監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン Vol.64
8月の節気(※)は「立秋」と「処暑」。暦の上では秋を迎え、朝夕には涼やかな風が吹き始めます。夕暮れ時、夏の終わりを告げるかようなひぐらしの声に、少し寂しさを覚える季節です。一方、日中の暑さはまだ厳しく、汗っかきの人にとってはつらい時期が続くことに。特に脇の汗は臭いや汗染みなど何かと気になりがちなので、体質から整える脇汗ケアで不快な症状をやわらげましょう。
※二十四節気:1年の気候変化を24に分けて表したもの
発汗の基礎知識
発汗の主な役割は、上昇した体温を下げて一定に保つこと(温熱性発汗)。そのほか、緊張したときにかく汗(精神性発汗)、辛いものなどを食べたときにかく汗(味覚性発汗)もあります。
また、汗を分泌する汗腺にも種類があり、その一つは全身に分布する「エクリン腺」。体温調節の汗はここから分泌され、色も臭いもほぼありません。もう一つは脇の下や耳裏などに分布する「アポクリン腺」で、こちらは毛根に開口部があるため、汗に脂質やアンモニアなど臭いの元となる成分を多く含みます。色は乳白色で、緊張したときなどに出やすい汗です。
こうした自然発汗は老廃物の排泄、肌の保湿といった働きも担っていて、人にとって欠かせないもの。そのため、制汗剤などで無理に汗を抑えることはおすすめできません。
一方、多量の汗、ベタベタ汗などの異常発汗は、臭いや不快感などから日常生活に支障をきたすことも。症状が続くとストレスにもつながるので、きちんとケアすることが大切です。
※大量の発汗は病気が原因の場合も。症状が強い場合は一度病院を受診しましょう。
気になる脇汗は「湿」と「熱」が要因に
中医学では、“汗は「心」の液”と言われます。脇には心と関わる経路(気血の流れる経路)が通っています。暑さのダメージを受けやすい心が、体温を下げて機能を保つために発汗が起こるとされているから。また、心は精神活動とも深く関係しているため、緊張や不安を感じた時にも脇汗をかきやすくなります。
また、“ベタベタと黄色く、臭いが強い脇汗”は、体内に溜まった「湿(余分な水分や汚れ)」や「熱」が要因に。粘りのある湿の影響で汗がベタつき、過剰な熱で発汗が多くなります。このタイプの汗は雑菌が繁殖しやすいため、臭いも強くなるのです。
脇汗の質や量を根本から改善するためには、こうした体内の要因を取り除くことが大切。この機会に自分の身体を見直して、体質をしっかり整えましょう。
脇汗ケアで、残暑の季節を快適に!
夏は汗が多く、肌にもカビ菌や雑菌が繁殖しやすい時期。脇の臭いの要因にもなるので、こまめなケアを心がけましょう。
【 肌にやさしい、中医美容の脇汗ケア 】
(1)脇毛はスッキリお手入れ。
脇毛があると雑菌が繁殖しやすく、臭いの原因に。
(2)脇汗をかいたら、濡れタオルでこまめに拭きましょう。
汗拭きシートを使う場合は、アルコールフリーのものを選んで。
※アルコールは肌に刺激を与えるのでアルコールフリーもしくはアルコール濃度が低いシートがおすすめ。
(3)ミストケアで、肌の常在菌バランスを整えて。
アロマスプレーで3〜4時間おきにミストケアし、雑菌の繁殖を抑えて。
【おすすめ商品】
●おすすめアロマスプレーの作り方
スプレー容器に緑茶100mlを入れ、ラベンダーオイルまたはミントオイルを3~5滴垂らす。
※冷蔵保存で5日程度
※かゆみ、赤み、腫れなどが現れた場合はすぐに中止を。
※肌に炎症などのトラブルがある時は行わないでください。
※本件サイトをご利用になる場合にはお客様自身の判断と責任でご利用をお願いします。
(4)生薬を使った入浴で、肌のデトックスケアを。
生薬配合のボディソープや入浴剤で、肌のカビ菌・雑菌をケア。
【おすすめ商品】
●抗菌殺菌作用のある生薬
五行草、苦参、紫根、ワレモコウ、茵蔯蒿(いんちんこう)、黄柏、山椒、ティーツリーオイル など
体質を整えて、不快な「脇汗」を改善
不快な脇汗の要因は「心熱」と「湿熱」。症状から体質をチェックして、不調の改善を心がけましょう。
●脇汗が多い「心熱旺盛タイプ」
当てはまる症状がある人は、「心」の熱が過剰で、緊張やストレスによる脇汗が出やすいタイプ。身体にこもった余分な熱を冷まし、心の働きを整えましょう。
チェックシート:
□多汗(特に脇と胸)
□緊張しやすく、不安感が多い
□プレッシャーやストレスを感じやすい
□暑がりで寝汗が多い
□睡眠不足、イライラしやすい
□赤ら顔、オイリー肌
□肌の赤みやかゆみが起こりやすい
□口内炎ができやすい
□のどの乾き
□舌先が赤い
【おすすめ食材】
苦瓜、トマト、きゅうり、梅干し、蓮根、蓮の実、牡蛎、百合、山芋、黒豆 など
【おすすめ生薬】
蓮子心(れんししん)、地黄、ロゼア、五味子、刺五加(しごか)、珍珠(ちんじゅ)、山梔子( さんしし)など
【脇汗対策のツボ】
それぞれ20〜30回ずつマッサージ
・然谷:脳の興奮状態を鎮める
・労宮:緊張やストレスを緩和する
●脇汗が黄色く臭いが強い「湿熱タイプ」
当てはまる症状がある人は、身体に「湿」や「熱」が溜まっているタイプ。体内の湿熱を取り除きながら、「脾胃(胃腸)」を整えて水分代謝を良くしましょう。
チェックシート:
□脇汗が黄色っぽくベタつく。臭いが強い
□下腹部や足の付け根にも汗が多い
□むくみ、肥満気味
□頭や身体が重だるい
□髪のベタつき
□湿疹ができやすい
□舌の辺縁に跡がつく
□舌苔が厚い
【おすすめ食材】
豆類、赤豆、緑豆、ごぼう、海藻類、もやし、すいか、はと麦 など
【おすすめ生薬】
五行草、藿香(かっこう)、黄耆、白朮、薏苡仁、茯苓、佩蘭(はいらん)、山梔子 など
【食のポイント】
・冷たい飲食、刺激物などは避け、脾胃に負担をかけないように。
・汗の臭いに影響するので、香りの強い食材は控えめを心がけて。
脇汗対策のツボ位置
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など