特有のお悩み。イライラ、急に悲しくなる、むくみ、過食など、症状に個人差はありますが、重くなると仕事や日常生活に支障をきたすことも…今回は、女性のお悩みに多いPMSについて症状別の予防・改善法をお届けします。
PMSに対する中医学的な考え
月経周期は女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の変化と深く関係します。中医学では、性ホルモンを支える物質的なものを「精・血」と捉えますが、性ホルモンをバランス良く動かすのは、「女性の先天」と言われる「肝(かん)」の働きです。
「肝」は自律神経のバランスや性ホルモンのバランスをコントロールしていますが、実はストレスにとても敏感に反応する臓。
肝がストレスやプレッシャーによって上手く働かなくなると、気の流れは悪くなり、性ホルモンのバランスが崩れ、PMSを引き起こしやすくなるのです。さらに水分や血を動かす「気」が滞ると、血の流れや水の代謝にも影響を与え、様々な症状となって現れます。
PMS症状別のセルフチェック
PMSの症状はさまざま、また症状の重さは人によっても異なります。まずは、下の表で自分がどのような症状が出やすいのかセルフチェック。チェックが多いほど、症状が重い状態です。これから3つのタイプに分けて養生法をお伝えするので、ぜひ参考にして自分に合った対策を取り入れてくださいね。
【セルフチェック】
●精神面
□急に悲しくなる
□憂鬱不安、苛立ち
□怒りっぽい、家族に八つ当たりする
□やる気がない
□集中力がない
□仕事や家事がはかどらない
□夜にぐっすり眠れない
●肉体面
□体がだるい
□頭痛、肩こり
□胸が張る、乳首が痛い
□むくみ
□肌荒れ
□腹部の痛みや不快感
□便秘または下痢
□食欲不振または過食
(1)精神的な症状が多いタイプ
【気になる症状】
月経が近くなると情緒が激変する、急に悲しくて泣き出しそうになる、憂鬱・不安または苛立ち、怒りっぽくなり人に八つ当たりする、胸が張る、乳首が痛い、腹部が張ってガスが溜まりやすい、便秘、頭痛、肩こり、肌荒れ、集中力がない、夜に眠れない など
【考えられる原因】
「肝失疏泄(かんしつそせつ)」・「気滞瘀血(きたいおけつ)」
肝がうまく疏泄できずに気が滞り、気分が落ち込みやすい状態。また、情緒不安定で感情が爆発しやすい。気の滞りは血の流れにも影響するので、瘀血(血行不良)の状態にもなりやすい。
【予防・改善法】
●疎肝・理気・活血の食材を取り入れる
春菊、三つ葉、セロリ、みょうが、バジル、玉ねぎ、ニラ、イカ、タコ、あさり、しじみ、黒きくらげ、オレンジ、みかん、グレープフルーツ、柚、ミント、バラ、陳皮(乾燥したみかんの皮)、ラベンダー、カモミール、クチナシ、サフラン、ウコン など
●おすすめレシピ
・気の流れを改善し、気持ちを落ち着かせる「ミントとバラのお茶」
憂鬱・不安、苛立ち、怒りっぽい、胸が張る、乳首が痛いときに。カフェイン含有量の多いコーヒーの代わりにするのもおすすめ。
・気と血の流れを促す「イカ、タコ、あさりのサフランパエリア」
頭痛・肩こりに。
頑張り屋さんやまじめな方に多いタイプ。月経前は、仕事や生活のスピードを少し落とし、無理せずにゆとりあるリラックスした時間を過ごしましょう。
(2)むくみタイプ
【気になる症状】
月経が近づくとむくみやすくなる、体が重だるい、やる気がない、排尿がスッキリしない、軟便・下痢になりやすい など
【考えられる原因】
●気滞水停(きたいすいてい)
気が滞ると、水分代謝に影響し水が体内に滞留しやすくなる。
【予防・改善法】
●理気・利水の食材を取り入れる
しょうが、玉ねぎ、ねぎ、らっきょう、とうもろこし、冬瓜、白菜、大根、枝豆、空豆、インゲン、小豆、大豆、黒豆、緑豆もやし、春雨、ハマグリ、スズキ、はとむぎ、烏龍茶、プーアール茶 など
●おすすめレシピ
・利水作用のある「大根・春雨・とうもろこしのサラダ」
むくみ、体が重だるいときに。
・気を補い、利水作用もある「スズキのソテー、空豆添え」
やる気がでないときに。
・利水作用の高い「黒豆とハトムギのお茶」
排尿がスッキリしないときに。
飲み過ぎの人、あまり汗をかかない人に多いタイプ。水分など飲み物の摂りすぎを避け、塩分を控えめに。また、適度な運動を行い、発汗を促して新陳代謝を高めましょう。
(3)胃腸の症状が多いタイプ
【気になる症状】
月経が近くなると食欲が急に増加、甘いものを無性に食べたくなる、または食欲不振、吐き気、体がだるい、やる気がでない、便秘または軟便下痢しやすい など
【考えられる原因】
●肝失疏泄(かんしつそせつ)・肝欝乗土(かんうつじょうど)
肝の疏泄機能の異常により肝に熱が発生して、五行説の相克関係にある「脾胃」(消化器系)の消化機能がダメージをうけた状態。
【予防・改善法】
●疎肝・理気・健脾・助運の食材を取り入れる
ねぎ、しょうが、苦瓜、玉ねぎ、山芋、長芋、じゃがいも、にんじん、キャベツ、アスパラガス、ブロッコリー、鶏肉、うなぎ、さんま、にしん、かつお、さわら、まぐろ など
●おすすめレシピ
・肝の熱を冷ます「苦瓜とにんじんの炒め物」
過食タイプさんに。
・食物線維が多く、腸のぜんどう運動を促す「玉ねぎ、にら、もやしの炒め物」
腹部の張り、便秘に。
・胃腸に優しい「鶏肉、長芋、にんじんの煮物」
食欲不振、吐き気、軟便下痢に。
普段から胃腸の弱い人がなりやすいタイプ。暴飲暴食、冷飲冷食、偏食、無理なダイエットを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
※上記3つのタイプを兼ねる場合もあります。
【気と血の流れを良くしてPMSを緩和できるツボ】
・合谷(ごうこく):手の甲、人差し指の骨のキワ
・太衝(たいしょう):足の甲、親指と第二指の骨が接する付け根