監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン Vol.63
7月の節気(※)は「小暑」と「大暑」。梅雨が明け、いよいよ夏本番の到来です。青空にはもくもくと入道雲が浮かび、照りつける太陽の下、蝉の声が賑やかに響き渡ります。
さて、ちょっと意外かもしれませんが、暑さも盛りの7、8月は、冬の肌トラブル予防のカギとなる時期。冬の肌をイキイキと健やかに保つためにも、今から始める“先取りスキンケア”で体の内外から肌を整えていきましょう。
※二十四節気:1年の気候変化を24に分けて表したもの
「冬病夏治」夏から始める冬対策
中医学には、「春夏養陽」・「冬病夏治」という考え方があります。これは、「春夏には陽を養う」・「冬に起こりやすい不調を夏に予防する」ということ。春や夏は体内の「陽気(体を温めるエネルギー)」が旺盛になるため、冬に備え、この時期に陽気を充実させておくのです。
体の陽気が十分にないと、冬になって寒さのダメージを受けやすく、冷え症や関節痛、かぜを引きやすいといった不調が起こりやすくなります。また、冷えは血行不良につながるため、肌に十分な栄養や潤いが行き届かず、乾燥、シワ、くすみ、たるみといった肌トラブルも現れるように。
現代の生活では、クーラーや食生活の影響で夏でも体が冷えてしまうことが少なくありません。体内の陽気も消耗しがちなので、冬に備え、今からしっかりケアすることが大切です。
「三伏天」の時期に、「三伏貼」のケアを
「三伏天」は、一年でもっとも暑い時期のこと。「初伏」「中伏」「末伏」の3つの時期の総称で、7月上旬から8月上旬の40日くらいにあたります。
この時期、中国では「冬病夏治」の考え方から、冬に備えて「三伏貼」の養生を行うことが習慣に。軟膏状の生薬(膏薬)を湿布のようにツボの上に貼る養生法で、初伏、中伏、末伏の期間にそれぞれ1回ずつ行います(1シーズンに計3回)。これを3〜5年ほど続けることで、体質を根本から改善していくのです。
中国では、三伏貼はとてもポピュラーな季節の養生で、子どもから大人まで、夏になると多くの人が三伏貼を受けに病院を訪れます。膏薬は自分でも手軽に作ることができるので、この冬を元気に乗り切るためにも、ぜひ夏のケアに取り入れてみてください。
<2021年の「三伏天」>
初伏: 7月11〜20日頃
中伏: 7月21日〜8月9日頃
末伏: 8月10〜19日頃
<「三伏貼」はこんな症状の緩和に>
●全身症状:
冬に悪化する関節痛、リウマチ、喘息、慢性気管支炎、下痢、冷え症、免疫力低下 など
●皮膚症状:
乾燥、肝斑(シミ)、シワ、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、寒冷蕁麻疹、しもやけ など
陽気を強くする夏のセルフケア
初伏、中伏、末伏の期間に、それぞれ1日ずつセルフケアの日を設けてみて。膏薬をガーゼに塗り、気になる場所にあてたり、足湯で陽気の充実した体づくりを目指しましょう。
【 三伏貼 】
●作り方:
シナモンパウダー(3g)、しょうがのすりおろし(スライス1枚分)、小麦粉(20g)に温水を適量入れ、ペースト状に練ります。
●使い方:
ツボ(下記参照)の上にガーゼを1枚敷き、その上に膏薬を塗って、さらにガーゼを被せます。落ちないようにサージカルテープ(包帯などを固定するテープ)などで固定し、1〜2時間おいてはがします。
※かゆみ、赤み、腫れなどが現れた場合はすぐに中止を。
※肌に炎症などのトラブルがある時は行わないでください。
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【 生薬足湯 】
山椒、よもぎ、しょうがなど、体を温める生薬を入れて足湯を。足裏のツボ(湧泉)を温めながら、血行を促進し、冷えを改善します。手軽なのは、しょうが入りの足湯。
【おすすめ商品】
“夏冷え改善” & “陽気アップ”の食養生
冷たい飲食やクーラーなどで、夏の体は意外と冷えやすいもの。体内の陽気も消耗しがちなので、日々の食養生で陽気をしっかり養いましょう。
[おすすめ食材]
補陽(体を温めエネルギーを補う)と、清熱(過剰な熱を冷ます)の食材をバランスよく取り入れて。
●補陽:しそ、しょうが、ねぎ、にんにく、羊肉、牛肉、うなぎ、シナモン、棗 など
●清熱:トマト、きゅうり、苦瓜、すいか、豆腐、麦茶 など
[おすすめ生薬]
ヨモギ、紫蘇、陳皮、藿香(かっこう)、砂仁(しゃにん) など
[食のポイント]
冷たい飲食は「脾胃(胃腸)」の負担となって陽気不足につながります。なるべく常温か温かいものを取るよう心がけましょう。
【 毎日飲みたい「姜棗茶」 】
脾胃を整えて陽気を養う、夏におすすめのお茶。紅茶とブレンドすれ香りの良いフレーバーティーになるので、ぜひ毎日のお茶に。
●作り方
1リットルの湯にしょうが(8〜10片)、棗(8〜9個)を入れて10〜15分ほど煮込みます。
1回 100ミリリットル程度を紅茶とブレンドして飲むのがおすすめ。紅茶の量はお好みで調整してください。
※熱っぽい体質(暑がり、唇が赤い、のぼせ、寝汗など)の人、皮膚疾患で炎症のある人などには不向きです。
みなさんも一緒に、冬の肌トラブル対策始めましょう!
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など